エンタープライズ:ニュース 2003/09/08 20:10:00 更新


IBMの次はSGI? SCOは訴訟を拡大するか

SCOはLinuxカーネルに持ち込まれ、「深刻な権利侵害が認められる派生的作品の一例」として、XFSと呼ばれるSGIのファイルシステムソフトを挙げている。

 UNIXのコードをLinuxに不正流用したとして、IBMを相手に30億ドル以上の損害賠償を求める訴訟を起こしたSCO Groupが、SGIも標的にとらえる可能性がある。

 SCOは9月5日、新たな訴訟を起こす可能性についてのコメントは拒否した。だがUNIX知的財産からの収益拡大戦略を率いる同社上級副社長のクリス・ソンタグ氏は、これまでに2度、SGIが次なる標的であることをほのめかす発言をしている。

 ソンタグ氏はまず6月に、IBM以外にもう1社、北米の大手ハードメーカーの提訴を検討中だと語った。また8月には、Linuxによるコード侵害の具体例だとするものの一部を紹介したプレゼンテーションで、Linuxカーネル2.4あるいは2.5に持ち込まれ、「深刻な権利侵害が認められる派生的作品の一例」として、XFSと呼ばれるSGIのファイルシステムソフトウェアを挙げている。

 SGIでは、XFSのオープンソース化は契約違反には当たらないと主張している。「われわれは、XFSをオープンソースとしてLinux向けにリリースしたことは、当社とSCOとのUNIX契約で認められた範囲の行為だと確信している」とSGI広報担当のマーシー・コールマン氏は語る。同氏は、SGIとSCOとの間で話し合いが行われているのかとの問いにはコメントを拒否した。

 もしSGIを相手に訴訟を起こせば、SCOはIBM相手の訴訟やLinux利用企業にサーバ1台当たり数百ドルを支払わせるキャンペーンに加えて、新たな大仕事を抱え込むことになる。だがSCOにとっては訴訟が唯一の手段ではない。同社はここのところ、Linuxユーザーを法廷に引きずり出す代わりに請求書を送付するなど、やや穏和な動きに出ている。

 ファイルシステムは、OSの一部としてハードディスク上のデータの読み書きを管理している。XFSはLinux用に提供されている幾つかのファイルシステムの一つ。クラッシュからの復旧作業の繁雑さを減らすため、動作のログを取る「ジャーナリング」と呼ばれるハイエンド機能を備えている。

 SGIはもともと、Irix版のUNIXを搭載した自社のUNIXサーバ用にXFSを開発したが、1999年、Linux支持計画の一環として、オープンソース版のXFSをLinux向けにリリースした。

 Linux用の別のジャーナリングファイルシステムに、JFSと呼ばれるIBMのプロジェクトがあり、SCOはIBMを相手に起こした訴訟で、これを槍玉に挙げている。SCOは、同社がIBMと結んだ契約では、IBMがUNIXコードを修正することは許可しているが、そうした派生的作品を、誰もが閲覧・修正・配布可能なオープンソースソフトとしてリリースすることは許可していないと主張している。SCOは、IBMが自社で開発したJFSなどの技術をLinuxに持ち込むことで、SCOとの契約に違反したとの疑いを掲げている。

 SGIは財務上の問題を抱えているが、同社のXFS計画は成功だった。Linuxの創始者で開発リーダーのリーナス・トーバルズ氏は2002年9月、標準Linux開発カーネルにこのソフトを統合した。

 ソンタグ氏は8月のプレゼンテーションで、LinuxのXFSに含まれた173ファイル、11万9130のコード行がSCOの知的財産を侵害していると述べた。これは同社が侵害されたと主張している1549ファイル・114万7022行のうちのかなりの部分に当たる。

 訴訟に関連した契約、企業、およびそれぞれの動きの複雑さを考えると、SCOがIBMとの訴訟に勝っても、それを武器にSGIも追及できるかどうかは分からないとCray Caryの知的財産権弁護士、マーク・ラドクリフ氏は語る。

 「それぞれの被告で事情が違うため、一つの訴訟で証明されたことを、ほかの訴訟に持ち込むのは若干難しい」(ラドクリフ氏)

 法律事務所Weil Gotshal & Mangesのパートナー、ジェフリー・オスターマン氏は、知的財産権侵害訴訟は、複数同時併行で申し立てられる場合が多いと指摘する。原告に訴訟のための資金、あるいは勝訴の見込みがよほどない場合を除いては、「一般に、業界全体に侵害行為があると判断した場合、すべての相手を追及する戦略が採用される」という。

 オスターマン氏は、一つの訴訟に勝ったからと言って次の訴訟が有利に運べるとは限らないが、敗訴した場合は別だと語る。「一つの訴訟で負けたら、(同様のほかの訴訟で勝訴するのが)かなり難しくなる」と同氏。

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[Stephen Shankland,ITmedia]