エンタープライズ:ニュース 2003/08/27 21:24:00 更新


日本IBMが旧ラショナル製品を一新、短期間で高品質のソフトウェア開発実現へ

日本IBMがRationalブランドの新製品群を販売開始する。国内においてもUMLベースのモデル駆動型でソフトウェア開発の生産性を高めようという機運が高まっているという。

 日本アイ・ビー・エムは8月27日、旧ラショナル・ソフトウェアの製品ラインを一新し、日本IBM製品として9月24日から出荷を開始すると発表した。

 昨年12月、Rational Softwareを21億ドルで買収することを明らかにして以来、IBMは急ピッチで統合を進めてきた。国内においても8月1日には統合を完了している。LotusやTivoliの統合完了が5〜6年を要したのと比較すれば、まさに桁違いのスピードといえる。

 都内で行われた記者発表会で、ソフトウェア事業を担当する堀田一芙常務は、「外部環境の要請もあるが、ほかの4ブランドに比べ、Rational製品は、より高い次元の目標達成を担っているからこそ統合を急いだ」と話す。

 Rational製品群は、分析・設計、テスト、構成管理の各種ツール、および「RUP」(Rational Unified Process)と呼ばれる開発手法などから構成される。ほかの4ブランドがITシステムの変革を担うミドルウェアだとすれば、Rational製品は企業が確固としたITガバナンスを打ち出し、実現していくためのオープンな開発環境といえる。

 一新されたラインアップの中でも、「e-ビジネス・オンデマンド」構想のための中核製品と位置づけられているのが、新たに日本語化された「IBM Rational XDE v2003」ファミリーだ。UML(統一モデリング言語)を用いた分析・設計ツールとしては、「Rational Rose」が知られているが、Rational XDEはIBM WebSphere StudioやMicrosoft Visual Studio .NETを統合開発環境(IDE)として利用する開発者向けのソリューション。UMLベースのモデル駆動型開発手法を提供し、高い品質のソフトウェアを短期間で開発できるようになるという。

 自動化のポイントはコードとテストスクリプトの自動生成だ。UMLモデルのクラス図を作成すれば、例えば、「GoF」(Gang of Four)や「J2EEパターン」といった代表的なデザインパターンやコードテンプレートを用いて、WebSphere StudioによってJavaコードを自動生成できるわけだ。

 また、マイクロソフトと共同で仕様を策定した「RAS」(ラズ:Reusable Asset Specification)への対応も目玉となる。RASでは、コンポーネントやパターン、フレームワーク、ドキュメントなどのアセットをパッケージ化し、それらを効率的に再利用できるようにしている。

富士通もXDE搭載へ

 Rational XDEは、Eclipseのプラグインとして機能するため、これをベースとしたIDEであればシームレスに統合できる。分析および設計フェーズを担うRational XDE Developerを富士通が自社のEclipseベースIDEである「Interstage Apworks」に搭載することも明らかにされた。

 記者発表会に同席した富士通ソフトウェア事業本部常務理事、石田安志氏は、「旧ラショナルとは信頼関係を築いてきた。オープンを維持する方針が打ち出されているため、IBMという冠にも違和感はない」と話す。

 やはりRational XDEの要求定義と分析・設計機能をVisual Studio .NETと組み合わせて提供するマイクロソフトも同様だ。エンタープライズ事業を担当する平井康文取締役は、「IBMはパートナー。業界を挙げ、より良い開発の提供に取り組むべきだ」と話した。

 こうした背景には、ソフトウェアを製品に組み込むメーカーや、ビジネスアプリケーションを構築・活用するユーザー企業が、開発生産性向上に高い関心を寄せ始めたことがある。短納期かつ低コストで開発を済ませたが、あとからツケが回ってくるケースも多い。携帯電話端末の不具合による回収などの例を見ても、ソフトウェアの品質が経営に与える影響は甚大だ。

 旧ラショナルの社長で、現在はラショナル事業部長を務める齊藤肇氏は、「日本が製造業の再生に取り組む中、もはやソフトウェア開発を継子(ままこ)扱いできなくなっているし、ビジネスアプリケーションの分野にも火がつき始めた」と話す。

 価格は、IBM Rational XDE Developer v2003 .NET Editionと同Java Platform Editionが50万4000円から、ビジュアルトレース機能やRational PurifyPlusを統合したIBM Rational XDE Developer Plus v2003は70万8000円から。また、WebSphere StudioやEclipseで稼動するテスト自動化ソリューションのIBM Rational XDE Tester v2003は51万5000円からとなっている。それぞれ出荷は9月24日から始まる。

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[浅井英二,ITmedia]