エンタープライズ:インタビュー 2003/07/08 20:41:00 更新


Interview:ストレージテックは「ストレージサービスカンパニーを目指す」と徳永氏

デルコンピュータから転身し、日本ストレージ・テクノロジーの取締役副社長に就任した徳永光正氏。その徳永氏が、同社の今後の戦略を語った。

 デルコンピュータから転身し、日本ストレージ・テクノロジー(ストレージテック)の取締役副社長に就任した徳永光正氏は、法人向け営業で豊富な経験を持つ。その徳永氏に、“ストレージサービスカンパニー”を目指すという同社の具体的な戦略と、その根本にある顧客のニーズについて聞いた。

徳永氏

直販で培ってきた顧客こそ大事な資産だと述べた徳永氏

―― まず最初に、デルコンピュータからストレージテックへと転身したきっかけから聞かせてください。

徳永 1つには、企業の核心である基幹系のソリューションに取り組みたかったということが挙げられます。何より、これからのストレージ市場には、とても大きなチャンスがあると考えました。一昨年の米国での連続テロの影響もあり、データそのものの価値が非常に高まり、企業にとってデータこそ資産だという認識が高まってきました。いかにデータを守り、蓄積するかというところにビジネスチャンスがあると考えています。もともとストレージテックとは、デルでサーバ事業を立ち上げたときから付き合いがありましたしね。

―― この新しい職場で取り組む目標とは?

徳永 今は、これから何をすべきかという具体的なプランを立てているところです。とはいえ、最終的なミッションは明確で、ストレージサービスカンパニーとしてナンバーワンになることが目的です。

 今ストレージテックにはハードウェアもあればソフトウェアもある。コンサルテーションや導入支援といったサービスもあるのですが、そこをぶつ切りの形ではなく、シームレスにつながり、全体をカバーできるものにしていきたいと思っています。それも、ESS(Enterprise Support Service)を充実させ、ストレージテックだけでなくIBMやサン、HP、ベリタスなどマルチベンダーの環境を積極的にサポートしていこうと考えています。これができている企業はまだどこにもありませんよね。

―― 「マルチベンダー環境」「ヘテロジニアス環境」への対応を謳わない企業もほとんどありませんが。

徳永 皆さん、口ではそう言いますが、実際にできているところはありません。ストレージテックではまず、積極的にマルチベンダーをサポートし、顧客からのほとんどあらゆる要求に応えられるようにしていきます。そのために販売やサポート体制を立ち上げ、時間をかけて新しいビジネスを作り上げていく計画です。これができてはじめて、ストレージサービスカンパニーたることができると考えています。

―― 長らく法人向けビジネスに携わってきた経験から言って、今顧客が最も頭を悩ませている課題とは何でしょうか?

徳永 膨大なデータをどのように管理すればいいのか、漠然と悩んでいる状態ではないかと思います。ストレージテックではそれを踏まえ、オンラインとニアライン、オフラインという各ステップに応じて適切なストレージ管理と使い方を提供する「ILM(インフォメーション・ライフサイクル・マネジメント)」という考え方を提示しています。

 ILMにより、オンラインのデータ運用からアーカイブ、保存までを、最もコストパフォーマンスの良い形で実現できます。「データというものはこういうものだ」と熟知しているわれわれが、どういった機器をどのように使えばいいか、事例ごとに適した製品を組み合わせ、コンサルティングとともに提供する準備を進めています。

―― ストレージの容量が拡大するにつれ、その管理が大きな負担になっています。

徳永 ストレージ管理についてはさまざまな提案がありますが、その中でストレージテックのアドバンテージというものを理解してもらえていると思います。データの量が増えれば増えるほど、われわれのラインナップが有効性を増すと考えています。

 いずれにせよまずは、顧客の問題点を洗い出し、最終的に何をしたいのかという目的に沿って、適切な製品を提案していくことですね。特に、われわれの顧客には大規模なシステムを運用し、明確な目的を持っているところが多いですから、それを支援するため、こちらもさらにスキルを高め、バリューを付け加えていけるように取り組んでいきます。

―― 他にストレージテックならではの強みはありますか?

徳永 これまでに1000社余りへ直販、および直接サポートを行ってきたことでしょう。顧客の声を直に聞き、それを元にサポートやフィードバックを行ってきました。ここからカスタマニーズを引き出すことができています。顧客を知り、本当の使い方を知っている――口で言うだけならば簡単ですが、これを実現できる企業はそう多くないでしょう。また、他に比べてサービスのラインナップが充実していること、ESSでマルチベンダーをサポートしていることも大きなアドバンテージでしょう。何より信頼感がありますしね。

―― 具体的にはどういった案件のニーズが高いのでしょうか?

徳永 大規模システムですとディザスタリカバリの案件が多いですね。関東・関西で別々にリカバリ作業を行えるようにしたいというニーズがあります。ただ日本の場合、これにリモートからのプロアクティブな監視をどう組み合わせるかといった点で、セキュリティの問題と関連してポリシーが一貫していない部分も見受けられます。

 もう1つはデータセンターで多いのですが、大容量化と同時に省スペース化を図りたいというニーズです。ディスクにしてもテープにしても、データの容量が増えればスペースを大きく消費するものですが、ストレージテックではSVA(Shared Virtual Array)やVSM(Virtual Storage Manager)といった仮想化技術を活用し、省スペース化を実現しています。多くのデータをコンパクトに扱えるといった点で評価を受けています。

―― 現職就任以降を振り返って、どういった成果が得られたと思っていますか?

徳永 まずセールスのプロセスをきっちり作り、管理するようにしたほか、「Telビジネス」という新しいビジネスモデルも作り上げました。つまり、新規顧客開拓のためにアポイントメントを取り付ける部隊と外勤の営業とを別々にすることで、1日に1人の営業が訪問できる件数を増やし、効率化を図っています。この成果は数字にも表れていて、今年第1四半期の生産性――なかなか計測の方法が難しいのですが――は40%アップしました。新規顧客の件数も、2002年第4四半期に比べると11%向上しています。これまでのストレージテックのマイナス面を捨て、優れた面を伸ばすことで、会社として2ケタの成長を十分達成できると考えています。

 同時に、直販で培ってきた1000社あまりの顧客はわれわれの大事な資産であり、そこからいただいた意見は非常に貴重なものです。そうしたところと、より深い関係を作り上げていきたいと考えています。それにはわれわれ自身が変わらなくてはなりません。ILMというモデルをベースに、より効率的で、より求められるソリューションを提案していきますし、これこそが顧客満足につながるものだと考えています。

―― 今年、ストレージテックは日本法人設立25周年を迎えますが……

徳永 私のような新参者が言うのもなんですが(笑い)、25年間も日本に根付いてビジネスをやってきたのですから、これはもう米国企業というよりも、日本企業のような関係を顧客との間で作ってきたのだと思います。いい意味での日本のビジネスと、米国の新技術や製品をうまく組み合わせ、取り組んできたということでしょう。

 ストレージテックは今後も、ストレージサービスカンパニーというゴールに向けて、できるだけ多くのサービスやサポートを提供できるように取り組んでいきます。そうしたビジョンの元、次の25周年を迎えられればと期待しています。

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▼日本ストレージ・テクノロジー

[聞き手:高橋睦美,ITmedia]