エンタープライズ:ニュース 2003/07/09 17:00:00 更新


ターゲットはエンタープライズLinux――SCOのマクブライドCEO

7月9日、SCO GroupのマクブライドCEOが来日し、都内の会場にて「SCOストラテジック・ブリーフィング」と題して、SCOの戦略説明会が開催された。

 7月9日、SCO Groupのダール・マクブライドCEOが来日し、都内の会場にて「SCOストラテジック・ブリーフィング」と題して、SCOの戦略説明会が開催された。すっかり時の人になってしまった感のあるマクブライド氏だが、かつてノベルの日本法人を立ち上げるために、数年の間日本に滞在したこともある。時折日本語を交えながら2時間以上にわたって、今後の戦略について語った。

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SCO Group CEO、ダール・マクブライド氏


 マクブライド氏はまずSCOにおけるUNIXビジネスについて語り、「AT&Tが開発したUNIXの知的所有権は現在SCOが保有しており、その範囲は契約、商標、ノウハウ、著作権にまで及んでいる。UNIXにおける知的所有権は木の幹のようなもので、そのオーナーはSCOだ。そこから派生した形で富士通やNEC、IBM、Hewlett-Packardといった企業が進めるハイエンド向けのUNIXと、ミドル以下に提供されているSCOのUnixWare、OpenServerが存在する」と述べた。その上で現在は6000社以上にライセンスが提供されており、この提供先を拡大することと、派生物がUNIXの範疇に収まるようにコントロールするのがAT&Tのライセンスモデルであり、それをSCOが引き継いでいるとのこと。これらのライセンスビジネスに加えて、2003年の8月に行われる「SCO Forum」で発表される「SCOx」と呼ばれるWebサービスベースのフレームワークを提供することが、同社のUNIXビジネスの中心であると述べた。

カーネル2.4以降が問題

 そして、今回会場に集まったメディアやパートナー企業が注目していた知的所有権問題についての説明に移ったが、基本的には6月に掲載したインタビューとあまり変わらない内容であった。ただしIBMとの訴訟にも発展した、LinuxのカーネルにUNIXのコードがコピーされている件については踏み込んだ説明が行われ、「2000年の段階で開発されていたLinuxのカーネル2.2では、IBMが関与したソースコードはゼロに近い。しかしLinux2.4.40では300近いソースコードファイルを、IBMは不正に寄贈している。このおかげで、Linuxはハイエンド向けのスケーラビリティを確保できるようになった」と述べ、バージョン2.4以降のカーネルが問題であるとした。

 「UNIXという大木のそばに、Linuxという若い木が育っていたのは確かだ。しかし、たとえ派生物であったとしても、UNIXの幹から出ている枝葉をLinuxに接ぎ木をして育てるのは契約違反である」(マクブライド氏)

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Linux2.4.40および2.5.69でIBMが関わったカーネルソースおよびカーネルヘッダの数


 マクブライド氏はまた、「カーネルのバージョン2.4および今後発表される2.6は、SCOが持つ著作権や契約上の権利を侵害している。これを発表したときにはLinuxコミュニティーからの反発も大きかったが、彼らの怒りも分かっている。しかし、われわれがUNIXの知的所有権を持っていることも、彼らは理解しているはずだ。Linuxが大きく育つためには、これは乗り越えるべき障害なのだ」と述べ、6月以降に始めたNDAベースの証拠開示も続けているので、ユタ州の本社に来てくれればいつでもソースコードを見せると語った。

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IBMがAIXよりカーネル2.5に移したとSCOが述べている項目。太字は特に重要なもの


 なお、今回の来日の目的についてマクブライド氏は、「LinuxにUNIXのコードを移したのはIBMだけではなく複数存在するが、われわれは毎日訴訟に明け暮れていたいわけではない。IBMのようなケースを作らないように、大手ベンダーと話をするために日本に来た。問題が解決した上で、Linuxがこれまで以上に発展していくことを望む」とし、最終的にはLinuxベンダーとも協力して、双方とも勝ちを収めるような関係になるのが目標だと語った。

 最後に行われた質疑応答の中で、「1500社もの企業に書簡を送付したことの裏では、マイクロソフトが糸を引いているのか」といった質問に対して「その通り――いやこれは冗談だ。もちろんそんなことはない」といった余裕を見せていたマクブライド氏だが、「現状のLinuxコミュニティーで解決しなければならない大きな問題がある。それはGPL(GNU General Public License)だ。現在のGPLを規定している文章はよくない。知的所有権に全く配慮されていない。一番必要なのはGPLの改訂だ」と述べるなど、あくまでも知的所有権にこだわり、気炎を吐いていた。

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[今藤弘一,ITmedia]