エンタープライズ:レビュー 2003/08/03 21:10:00 更新


レビュー:簡単に使えるOSを目指す「LindowsOS4.0日本語版」

LinuxベースのOS「LindowsOS」は、初心者でも簡単に使えるようにバージョンアップを続け、バージョン4.0の日本語版が今月末にエッジから発売される。β版ではあるが、日本語版の使用感を中心にLindowsOSを紹介していく。

 エッジはLindows.comが開発、販売しているLinuxベースのクライアント向けOS「LindowsOS 4.0」の日本語版を8月29日から発売することを発表した。発売まで1か月を切った今、Windowsからの乗り換えに値するのかどうかをβ版の試用感を交えてお伝えする。なお、今回試用したのはあくまでβ版のため、実際の発売時には変更される場合もあることをお断りしておく。

Lindowsの歴史

 いまさら多くを語るまでもないが、Lindows.comは、1990年代後半にオンライン音楽ブームの火付け役となったMP3.comでCEOを務めたマイケル ロバートソン氏が立ち上げた新興企業だ。同社は、Microsoftから商標侵害で提訴されたり、Microsoftのゲーム機Xbox上でLinuxを動作させるコンテストに賞金を出すなど、OSとは別のところで有名になった感もある。LindowsOSの最新バージョンは2003年6月25日に発表された4.0で、このバージョンをエッジが日本語化して国内で販売する。

 元々「LindowsOS」は、Windowsエミュレータである「WINE」を利用して、Windowsのネイティブアプリケーションを同OS上で動作させることを目指しており、発表当時はその部分が強調されていた。ところが、ほどなくして「Windowsネイティブアプリケーションを動作させる」という部分はあまり公言されなくなり、代わりに後述する「Click-N-Run Warehouse」をアピールしている。

 「Windowsのネイティブアプリケーションの動作」というのは、LindowsOSをアピールするためのマーケティング的な意味合いが強かったとは思うが、結局、Windowsエミュレータを独自に拡張し、Windowsネイティブアプリケーションをサポートしていくのは無理と判断したのだと思われる。現在、米国では低価格PC用やライセンス制限の少ないOSとして市場に存在しているといった状態だ。

日本語版のパッケージ

 LindowsOS4.0日本語版のパッケージは、「LindowsOS 4.0日本語版」、「LindowsOS 4.0日本語版 Plus」の2種類が用意されている。価格はそれぞれ6800円、1万4800円だ。

 価格の違いは、Lindows.comが提供するアプリケーションダウンロードサービス「Click-N-Run Warehouse」の1年間使用権の有無となっている。なお、Click-N-Run Warehouseの1年間ライセンス単体は9800円だ。

Click-N-Run Warehouseとは?

 Click-N-Run Warehouseは、同社のサイトに用意された「Linuxネイティブアプリケーション」を、GUI上で選択すれば、自動でダウンロード、インストールを行い、すぐに利用可能にするサービスである。ここにはApacheやBINDなどをはじめ、ZshやMozilla、さらにはStarOffice、RealPlayerなど1800種類以上が用意されている。

fig1

Click-N-Run Warehouseの画面(クリックで拡大します)


 しかし、実際にその画面を見てみれば分かるが、そこで提供されているソフトウェアの多くは、Linuxのフリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアとして広く配布されているもので、必ずしも自由な再配布ができるわけではないライセンスのソフトウェアはごく一部だ。

 つまり同サービスは、アプリケーションの入手、インストールに対するGUIインタフェースの提供がその存在理由となる。ソフトウェアの紹介が英語で行われるなど、日本語化にあたっていくつか改善を期待したい点はあるが、インターネット上を駆けずり回ってソフトウェアのありかを探す必要がないという点では評価できよう。このサービスを利用する場合、フリーソフトウェアの入手にもClick-N-Run Warehouseのライセンスが必要なことを考えると、Click-N-Run Warehouseのライセンスが付属しない「LindowsOS 4.0日本語版」のパッケージは、初心者には少々扱いづらいものになってしまいそうだ。

LindowsOSのインストール

 同OSのインストールは非常に簡単に行える。CD-ROMから起動すると、画面左上に「Install」と「Diagnostics」と表示される。

fig3

CD-ROMから起動直後の画面


 ここからInstallを選ぶと、グラフィカルなインストーラが起動する。なお、Diagnosticsを選ぶと、rootのコンソールに入った状態となる。

 実際のインストール画面は、ビットマップフォントのためか、あまり見栄えがよくない。最近のRed Hat Linuxなど、ほかのLinuxディストリビューションのインストーラと比べると、この部分は大きく見劣りしてしまう。

fig3

実際のインストール画面(クリックで拡大します)


 しかし、インストール時に必要な設定項目の少なさは他に類を見ないほど少ない。ユーザーが選択するのは、インストールするパーティション(またはHDD)の選択と、コンピュータ名くらいで、swapパーティションの作成など面倒な作業は必要ない。また、rootのパスワード設定すら必須ではない。実際のインストール時間は15分くらいである。なお、「/」パーティションのファイルシステムにはReiserFS、ブートローダーにはLilo(Linux loader)が使われている。

 OS起動時には、Lindowsライセンスへの同意のほか、「時刻設定」と「詳細設定」の2つが行えるウィンドウが開く(ライセンスに同意するにチェックを入れることで次回以降は表示されない)。「時刻設定」は日本国内であれば、Regionを「Asia」、Timezoneを「Tokyo」にすればよいが、デフォルトではそれぞれUnited States、Easternとなっている。

 また、「詳細設定」には「アドミニストレーター用パスワード設定」、「ディスプレイ解像度設定」、「ユーザー追加」、「コンピューター名変更」の4つのメニューが存在するが、いずれもほかの場所から変更できるのでここで設定する必要はないが、rootで作業するのが気になる人はここで一般ユーザーを作成しておくのもいいだろう。なお、ユーザー追加の画面ではデフォルトで使用するシェルを選択できるが、インストールされていないtcshやzshなども選択できてしまうのはあまり親切でない。

 ちなみに、同OSでは、グラフィカルログイン時などでは、「root」は「Administrator」と名称を変えている。紛らわしいことこの上ないが、これもWindowsを意識してのことなのだろう。

fig4

「root」の名称が「Administrator」に(クリックで拡大します)


デスクトップ環境

 同OSはDebian GNU/Linuxをベースとしており、Linuxカーネル2.4.20、XFree86 4.2.1.1を採用し、デスクトップ環境にはKDE、という構成になっている。そのため、Click-N-Run Warehouseを使わずとも、Debianを多少知っている方ならば、コンソール(デフォルトのシェルはbash)から「apt-get」コマンドで必要なソフトウェアをインストールして利用可能だ。また、rpmコマンドも用意されている。WebブラウザはWazillaで、Flashなどのプラグインもあらかじめインストールされている。なお、日本語入力環境には「ATOK」が搭載されているほか、タイプバンクの日本語フォントセットが用意されている。

Fig5

LindowsOSのデスクトップ画面(クリックで拡大します)


 インストール時にパーティションの作成画面がなかったことで、どのようにパーティションが分けられているか不明だったが、「mount」コマンドで確認すると、次のようになっていた(インストール時に「ハードディスク全体を占有する」を選択した場合)。

# mount
/dev/ide/host0/bus0/target0/lun0/part3 on / type reiserfs (rw)
proc on /proc type proc (rw)
none on /proc/bus/usb type usbdevfs (rw)
/dev/ide/host0/bus0/target0/lun0/part1 on /boot type ext2 (rw)

 デバイスの自動認識に関しては、キーボード、マウス、USBメモリなどのUSB機器は問題なく認識されたが、今回利用したビデオカード(NVIDIA GeForceFX 5200)は、認識はしているようだが、1280×1024の解像度では利用できなかった。仕方ないので、NVIDIAのWebサイトからLinuxドライバを探してきてインストールしようとしても、binutilsがないとエラーが表示されてしまう。そしてまたClick-N-Run Warehouseをめぐる旅に……と、途端に難易度が上がってしまう。そのほか、インテル845GEチップセットのオンボードサウンドも自動では認識されなかった。

 なお、デフォルトではコンパイラはインストールされていない。rootがパスワードなしで登録可能なのだから、セキュリティ上危険だという判断で外してあるのかもしれない。Click-N-Run Warehouseを確認してみるとGCCのバージョン2.95.4が用意されていた。

 実際の使用に関しては、Windowsとそれほど差異はなく、ブラウジングやメールなどに限定するならば支障を感じることは少ない。また、IEEE 802.11bの無線LANに対応しており、その設定にも困ることはないだろう。ただし、Windowsのコントロールパネルにあたるコントロールセンターは、設定可能な項目が多いので、どこに何があるのかは慣れるまでは大変そうだ。

fig6

コントロールセンターから無線LANの設定(クリックで拡大します)


 また、文字コードの問題には注意が必要だ。他のマシンから、FATやNTFSでフォーマットしたUSBメモリなどでファイルを持ってきて使用しようとすると、日本語名のファイルは文字化けしてしまう。マウント時に文字コードの指定がUTF-8となるために起こると思われるので、コンソールから文字コードをeuc-jpで指定してマウントするか、/etc/fstabに文字コードの指定を適切に記述すればよいのだが、このあたりはきちんと修正してほしいところだ。

求められるユーザーサポートの質

 こうしてみてくると、LindowsOSは、実質的にはいわゆる普通のLinuxディストリビューションと変わらず、ローカライズも細かい部分については問題が山積している印象を受ける。

 日本におけるその発売は、その実態が未知数であったことと、エッジのプロモーションが功を奏したこともあってか、それなりに盛り上がっている感がある。しかし、ビジネス的に成功するには、ユーザーサポートの質をどこまで高めることができるかが課題となってくるだろう。

 エッジはいくつかのエンドユーザー向けパッケージ製品を販売しており、それなりにユーザーサポートについても心得たものだとは思うが、同OSに関していえば、コンソールから諸設定を変更できるようなユーザーを対象としていない以上、相当質の高いサポートが要求される。また、セキュリティホールが発見された場合の対応を、Click-N-Run Warehouse経由でのみ行うつもりなのかが気になるところである。このあたりはClick-N-Run Warehouseなしでもセキュリティパッチを提供する手段を講じてほしい。今秋にはエンタープライズ向けのLindowsの発売も予定しているというので、ユーザーが信頼できるような実績を残してほしいところだ。

 エッジでは、同製品を2004年9月までに67万本出荷し、シェア5%を目指すとしている。同社では、そのための訴求ポイントとして、家庭内で無制限にインストール、利用できる「ファミリーライセンス」を用意するなど、価格面でのメリットをあげている。もちろんそれだけでは、PCにプレインストールされて販売されることが多いWindowsに対して直感的に分かるアドバンテージがあるとはいえないため、エムシージェイやぷらっとホームから、同OSがプリインストールされたPCを販売する予定だという。

 そのほか、ユーザーの意見をLindows開発に取り入れるのが目的の「LindowsOS日本語版インサイダープログラム」の参加者募集も始めており、こちらだと、年間1万4800円で最新バージョンを年2回入手できる。また、特典として、CD-ROMからブートして利用できる、いわゆるKNOPPIXのLindows版が配布されるという。

 筆者が思うに、Windowsがほぼ独占状態のコンシューマーOS市場に対し、5%のシェア獲得というのは、かなり険しい道である。現状のLindowsでは、少し凝った使い方をするにはやや厳しいため、CD-ROMブートのLindowsであれば気軽に試す人も増えるのではないかと考える。

 いずれにせよ、Windowsに対して明白な優位点を示すことで、着実に成長していってほしいところだ。

LindowsOS4.0日本語版の主な仕様
推奨環境 800MHz以上のX86系CPU
メモリ128MB以上
製品サポート 1年間のClick-N-Run Warehouse使用権(Plus版のみ)
価格 LindowsOS4.0 日本語版 6,800円(予価/税別)
LindowsOS4.0 日本語版 Plus 1万4,800円(予価/税別)
問い合わせ先 エッジ

[西尾泰三,ITmedia]



Special

- PR -

Special

- PR -