エンタープライズ:ニュース 2003/06/23 14:07:00 更新


デジタルKVMスイッチで「サーバルームの無人化」を支援する米Avocent

Avocentは近日中に、より廉価なデジタルKVMスイッチを投入する計画だ。これにより、全国に拠点を構える企業でも、効率的にサーバの一元管理を行えるようになるという。

 サーバルームやワイヤリングクローゼットで稼動している多数のサーバをリモートから操作し、コントロールしたいというときに思いつく手段は何だろうか?

 最も一般的なのは、専用リモートコントロールソフトといった手段だろうが、台数が増えれば増えるほど、使い分けや運用に要する負担が大きくなる。しかも可能な操作は、対象となるマシンの状態に依存し、BIOSレベルでのアクセスが不可能だ。このため、状況によっては、システム管理に最適とはいえないこともある。

 これに対しデジタルKVMスイッチは、遠隔地からBIOSレベルでのアクセスを実現する。ミッションクリティカルなサーバ環境で、システムの迅速な復旧が可能になるため、よりよいシステム管理が可能であると、KVMスイッチベンダーである日本アボセント(米Avocentの日本法人)のプリセールス・エンジニア、長谷川和宏氏は述べる。

 KVMスイッチとは、単一のコンソール、つまり1組のキーボードとビデオ(モニター)、マウスから、複数のコンピュータを切り替え、操作するための機器である。サーバそれぞれにモニターやキーボードを接続する場合に比べ、複雑な配線などを行う必要がなく、サーバルームのスペースを有効活用できること、1カ所から複数のサーバを切り替えて管理、操作できるため、管理者の生産性向上につながることなどがメリットだ。

 このKVMスイッチも、大きく2種類に分けることができる。1つは、コンピュータからの信号をそのまま切り替えるアナログKVM。もう1つは、このアナログ信号をデジタルに圧縮、変換して、TCP/IPネットワーク経由で接続するデジタルKVMだ。後者はむしろ「KVM OVER IP」と表現されることもある。

 長谷川氏は、「デジタルKVMを利用すれば、TCP/IPネットワークを経由して世界中のどこからでも、サーバの一元集中管理を行うことができる。しかもIPレベルでのセキュリティに加え認証、アクセス制御を組み合わせることで、高いセキュリティを確保できる」とした。

コスト効率に優れた「DSR800」

 日本ではまだ、デジタルKVMスイッチという言葉にあまりなじみはないかもしれないが、Avocentによると、既に全世界的な金融機関のほか、データセンターなどで同社のデジタルKVMが採用されているという。Avocentでは、さらに市場の裾野を広げるべく、より廉価なデジタルKVMスイッチを投入していく計画だ。

 同社はこれまで、KVMスイッチのほかシリアル管理機器や電源管理機器、集中管理機能を提供する専用ソフトウェアからなる「DSシリーズ」を提供してきた。「DSシリーズは、データセンター内のサーバやシリアル機器、電源をネットワーク経由で管理できる全体的なソリューション。これにより、データセンターやサーバルームの無人化を実現できる」(長谷川氏)。

 最近では他のベンダーもデジタルKVMスイッチをリリースしているが、「もともとKVM OVER IPを投入したのは、Avocentが初めて。しかも1つのソフトを用いて、サーバやネットワーク機器、電源までを現場にいるのと同じようにして操作、管理できるソリューションは他にない」と長谷川氏は主張する。

 このDSシリーズの中核として提供されてきたのが、16ポートのデジタル/アナログ対応KVMスイッチ「DSR1161/2161/4160」だ。いずれも専用管理ソフトウェアの「DSView」を通じて、1つの画面から統合的に、多数のサーバ群を管理することができる。ただ、1Uサイズのきょう体とはいえ搭載ポート数が多いだけに、やや規模の小さな拠点などでは導入しにくかったことも事実だ。

DSシリーズ

上に載っているのが新製品の「DSR800」

 これを踏まえてAvocentでは、コストパフォーマンスに優れた8ポートのデジタルKVMスイッチ「DSR800」を4月にリリースした。DSR800では、ポート数を抑えるとともに価格も抑えている。従来のDSRシリーズよりも低い価格設定によって、さまざまな分野での導入を狙う。

 特にニーズが見込めるのが、全国に多数の拠点を構えるような企業だ。長谷川氏は、「これまでは、広域イーサネットやIP-VPNといったサービスを導入していても、サーバの集中管理ができていない企業も多くあったと思う。しかしDSR800を各拠点に配置すれば、本社などから一元的に、リモートのサーバを低コストで管理できるようになる」と語った。

 仮に何らかの障害が発生しても、まずHP OpenViewといったシステム統合管理ツールによって不具合を検出し、特定された問題をKVMスイッチ経由で復旧するといった具合に連携すれば、速やかに正常な状態に戻すことができる。しかも管理者がサーバのある場所まで行ったり来たりする必要もなくなるため、「運用業務を効率化し、大きな投資効果が得られる」と長谷川氏は述べている。

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[ITmedia]