インタビュー
2003/09/04 05:38:00 更新


Interview:サブスクリプションモデルとLinuxを知悉していることが成功の鍵、とMontaVista社長

組み込み向けLinux「MontaVista Linux」を手がけるMontaVistaは、組み込み向けLinuxを提供している会社の中でも最も成功している。その理由を創業者で現在も社長兼CEOを務めるレディ氏に聞いた。

 米MontaVista Softwareは、組み込み向けLinux「MontaVista Linux」をロイヤリティフリーで無償公開し、MontaVista Linuxを使って機器開発をしようとするメーカーに対するコンサルティングから売り上げを得るという、ユニークなビジネスモデルを採用している。組み込み向けにLinuxを提供している会社はいくつかあるが、MontaVistaはそれらの会社の中でも好調で、急成長しているという。

 設立者の一人、ジェイムズ・レディ社長兼CEOは、組み込みシステム開発では業界に知らない人はないといわれるほどの草分け的存在だ。来日したレディ氏にMontaVistaの成功の理由を聞いた。

ジェイムズ・レディ社長兼CEO

ジェイムズ・レディ社長兼CEO


ZDNet 経歴について簡単に教えてください。

レディ氏 私は過去25年間にわたって、組み込み向けOSの開発に関わってきました。1999年にMontaVista Softwareを設立してからは、組み込み向けに特化したLinuxのビジネスに注力しています。

 組み込み向けOSはこれまで、携帯電話や自動車、VTRなどあらゆる分野のさまざまな電子機器に利用されてきました。しかし、今やこれらの製品にはインターネットとの接続機能が不可欠になっています。従来の組み込み向けOSは、リアルタイム性を追求したシンプルなものでしたが、WebブラウザなどPCのような高度なネットワーク機能が要求されるようになってきているのです。洗練されたデスクトップ向けOSであるLinuxを、携帯電話やセットトップボックス、パーソナルビデオレコーダーなどに搭載できるよう、組み込み向けに最適化使用と考え、MontaVistaを設立したというわけです。

ZDNet 組み込み向けにLinuxを提供する会社の中で、MontaVistaは特に大きな成功を収めていると聞いています。その原因はなににあるとお考えでしょうか。

レディ氏 そうした評価はありがたいことですね。確かにMontaVistaはこれまで成功してきました。その理由ですが、2つほどあると思います。

 MontaVistaの(コンサルティングで利益を得るという)ビジネスモデル「サブスクリプションモデル」は非常にうまくいっています。長年にわたって組み込み向けOSを販売してきた経験からすると、このサブスクリプションモデルは、ソフトウェアを“売る”という方法よりも、我々の顧客により適しているのです。

 また、ソフトウェア開発においてはソフトを管理するということが重要です。Linuxは非常に拡張性が高く、3000万行ものソースコードからなっていますが、とても有能なソフトウェア技術者のチームがその管理に当たっており、これだけの規模のソフトとしては、非常に進歩も速いものになっています。MontaVistaは早い段階からこうした組織に関わっており、Linuxを知悉しています。競合他社は公開されたLinuxをダウンロードしてコンパイルして使っているだけであって、Linuxに日々どのようなバグが修正され、機能が加わったかについて、真に理解していません。これもMontaVistaが成功していることの隠れた理由だと思います。

ZDNet 最近の日本市場や世界市場での収益の伸びはいかがでしょうか。

レディ氏 申し上げられる範囲で言えることは、2001年から2002年で、収益は2倍になったということです。外部のアナリストによれば、ここ数年エレクトロニクス業界が低迷している中で、Linux関連企業は、その多くがまだ立ち上げの時期ということを考慮しても、成長しており、今後は有望だとされています。

ZDNet 昨今のITバブル崩壊、テレコム市場などの冷え込みの影響はあまりなかったということですか。

レディ氏 1999年にNortelやLucent、Ericssonなどテレコム企業のプロジェクトがすべてキャンセルになってしまいました。これらのテレコム市場は非常に難しい状態になったと言っていいでしょう。しかし幸いなことに、MontaVistaは多くのコンシューマーエレクトロニクス企業ともビジネスを行っていましたので、テレコム市場の落ち込みの分をカバーすることができました。

ZDNet とすると現在はコンシューマーエレクトロニクス市場にフォーカスしているということでしょうか。日本ではソニーや松下電器産業がMontaVistaに出資するなど、密接な関係になっているようですが。

レディ氏 決してテレコム市場をやめたということではありません。MontaVistaは成功できる市場はないかと、幅広い分野を注意深く見ているのです。今のところ最も期待が持てるのはコンシューマーエレクトロニクス市場で、その世界の中心は日本ということになりますね。日本以外では、PhilipsやMotorolaの製品でもMontaVista Linuxは採用されています。Linuxを組み込み向けOSとして採用するのは、世界的な流れになっていますね。

ZDNet Microsoftも組み込み向けOSとしてWindows CEの改良を重ねていますが、Windows CEについてはどうお考えですか。

レディ氏 Microsoftが提供するWindows CEと、メーカーが必要な機能にはギャップがあるようです。ソニーや松下電器そのほかの企業はLinuxフォーラムで、将来の機器にはWindows CEではなくLinuxを採用するはっきりと述べています。例えば松下はテレビに関して熟知しており、彼らが望む機能を望むように組み込んでPanasonicのテレビを作りたいわけです。Microsoftのテレビを作りたいわけではありません。MontaVistaなら柔軟に対応できます。

ZDNet SCOがLinuxソースコード著作権に関して権利を主張している件についてはどう思われますか。

レディ氏 我々のビジネスにはなんの影響もないと考えています。彼らがまだ証拠を見せていないので、多くを語ることは難しいですね。


 このインタビューはSCO GroupがSCO Forumで証拠のコード(の一部)を見せる前に行われたもので、レディ氏はSCOの問題に関して詳しくは語らなかったが、MontaVistaはその後自社サイトにこの問題についての声明を発表している。

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[聞き手:佐々木千之,ITmedia]

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