エンタープライズ:インタビュー 2003/07/07 22:07:00 更新


Interview:ソフトウェアライセンスが機能しなくなる日

オープンソースムーブメントの擁護者であるティム・オライリー氏は、インタビューの中で、ソフトウェアビジネスについての「ある予言」を行った。(IDG)

 PeopleSoftはOracleによる敵対的買収のせいで、枕を高くして眠れないかもしれないが、Oracleのほうは、まったく寝てられない状況かもしれない。すくなくともO'Reilly & AssociatesのCEO、ティム・オライリー氏はそう信じている。

 eBayがいつの日かOracleを買収し、オープンソースライセンスはうまくいかなくなる。そしてソフトウェア市場は永久に変わってしまうだろう。3つとも、技術系出版社の経営者であり、オープンソース擁護者であるオライリー氏が、インタビューの中で話した予言だ。このインタビューは今週、同社が毎年開催しているOpen Source Conventionを前に行われた。同カンファレンスはオープンソースの名士たちを集め、オレゴン州ポートランドで今週開催される


――あなたはOpen Source Conventionで基調講演を行うわけですが、テーマは何ですか?

ティム・オライリー 今まさにパラダイムシフトが進行中で、その中心にはオープンソースとインターネットがあります。どちらが運転手でどちらが乗客なのかはわかりませんが、少なくとも、どちらも同じ乗り物に乗っているのです。

 オープンソースコミュニティーの中でしょっちゅう起きているパラダイムの失敗と思えるものを挙げてみましょう。オープンソースを批判する人はこう言います。「オープンソースは、非常に使いやすいソフトウェアを作るのには適さない」と。そしてオープンソフトの保護者は「それはGnome (GNU Object Model Environment) の最新版を見ていないんだな。こいつはすごくいいよ」と答えるんです。

 私が重要だと思っていることについては誰も指摘しません。インターネット時代のキラーアプリ、Amazon、Google、Maps.yahoo.comなどはすべてLinuxかFreeBSD上で動いています。しかし、伝統的にアプリケーションだと考えられていたタイプのソフトウェアではないのです。だから、検討対象に入らない。AmazonはLinux上のPerlで構築されています。彼らは基本的にオープンソースハッカーの集まりですが、プロプラエタリなソフトウェア会社と同じくらい強烈に会社のために働いているのです。

 この図式のどこがおかしいですか? さて、オープンソースの基本的な前提の一つに、ライセンスはソフトウェア配布の際に条件付きとなるというものがあります。そしていったんアプリケーションの配布をやめればライセンスは違法になる。

 ライセンスが機能しないという事実をさらに進めましょう。これらのアプリケーションが基本的にまったく異なっているのは、そのインタフェースが単なるソフトウェアよりも非常に多くのデータから構成されているということです。私の基本的前提は、「ちょっとだけ、ライセンスについて考えるのをやめてみよう」というものです。オープンソースの核心部分で重要なものはライセンスだと考えるのをやめよう、というのです。それは、ライセンスが全然重要なものではない、という意味ではありません。さらに重要なものから目をそむけさせるかもしれない、と考えているのです。

――たとえば?

オライリー ソフトウェアのコモディティー化です。オープンソースはソフトウェアのコモディティー化に寄与しています。オープンソースだけが貢献しているわけではありませんが。オープンスタンダードもコモディティー化を推進しています。ウェブブラウザはプロプラエタリなものですが、コモディティーです。

 基本的に、われわれはハードウェアでIBM PCが行ってきたことに近いものが展開されていくのを目撃することになります。ハードウェアビジネスのことを振り返れば、誰もが古いルールにしばられていた移行期がありました。Dellが登場して、このルールは違う、そしてビジネスを動かしているものは違うということに気づくまでは、コモディティーハードウェアをどのように利用すべきかがわからなかったのです。

 Debianを始めたイアン・マードック氏は今、Progeny(Linux Systems)という会社を経営し、正しい方向に進めています。Linuxを製品として見るのではなく、Linuxはコモディティー・ソフトウェア・コンポーネントであり、それを組み合わせて別の目的に利用しているのです。

――IBMもそのようにLinuxを見ているのでは?

オライリー まさにその通りです。しかし、IBMのオープンソース戦略は、PC黎明期のCompaqの戦略と非常に似通っています。こうしたコモディティーを取り上げ、改良して価値を高め、差別化を図ろうとしたベンダーがたくさんありました。WebSphereも同じようなものです。IBMは、「OK。オープンソースのコンポーネントをたくさん、そしてプロプラエタリなコンポーネントもたくさんつなぎ合わせて、みんなが『これなら金を払ってもいいよ』と思わせるものにしよう」と考えたのです。このやり方は、かつてのCompaqと非常に近いものです。

 いずれはだれかが完全なオープンソースのスタックを作り上げるでしょう。PCの歴史を見てみれば分かりますが、Compaqの戦略が敗れ去ったわけではないのです。Dellの戦略の方が少しばかり優れていただけです。Dellの方法の根幹はBTO(Build To Order)です。Linuxにおいてもこのビジネスモデルは出現してくると考えています。

――オープンソースのソフトウェアスタックはオープンソースにおけるDellのように成熟したものですか?

オライリー いや、まだでしょう。(OCRとスピーチ技術のパイオニアである)レイ・カーツウェル氏による「私は発明家であるが、長期的なトレンドを研究し始めた。というのは、発明されたものは、その発明が始まった時点ではなく、発明が完成したときにその世界の中で意味をなすものでなければならないからだ」という箴言があります。多くの人たちは、急速に終わろうとしている世界のために計画を練っていますが、ビジネスプランを立てなければいけないのは、来るべき世界のためでなければなりません。

 成熟したものでないからこそ、そこにチャンスがあるのです。

――こうした変化により生み出されるチャンスは、ほかにどのようなところにあると考えていますか?

オライリー その価値はスタックからデータへと移り変わっていくでしょう。これについては、AmazonとGoogleの例に戻ってみましょう。比較すると、Googleのほうが価値は低いかもしれません。彼らはただ他の企業よりもうまくやっているだけだという意味で、伝統的なソフトウェア一派に近いかもしれません。しかし、Barnesandnoble.comとAmazon.comが持っているソフトウェアにはあまり大きな差はありません。違うのは顧客であり、彼らが持っているデータに顧客がどの程度貢献しているか、です。

 eBayではさらにそのことが明確になります。つまり、市場における買い手と売り手のクリティカルマスであり、市場で人々が入力した情報をリポジトリとして持っているわけです。

 だから、このようなこと、つまり、だれかが顧客とデータのクリティカルマスをつかむと、それが価値の源となる、そのようなことがたくさんの場所で起きることになるでしょう。これを論拠として、私は予言をしましょう。あまりにも突飛なものに感じられるでしょうが、いつの日か、eBayはOracleを買収します。これまでソフトウェアサプライヤとしては認識されていなかったような人たちに価値は移転しているでしょう。

 Amazonはさまざまな意味でこの道を最も遠くまで歩んできた会社です。Amazonは自分たちがプラットフォームになりつつあることを本当に理解しています。インターネットの想像以上に多くの部分でe-コマースエンジンになろうとしているのです。彼らは単なるサイトではなく、他の人々のためのe-コマースを動かしているのです。彼らがWebサービスを構築したので、(Amazonがコントロールしていない)そのバックエンドサービスを利用するアプリケーションを人々は開発しているのです。彼らはこの道を追求しており、追従するものも現れるだろう。そして突然気づくのです。「あれまあ。彼らはどうやってここまで重要なプレイヤーになったんだ?」と。Microsoftを競争相手とみなしていなかったIBMがある日突然気づいたように。「あれまあ、主導権を握っているのはあいつらのほうだ」

[Robert McMillan,IDG News Service(San Francisco Bureau)]

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