エンタープライズ:特集 2003/07/04 17:20:00 更新
C Magazine

C MAGAZINE 2002年8月号より転載
プログラムのレシピ――プログラミングの考え方・作り方 (2/13)

プログラミングを楽しむための準備(1)
プログラミングの極意

 Part1では、プログラミングを始める準備段階として、開発環境の選び方や一般的なプログラミングの手順について紹介します。

 プログラミングは、昔も今も変わらず楽しいものだと思います。でもなんだか、最近のプログラミングを取り巻く環境は、とくにホビープログラマにとっては少々厳しいような気がしませんか?

 たとえば、画面に絵を描きたいとか、音楽を演奏したいなどといっても、どこをどういじればできるものやらすぐには見当がつきません。PCの性能が上がって機能も多彩になりましたが、そのぶんプログラミングは複雑になってしまいました。

 もちろん、いい開発環境を手に入れて、あれこれ参考書をそろえ、じっくり腰をすえて取り組めばプログラムは作れます。仕事としてならかまわないかもしれませんね。ソフト代や書籍代、残業代も出ますし!

 でも、ホビーとしてはどうでしょうか?

生活の合間に楽しむものですから、あまり時間や労力、それにお金がかかっては困りますね。

 「プログラミングを楽しむための極意」、……いろいろとあるかとは思いますが、筆者がお勧めするのは「早い! 安い! そして旨(うま)い! プログラミング」です。まるで牛丼屋の極意のようですが、これがなかなかプログラミングにも有用なのです。

早い! プログラミング

 みなさんはホビーに使う時間を十分お持ちですか? 人それぞれとは思いますが、「自由な時間があり余ってしかたがない〜〜」という羨うらやましい方は少数派でしょう。とくに勤めている方は、少ない余暇を工夫して活用されていることと思います。

 プログラミングを趣味で楽しもうとすると、まずネックになるのは時間です。時間がかかるホビーは世の中に数あれど、プログラミングほど時間がかかるものはそうありません。そのうえ切れが悪い! 設計やデバッグを中断してしまうと、次回再開するのがたいへんです。

 そこでまずは、限られた時間でプログラミングを楽しむために工夫をしましょう。いちばん大事なのは、言語選びと開発環境選びです。難しい言語や開発環境は避けて、なるべく簡単かつ短時間で使いこなせるものを選びましょう。「高速だけど難しいもの」よりも「そこそこの速さだけど使いやすいもの」がお勧めです。

 設計やプログラミングの進め方も重要です。「いつ完成するかわからない」ものを作るよりも、「だんだん完成に近づく手ごたえがある」ものを作るほうが、気分がいいですよね? 時間が限られているのですから、ある程度短い期間で完成するように、プログラムの機能を重要なものだけに絞り込むことも大事です。時間ができたら、機能をだんだん豊富にしていけばいいのです。

安い! プログラミング

 時間と同様、ホビーに使える資金も限られていることが多いと思います。なかには無尽蔵にお金をかけられる方もいるかもしれませんが……、そういう方でも資金を有効に活用するのは悪くないことですよね。プログラミングにまず必要なのは開発環境です。数多くの開発環境が発売されていますが、お勧めは最近増えてきた無償(あるいは低価格)の開発環境です。

 もちろん、自分が作りたいプログラムが作れて簡単に使いこなせる開発環境を選ぶのがいちばん大事です。そのうえで安い製品が利用できれば、これを使わない手はありません。最近の代表的な無償開発環境の例としては、次のようなものがあります。

  • Borland C++ Compiler
  • Delphi Personal Edition
  • Java Development Kit (JDK)
  • Kylix Open Edition
  • LSI-C試食版
  • Perl
  • Ruby

 ソフトウェアダウンロードサイトで探せば、まだまだ多くのプログラミング言語やスクリプト言語があるでしょう。

 無料とまではいかなくても、1万円程度で手に入る低価格な開発環境もあります。その多くは上位版の機能を削った普及版ですが、基本機能は備えているのでプログラミングを始めるのには十分です。

 また学生の方は「アカデミックパッケージ」が利用できます。これは教職員/学生向けの安価なパッケージで、通常品と機能は同等ながら非常に低価格(製品によっては半額程度)で手に入るのが特徴です。大型パソコンショップや大学生協で販売されているので、ぜひ探してみてください。

 さて開発環境と同様に、各種のツールもできるかぎりフリーソフトウェアか安いソフトウェアでそろえるのがお勧めです。プログラミングには開発環境だけではなく、

  • ソースを書くためのテキストエディタ
  • 絵やアイコンを描くためのグラフィックエディタ
  • 音を作るためのサウンドエディタ

といったツールも必要です。「Vector」や「窓の杜」などのソフトウェアダウンロードサイトに行けば、ツールが山ほど手に入ります。フリーとは思えないほど高機能なツールも少なくありません。

旨い! プログラミング

 プログラミングは楽しい作業ですが、結果も大事ですね。プログラムのできばえがいいといっそう楽しくなるものです。

 でも、優秀な市販品があるとどうしても比べてしまいますよね? 個人が限られた資源(とくに限られた時間)で作るわけですから、機能の豊富さなどでは市販品に及ばないことも少なくありません。市販品は相応の人数が相応の時間をかけて作っているものですから、ある程度はしかたないことです。

 では個人の作品は市販品にかなわないのかというと、決してそんなことはありません! そこは頭の使いようで、なんとでもなります。個人が優れた(クールな)ソフトウェアを作るには、たとえば次のような工夫をするとよいでしょう。

●個性を発揮する

目のつけどころがいい、特徴のあるソフトウェア作りを目指しましょう。ほかのソフトウェアにないようなおもしろい機能、新しい機能を備えていれば、それだけで価値のあるソフトウェアになります。

●使い心地を重視する

 機能が少なくても、使い心地がいいソフトウェアは優れています。機能が多くて鈍重なものより、機能が少なくても軽快に動くもののほうがうれしいことも多いのです。

●フットワークの軽さを生かす

 プログラマの小回りのよさを活用しましょう。市販品の開発には組織力がありますが、逆にプログラミング手法を統一したり、仕様書を作ったりといっためんどうなことも多々あります。個人ならば自由にすばやく開発が進められます。

●仲間を作る

 コミュニティを作るのもよい方法です。個人開発はどうしても人手不足になるので、仲間を作りましょう。友達でもいいですし、Webサイトで賛同者を募ってもいいでしょう。プログラムを共同作業で作るだけでなく、アイコンや絵を作ってもらうとか、プラグインを充実させてもらうといったことも可能です。あるいはテストに協力してもらうだけでも有益です。


 市販品を作るプログラマとホビープログラマの間には、使える時間や人手の差はありますが一人一人の能力に根本的な差があるわけではありません。個人が作ったソフトウェアの中には市販品顔負けのものがいくつもあります。すべては工夫しだいです。

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[松浦健一郎(ひぐぺん工房),C MAGAZINE]

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