ITmedia エンタープライズ

　エンタープライズ向けJavaアプリケーションが、PalmのTungstenハンドヘルドで動作可能になる。PalmがIBMのWME (WebSphere Micro Environment) Javaランタイム環境のライセンスを取得したことにより、これが可能になったことをPalm、IBMの両社は6月9日、発表した。

　この提携はサンフランシスコで6月10日から開催されるJavaOneカンファレンスの前日、明らかにされたもので、IBMがJavaを広範囲なデバイスに提供しようという努力の一環として行うものであると、同社パーベイシブ・コンピューティング・ユニットのマーケティング担当副社長であるジョー・ダマッサ氏は説明する。IBMは同日、NokiaがIBMが最初の開発を行ったEclipseオープンソース開発プラットフォームと連動して動作する開発ツールをを提供し、QNX Software SystemsがWMEをリアルタイムOSであるQNX Neutrinoに統合すると発表した。QNX Neutrinoは家電、小売りオートメーションシステムなどのプラットフォーム向けに使われている。

　JavaをサーバとPCから他のデバイスにも拡大することにより、デベロッパーは既存のスキルを使ってさまざまなプラットフォームに向けたアプリケーションを書くことが可能になるとダマッサ氏。

　PalmはWMEをすべてのTungstenデバイスに提供する。Tungstenは企業ユーザーに向けて販売されているハンドヘルド機で、現在、無線LANを備えたTungsten T、GSM/GPRS (Global System for Mobile Communications/General Packet Radio System) のワイヤレス機能を搭載したTungsten Wがある。このランタイム環境はJ2ME (Java 2 Micro Edition) を実装したもので、600Kバイトから700Kバイトのメモリを必要とする。同Javaランタイムは、コンシューマー向け製品ラインであるZireのハードウェアにも需要があれば搭載されるかもしれないと、Palm Solutions Groupの戦略アライアンス担当ディレクター、クリス・モーガン氏は話す。

　WMEではどのJava開発ツールで書かれたアプリケーションでの動作可能だが、IBMのWebSphere Studio Device DeveloperはPalmベースのJavaアプリケーション開発に最適化されていると同社では述べている。さらに、PalmはWebSphere Studio Device Developerと連携する無償の開発ツールキットを提供する予定である。

　Tungstenのユーザーは9月からWMEをダウンロード可能になり、来年はじめに発売されるTungstenの新製品からは出荷時にバンドルされるだろうとモーガン氏は予想する。

　IBMとPalmがパートナーシップを結んだことにより、コーポレート市場においてはPalmをはるかに引き離しているMicrosoftのPocket PCプラットフォームへの対抗勢力が生まれることになる、と市場調査会社Gartnerのアナリスト、トッド・コート氏は解説する。企業向けアプリケーションを動かすことを目的として購入されたハンドヘルドデバイスは全世界で年間100万台に満たない程度で、市場規模としては小さいものだが、自社のソフトウェアをモバイルユーザー向けに移植している企業もみられる。

　「Pocket PCの人気が高かった理由の一つは、開発が容易だからだ」とコート氏。また、Microsoftのハードウェアパートナーは、Dell Computer、Hewlett-Packard、東芝などの、財務的にPalmよりも安定している企業であるという点をコート氏は追加した。

　「Palmはエンタープライズ分野で信頼を獲得する必要があり、IBMはその仕事をやってくれる。これはPalmが自社の力だけではできないことだ」とコート氏。

　Microsoftの.Netそのものに対するIBMの取り組みという、広い視点で考えると、IBMのWebSphere戦略は、その手始めに過ぎない。数百万のJavaデベロッパーがPalm、QNX、Nokiaといったパートナーシップの動きに喜んでくれるとなれば、その戦略は成功するかもしれない、とコート氏は述べた。

「すべての要素が組み合わさったときに全体像がどうなるのか、予測は難しい」とコート氏。