エンタープライズ:コラム 2003/08/22 14:07:00 更新


Linux Column:初心者との対話によって得られたこと

Linux導入における課題について考えてみた。日ごろ見落としがちな疑問について再考してみよう。

 世間ではお盆休みも明けたようだが、雨ばかり降っていて今ひとつ夏休みという感じではなかったようだ。筆者は特に夏休みをとらず、初心者向けのセミナー講師ばかりを勤めていた。さすがに休憩があるとはいえ、1週間ぶっ通しというのは大変だが、その間にセミナー受講者との話を通しいろいろと考えさせられることがあった。今回のテーマはこれだ。

Linuxを使うにはどのようなハードウェアを購入すべきか

 この命題はコンピュータを利用する上で常に付きまとう問題といってもよいだろう。特にLinuxとは限らず、さらに規模も問わずいっしょだ。

 特にメーカー製PCの場合、デスクトップ型、ノート型共にWindows専用という趣きが強いことは事実であり、Linuxが初期インストール時に問題なくハードウェア動作(認識)するかどうかは皆目見当がつかない(ただし、インターネットを通して動作検証された情報を得ることで多少検討づけることは可能だ)。筆者は、このような質問に対しては、PCのハードウェアを理解する勉強も兼ねてPCを自作することをすすめている。しかし、自作PCも万能ではない。パーツが多様化してきており、特にグラフィックチップ周りは進歩が早く、Windowsで利用することを前提とするドライバソフトのリリースが先行しがちだ。このため、Linux(XFree86)で使うことを考えても、追いついていない面がある。

 今後、Linuxがデスクトップソリューションを展開していく場合、安価で入手が容易なデバイスでの動作保証が必要となるだろう(どこまで保証するのか、という問題は別として)。現在でも幾つかのメーカーでは、Linuxでの動作検証状況やドライバの提供を行っているが、全体から見れば一部だ。ここまでオープンで選択肢が多い状況になると、かえってその選別と検証にコストがかかるようになってしまわないだろうか、と心配にもなる。

 LindowsOSの販売を行うエッジが中心となって「クライアントLinux PC コンソーシアム」を設立し、技術情報の交換などを行う動きなどもあるようだが、是非導入において指針となる情報提供が行われることを期待したいところだ。

どのディストリビューションを選べばよいのか

 この命題も常に聞かれるものだが、私の中ではここにきて一層答えにくくなってきているものの1つだ。

 スタンダードを選ぶとなるとRed Hat Linuxとなるのだろう。Red Hat Linux 9を使ってみると、確かにデスクトップとして使う分にはかなり良くなったと感じるのだが、サーバー用途で見てみるとちょっと困ってしまうところがある。たとえばIPアドレスの設定ファイルがこれまでのバージョンでは/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0だったのが、Red Hat Linux 9では/etc/sysconfig/networking/profiles/default/ifcfg-eth0と異なっている。しかも互換性のためか、/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0は見かけ上は残っているので、これまでと同じ調子で一生懸命こちらをviエディタなどで変更しても、一向に設定が反映されない。設定ファイルの中身もオプションが豊富に設定可能となっており、完全にデスクトップ用途、GUI設定ツールのみを考えた作りという感じだ。現状でニーズが高いサーバ向けの技術習得用として見た時には、ブラックボックス化が進んでいてややすすめがたい面がある。

 個人的にはRed Hat Linux 7.3が使いにくいところはあるものの、ほどよく簡素でバランスが良いと感じるのだが、今年いっぱいでErrataの提供も止まるとなると今更すすめにくい。

 結局、色々と試してみて一番自分と相性が良さそうなものを選ぶといいですよ、と苦しい返答をしていたのだが、考えてみればこれからLinuxを勉強する初学者が良いも悪いも判断できようもなく、結局のところ全然答えになっていない。

 現在Linuxの導入をちゅうちょする大きな理由の1つである「Linuxが分かる技術者が不在であるから」という課題を解消していくには、標準ベースで習得した技術が幅広く再利用できるのが望ましいだろう。多くのディストリビューションがLSB(Linux Standard Base)やFHS(File System Hierarchy)のような標準に対応しつつあり、早晩、どのディストリビューションを選んでも基本は一緒というようになっていくことを期待したい。

 今回は、大別して2つの点を取り上げたが、ほかにもどのような技術を習得していくべきか、Linuxやオープンソースをどのように活用していくべきかなど、まだまだ明快な答えが見い出せない課題が多いことにも気づかされた。そんな1週間だったのだ。読者の人も、いま自分がLinuxやオープンソースを取り入れていくとしたら、どのような道筋を歩めばよいのか、改めて考えてみるのもよいかもしれない。

[宮原 徹,びぎねっと]