エンタープライズ:ケーススタディ 2003/08/27 22:49:00 更新


WEDGWOODのコーヒーカップ、BIツールがディスプレイ方法を決める

テーブルウェアを提供する高級ブランドとして知られる「WEDGWOOD」。日本法人のウォーターフォード・ウエッジウッド・ジャパンは、自社の業務システムにJ.D.Edwardsを採用しており、4月にBIシステムも稼動している。BIの効果について聞いた

 「WEDGWOOD」と聞いてすぐに解説できれば、女性とのおしゃべりにも1つ話を添えられるだろうか。WEDGWOODは、英ウォーターフォード・ウエッジウッドが日本で展開しており、食器などのテーブルウェアを提供している。日本でも百貨店の多くで販売されており、コーヒーカップなどの陶磁器やクリスタル製品の高級ブランドとして支持されている。

 日本法人のウォーターフォード・ウエッジウッド・ジャパンでは、同社の基幹システムとして、1993年からJ.D.Edwards(JDE)のERPパッケージ「WorldSoftware 5.1 日本語版」を利用しはじめ、現在は「WorldSoftware 7.3」にアップグレードしている。JDEの日本法人が設立されたのも1993年であるため、同社にとっての最も古い顧客になっている。

顧客の嗜好の変化が激しい

 同社は、インフラの整備や2000年問題への対応といった懸案を終え、次のIT計画として、経営データを透明化するためのデータウェアハウス導入を決めた。

 情報システム部の石田聡部長は、「WEDGWOODの製品は顧客の好き嫌いにサイクルがあり、嗜好の変化をすばやく捕らえる必要がある」と話す。これを実現するには、同社の店舗や営業担当者、倉庫管理システムなどから集まる受注、購買、在庫情報などを一元的に管理し、顧客の行動データなど、知りたい情報をさまざまな切り口から見られるようにする仕組みが必要になる。

wedgwood.jpg
ウォーターフォード・ウエッジウッド・ジャパン情報システム部の石田聡部長

 この仕組みは、データウェアハウス(DWH)を構築し、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを使うことで実現できるもの。DWHの構築はコストも時間もかかる作業になる。しかし、同社は、JDEのERPを既に導入しており、BIツールがERPのデータ構造と統合されていたため、データウェアハウスの作成にかかる手間を軽減できたという。

究極の目標は売り上げの増加

 そして、BIツールを利用し、業務データを有効活用することによる最終的な目標は、当然ながら売り上げの増加になる。

 実際に導入した効果として、例えばマーケティング担当者は、プレートやティーポットといった新製品をリリースする場合、過去に似た製品を売った場合のデータをBIツールを使って参照する。そして、各店舗に割り振る商品点数を決めることもある。さらに、店頭での商品のディスプレイも、過去のデータや、店舗の立地特性といったデータを基にして行うことで効果を上げることができるという。

 BIツールのメリットは、こうしたデータをマーケティング担当者がいつでも、好きなように抽出できること。通常、これらのデータの作成は、情報システム室などに依頼し、上がってくるまでに数日、あるいは数週間待たされることもある。

 「BIを導入してから、営業やマーケティング担当者がデータの取得のために情報システム室に来ることがなくなった」(石田氏)

 利用範囲は、社長の経営分析から、営業などのフロントエンドの担当者、マーケティング、生産管理や在庫管理の担当者まで、すべてのユーザーに及び、汎用性が高いため、BIツールはしっかりと導入すれば、業務プロセスを大幅に改善できる。

 JDEでは、プロモーションごとの収益性分析など、さらに広範囲にわたる分析系のCRMツールへと拡張できるとしてアピールしている。

システム導入期間は

 石田氏は、J.D.Edwardsのアプリケーションについて、「WorldSoftware 5.1のころまではトランザクションの不整合なども頻繁に起きていたが、7.3になって良くなり、在庫管理から会計システムまで安定した」と話す。

 一方、BIシステムは、2003年4月に稼動しており、約3カ月というスピード導入だった。これは、ERP側でしっかりとデータが整備されていたことが要因となっており、「BI専門ベンダーの製品を採用していたら、もっと苦労していた」と石田氏は話している。

 また、今後改善するポイントとして、パフォーマンスの向上を上げている。データは日々蓄積しており、キューブを作成する際に2年分のデータを参照するため、処理速度が遅くなっているという。

 これについては、「サーバマシンのスペックを上げなくてはいけない。できれば、アプリケーションのバージョンアップもお願いしたい」と話している。

関連記事
▼ケーススタディチャンネルへ

関連リンク
▼日本J.D.Edwards

[怒賀新也,ITmedia]