エンタープライズ:ニュース | 2003/08/26 21:03:00 更新 |
Microsoftの市場参入で活性化する企業向けIM
“Greenwich”IMサーバ投入により、Microsoftは企業IMに本格参入した。企業IM市場の競争は激化しそうだ。(IDG)
デスクトップ支配の波に乗り、Microsoftは企業におけるIM採用に弾みをつけようと目論んだ製品展開を行っている。しかし、市場参入が遅かったために、コラボレーション市場のリーダー的存在であるIBMなどに太刀打ちできるか疑問視するアナリストもいる。
コードネームGreenwichと名付けられていたOffice Live Communications Server 2003は、以前はReal Time Communications Serverと呼ばれており、先週、製造が開始された。Microsoftによれば製品の出荷は6-8週間後になると予測しており、Microsoftの主任プロダクトマネジャーであるエド・シムネット氏は、IMをビジネスツールとして確立させる「重要な瞬間」になるだろうと述べた。
Live Communications Serverでは企業がエンタープライズIMネットワークを構築し、公衆サービスに関連したセキュリティー問題に対処、従業員のIM利用のログを取り、管理することが可能だ。同製品はユーザーがオンラインかどうか、Officeアプリケーションでコミュニケーション可能な状態にあるかどうかを判断できる。また、この「在席」機能はカスタムポータルなどの他のアプリケーションの情報についても拡張できる。
アナリストらは、登場間近の新製品の重要性については認めているが、Microsoftは追いつく必要があると考えている。既に市場に参入しているIBMがLotus Sametime(最近になってLotus Instant Messaging and Conferencingと名前を変えた)を投入して、5年ほどになる。
「Communications Serverはバージョン2なればSametimeと競合できるだけのものになると見ている」とOsterman Researchの社長兼創設者であるマイケル・オスターマン氏。
しかし、OfficeはほとんどすべてのビジネスユーザーのPCに搭載されており、Microsoftはかなりの市場的優位性を備えているとGartnerの調査担当ディレクター、モーリン・キャプラン・グレイ氏は指摘する。
「Live Communications Serverには、ほかのどの製品にもないものがある。それはOfficeとの統合とSharePointだ」とキャプラン・グレイ氏。SharePointはMicrosoftのファイル共有とチームコラボレーション製品である。
ニューヨークの法律事務所であるWeil, Gotshal & Mangesは9カ国で3000人の従業員を抱えているが、すでにIMを利用している。同社は2001年にSametimeを導入し、IMといくつかのカスタムアプリケーションを使っていると同社クライアント情報サービス担当副主任のリチャード・ロウ氏は述べた。
「われわれはIMを自社のポータル、社内アプリケーション、そしてERPソフトウェアなどのシステムと統合した。これにより、単にIMの会話が行われているだけではなく、その時の状況に合わせてIMが利用されているのだ」とロウ氏は説明する。
IMを状況に合わせて提供するのは、Microsoftの目標の一つでもある。現在のところ、MicrosoftはIM製品の置き場所をどこにするか苦心していた。最初はExchangeに入れ、次はWindowsの一部として組み込んだ。同社は最終的にOfficeを安住の地に決めた。
「Exchange IM製品は十分に熟成されていなかった。Live Communications Serverは十分に練られてきたアイデアで、コラボレーション製品の長期的なロードマップの一部となっている」とIDCの調査担当マネジャーであるロバート・マホウォルド氏は述べる。
それでもIBMの製品はMicrosoftと比べて「4つの大きな利点がある」とマホウォルド氏。Sametimeは全体的に低価格で、ウェブカンファレンシングが含まれている、追加サーバが不要である、モジュラー型の構成が可能であるとマホウォルド氏は指摘する。
Microsoftの前Exchange IMプロダクトマネジャーであるフランシス・デソウザ氏は現在、IMlogicのCEOであり、一般向けIMシステム上に構築するセキュリティ・認証ソフトウェアを販売しているが、同氏によれば、Microsoftは「学習段階」を経験する必要があるという。
「われわれは当初、IMは電子メールを保管するものだと考えていた。しかし、MicrosoftはIMと在席機能はOfficeとより緊密に結びついていると学んだ。多くの使用例がOfficeにからんでいる」とデソウザ氏。
企業向けIM製品が登場して数年が経過しているが、企業ではほとんどが一般向けIM製品を利用しているとオスターマン氏は指摘する。たとえば個人用ジェット機の販売を行っているNetJetsなどでは、IMをファイアウォールでブロックしているところもある。
NetJetsはIMがビジネス目的で使われていないということを発見し、従業員がIMを使えないようにした。しかし、同社は新しいMicrosoft製品の導入を計画していると、NetJetsのCTOであるブラム・ファン・デア・プローグ氏は述べた。
「われわれはIM側でより細かいコントロールができるGreenwichのような製品に大きな関心を持っている。その潜在的な利点については理解している」(同氏)。
NetJetsはIMに投資すると、従業員が扱うべき情報の流れがまた増えてしまうのではないかと心配している。従業員は既に電子メール、ボイスメール、電話、そしてカスタム・ワークフロー・アプリケーションを使っているのである。「すべて使うとなると、優先順位が無秩序になり、混乱のもとになる」と同氏は述べた。
Weil, Gotshal & Mangesにおいては、IMは従業員がより効率的にコミュニケーションを取り、物理的には離れていても緊密に作業できる。それでもこれは革命的というよりは漸進的なものだと同社のテクノロジープログラム担当ディレクターであるランディ・バーカート氏。
Office Live Communications Serverは、すぐに大規模なユーザーベースを獲得することになる。Exchange 2000 IMユーザーはアップグレードライセンスを購入すると、無償でこの製品を入手できる。また、既にActive Directory、SQL Server、Windows Server 2003を使っているMicrosoftの忠実な顧客や、Office 2003の購入を検討しているユーザーはこの餌に食いつくだろうとアナリストは述べる。
Microsoftは強力なインストールベースを使って、企業におけるIM採用を一気に加速させるかもしれないとするアナリストもいる。
「Microsoft環境が完全に組み込まれた組織は、MicrosoftがIMとコラボレーション競争に参加してくるのを切望してきた」とGartnerのキャプラン・グレイ氏。
IDCのマホウォルド氏はこれに同意するが、最初にこの製品を採用するのは一部の最先端企業のみだと指摘する。
「Office Live Communications Serverは万人向けというわけではけっしてない。何か抜きんでたアップグレードを行わないと、みんなを引っ張り出すわけにはいかない」とマホウォルド氏。
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