エンタープライズ:ニュース 2003/07/23 23:30:00 更新


Webアプリのボトルネックを解消――米Netliのプロトコル用いたサービスをIIJが開始

インターネットイニシアティブは7月23日、Webアプリケーションへの高速なアクセスを可能にする新サービス「IIJネットライトニング」を発表した。

 Webアプリケーションのレスポンスにはさまざまなボトルネックがある。アクセス数に対してWebサーバそのものの性能に問題がある場合もあれば、CGI、バックエンドのデータベースや業務アプリケーションとの連携部分、あるいはハードウェア的なスペックが不十分というケースもあるだろう。そしてもちろん、ネットワーク回線そのものがレスポンスを悪くしている場合もある。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)が7月23日に発表した新サービス「IIJネットライトニング」は、このうちネットワークのボトルネック化を防ぎ、Webアプリケーションへの高速なアクセスを可能にするものだ。それも、IXなどを経由でき、少ないホップ数で接続できる国内の通信よりも、距離の長い国際間通信の部分に効いてくるサービスという。

 IIJネットライトニングは、米国のベンチャー企業、Netliとの提携によって実現されるサービスだ。RFCに従うと、TCP/IPおよびHTTP/HTTPSでは、セッションの確立およびデータ転送には30回以上のリクエスト/レスポンスが必要となる。これに対し、Netliが開発したIPベースの独自プロトコルを用いれば、セッション処理を効率化でき、わずか2回のやり取りでデータを転送できるという。この結果、例えば海外から日本国内に置かれたWebアプリケーションサーバにアクセスするときのレスポンスを10分の1前後にまで短縮できるという。

Netli Protocol

プレゼンテーションの中で示されたNetli Protocolの仕組み


 無論、この仕組みを利用するには、既存のインターネットからNetli独自のプロトコルを用いるネットワーク――同社はこれをアプリケーション・デリバリ・ネットワーク(ADN)と表現している――への乗り入れが必要だ。Netliでは、全世界13カ所に乗り入れポイントとして「バーチャルデータセンター(VDC)」を設置。合わせて、ADNからインターネットへの乗り換え口となる「アプリケーションアクセスポイント(AAP)」を用意している。VDCとAAPの間は、Netli Protocolを話す独自アプライアンスで接続され、しかもADN内のセッション状況は常にNetliの監視センターによって把握されているという。

 IIJの代表取締役社長を務める鈴木幸一氏は、従来のインターネットが高速道路ならば、IIJネットライトニングは飛行機だと述べた。

鈴木社長

「高速道路に比して飛行機のサービスを求めるユーザーが出てくるだろう」と述べた鈴木社長


 サービスを利用する際には、アクセスしてきたユーザーのリクエストをNetliのVDCに振り向けるよう、DNSのCNAMEを変更する必要があるが、その他に手を加える部分はない。キャッシュサーバを利用するときのように、エンドユーザーのWebブラウザの設定を変更することもなければ、Webアプリケーションに手を加えることもないという。ちなみに、万一ADN部分に障害が発生したり、予想以上のトラフィックが発生した場合には、リクエストをインターネット経由に迂回させる仕組みで、アクセスが途絶することはない。

 こうして見ていくと、IIJネットライトニングはコンテンツ・デリバリ・ネットワーク(CDN)に似通う点が多い。しかし同社の説明によると、CDNでは事前に各地のサーバへコンテンツをミラーリングしておく必要があるうえ、静的なコンテンツにしか対応できない。また国際間通信の高速化も困難だという。

 これに対しIIJネットライトニングは、複数のサーバを用意しておく必要がなく、ダイナミックに生成されるWebページでも高速に配信できる。このため同社では、CDNはストリーミングやスタティックなコンテンツに、ADNはSCMやCRM、調達システムといったダイナミックに生成されるWebアプリケーション向けに展開していく方針だ。

 とはいえ、ネットワーク部分の遅延が解消されたからといって、エンドユーザーの体感速度が向上するとは限らない。冒頭に述べたとおり、Webアプリケーションのレスポンスにはさまざまな要因が絡んでくるからだ。そこでIIJは、IIJネットライトニングの展開に当たって、Webアプリケーションのチューニングといった分野で手を組むべく、複数のシステムインテグレータなどと話し合いを始めているという。

 IIJネットライトニングサービスは8月7日より開始される予定だ。料金は、ADNの帯域によって変動するが、1Mbpsで月額65万円から。別途初期費用として53万円が必要となる。なお同社では、2〜3週間の間無料でIIJネットライトニングを利用できるトライアルプログラムや応答時間の変動を把握できる測定サービスなどを用意している。

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[高橋睦美,ITmedia]