エンタープライズ:コラム 2003/06/10 19:55:00 更新


Linux Column:Linuxに足りないと指摘された領域を考える

ERP業界はものすごいことになっているみたいですね。ERPはLinuxのようなオープンソース系のOSにはまだまだ敷居の高い領域のようですが、近い将来ERPのプラットホームはLinuxが当たり前、なんて時代が到来するかもしれませんね。

 PeopleSoftのJ.D. Edwards買収のニュースを見てERP業界も大変だなと思っていたら、今度はOracleがPeopleSoftに買収を仕掛けたとのニュースが飛び込んできた。このおかげでERP業界はものすごいことになっているみたいですね。私自身はデータベースには絡んでいたものの、ERPは門外漢なのですが、オラクルのERP(今は「Oracle E-Business Suite」というのですね)に関係する知人も少なからずいるので、行方が気になるところです。

 さて、このERP業界ですが、Linuxのようなオープンソース系のOSにはまだまだ敷居の高い領域のようです。実際、先般のLinuxWorldにおいてもいくつかの講演の中で「業務アプリケーションではLinuxはまだまだ」という見解が聞かれました。この領域の全てがERPパッケージを導入しているわけではないのですが、確かに億単位でコストがかかるシステムにおいて、OSや基本アプリケーションのコストが低いことは売りにはならないでしょう。システムを支えるプラットホームとしての安心感が最も必要とされるので、Linuxにはまだまだこれからというところなのでしょうね。

 それらの講演では、よりビジネスとしてのボリュームが大きいハイエンドな業務アプリケーションの領域においてLinuxが利用されるように、Linuxの機能や性能をアップさせていくんだ、という話が幾度となく繰り返されました。しかし、Linuxの開発は本当にそういう方向に進むのでしょうか? 

 というよりも、そういう方向性が正しいのか、という素朴な疑問が残ったのです。確かに、IBMをはじめとしたさまざまな企業がビジネスとしてLinuxの改良に携わり、さまざまな機能が追加実装されていくでしょう。

 今年の夏ごろにリリースされる予定のカーネル2.6にも、性能を高める機能、信頼性を高める機能が数多く盛り込まれています。これらの事実をもって、そういう方向に進んでいるのだ、と言うことも可能でしょう。しかし、ビジネスとしてユーザーのニーズに応える形での機能アップがたどる道が、たとえば現在のワードプロセッサのように一生に一度使うかどうか分からないような機能がテンコ盛りになってしまうとしたら?

 ただ、このような考え方に対して、私個人としては楽観視はしています。Linuxカーネルはあくまで核として存在し、必要な機能がその周辺を取り巻くような仕組みです。核の中身はオープンソースできちんと見えているわけですから、その周囲からは安心して使えるというわけです。カーネル自身の機能アップと合わせて、少しずつではありますが、業務システムでの使用に耐える環境の構築というのは進んでいき、ERPのプラットホームはLinuxが当たり前、なんて時代が近い将来到来するかもしれませんね。

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[宮原 徹,びぎねっと]