エンタープライズ:インタビュー 2003/08/21 20:58:00 更新


Interview:米Infosysのムルティ会長、「インド系ベンダーの強みを発揮する」

米Infosysは、近年活躍が目立つインド系のIT企業を代表するベンダーの1つ。同社のナラヤナ・ムルティ会長に、インド企業としての同社の特性や、米国のIT投資状況、オフショア開発への取り組みなどを聞いた。

 ITコンサルティングやシステムインテグレーションを手掛ける米Infosysは、近年活躍が目立つインド系のIT企業を代表するベンダーの1つ。来日した同社のナラヤナ・ムルティ会長に、インド企業としての同社の特性や、米国のIT投資状況、オフショア開発への取り組みをはじめとした同社の今後の戦略について話を聞いた。

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ナラヤナ・ムルティ会長

ZDNet 米国の経済状況とInfosysのビジネスの現状についてどう考えていますか?

ムルティ 米国経済はここ数年非常に厳しい状況が続いてきました。しかし、最近では雇用が改善し、住宅需要も回復してきたというニュースが出てきています。これらはInfosysにとってはプラスに働くと考えています。

ZDNet InfosysやWipro、また、i2 Technologiesなど、インド系の企業がIT業界で徐々に存在感を高めていることについてはどう感じていますか?

ムルティ インドには10億人という膨大なの人口があり、そのうちの5%に当たる5000万人が中流階級に当たります。この階級を中心に、IT業界に多くの人が流れています。元々、勤勉な人が多いこともあり、世界のほかの国と比較して状況がいい方向に向かっていると言えます。

 McKinseyのレポートによると、2009年〜10年までに、インド系のソフトウェア市場は500億ドルにまで膨らむと言われています。今は100億円なので、5倍になる計算です。

ZDNet 余談ですが、インドでは掛け算の暗記を2けたまで行うと聞いたことがあります。それが、インド人がコンピュータの仕組みを理解する上での優位性になっていると言う人もいます。ちなみに、日本の義務教育で習うのは「9×9=81」 までです。

ムルティ 掛け算の暗算については、インドでは、「29×29=841」までは学校で暗記させられます。また、大学教育まで、計算機を使うことが許されていません。計算機を使ってはいけないことは、確かに、インド人の情報処理能力を高めている1つの要因かもしれません。

ZDNet Infosysの今後の戦略について教えてください。

ムルティ Infosysは、システムインテグレーション、ITコンサルティング、アウトソーシングを事業の柱にしています。この中で、ITコンサルティングはマージンが大きいため、今後伸ばしたいビジネスです。ITコンサルティングの中で、パッケージ導入による売り上げは14%増えました。

ZDNet オフショア開発についてはどうでしょうか?

ムルティ オフショア開発は米国で非常に大きなビジネス機会になります。今年度は10億ドル近い規模になります。

 Fortune 500のCEOやCFOは、オフショア開発のコストメリットの大きさに気づき始めてきています。インドのソフトウェア企業の収入は前年比39%増加しました

ZDNet 日本市場にはどう取り組みますか?

ムルティ 日本市場でのビジネスは7年目になります。東芝やソニー、富士通といった大企業ともビジネスができるようになり、これからは本格的に力を入れていく市場です。問題があるとすれば、言語や文化などの市場特性を理解しなくてはならないことです。

 日本にはいろいろな意味で投資をしています。その1つは教育です。7人のインド人を半年間、日本に連れてきて、日本語や文化、ビジネスのルールなどを学ばせ、日本市場でビジネスをする上での中心メンバーになってもらおうとしています。また、逆に、日本人の社員をインドへ派遣するプロジェクトも立ち上げる予定です。

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[聞き手:怒賀新也,ITmedia]