エンタープライズ:ニュース 2003/09/10 10:45:00 更新


目玉も、期待も、Oracle Database 10g一色

今年のオラクル・ワールドは、どうやらひと味違うようだ。もしかしたらデータベースの新版発表という特別なタイミングが醸し出しているのかもしれない

 今年のオラクル・ワールドは、どうやらひと味違うようだ。いつもならこの催しは、半分エンターテインメントショーの様相を呈していた。米国本社役員によるオラクル製品のプロモーションステージは、映画だのミュージカルだのをパロディ化して、そのユニークさで参加者の来場を募っていたものなのに、今回はそうした派手な演出はない。何人かの役員の世代交代があったせいなのかもしれないが、会場には真面目なレクチャーイベントという雰囲気が色濃く漂っていて、まずはその変化に驚いた。

 そのような空気は、もしかしたらフラッグシップ製品であるデータベースの新版発表という特別なタイミングが醸し出したものかもしれない。カンファレンス参加者の興味は、まさにOracle Database 10gに一極集中していた。この製品の最新情報を提供するテクニカルセッションには、いずれも参加者の長い長い列ができていた。なかにはあまりにも多くの受講希望者が押しかけてしまってレジストレーション作業が追いつかず、開始時間を30分過ぎてもまだ数百人が会場入り口で焦れながら並んでいるというセッションも出る始末だ。

 期待を集めるOracle Database 10gは、サーバやストレージの低価格化が進んでいる市場背景と、企業の中でERPやCRMといったアプリケーションがそれぞれ個別に運用管理されている現実に対して、ひとつのシステム提案を示している。すなわちそれは、1アプリケーションに1データベースという形態から脱却し、データベースを個々のアプリケーションから完全に分離し、統合ストレージ群に配置するスタイル。

 こうすることによって、必要に応じてデータベースボリュームを容易に増減でき、データベースアクセスのピークタイムをその中で融通しあえ、アプリケーション全体の可用性を高めることが可能だという。Oracle Database 10gは、自動ストレージ管理という新機能によって、この統合ストレージ群の一元管理を実現する。

 2001年のIDCの調査によると、データベース管理者の仕事の55%以上は、データベースの維持管理に費やされているらしい。Oracle Database 10gというニューバージョンはまた、そうした分析から、データベース管理者の作業負荷の軽減に、つまりデータベース管理の自動化に焦点を置いた製品でもある。ここで大きな役割を果たすのは、Oracle Enterprise Manager 10g(OEM 10g)だ。

 この製品の開発部隊とデータベース本体の開発部隊が密接に連携し、管理の大部分がOEM 10gに移管された。完全なWebベースアプリケーションとなり、Webブラウザを搭載可能など、どんな端末からでも操作できるようになる。データベースに付随する無償の管理ツールというスタンスには変わりがないが、その存在は以前とは比べものにならないほど重要なものとなるようだ。

 たとえば共有プール、Javaプールなどといったメモリのサイズ設定は、初期化パラメータではなくOEM 10gで行う。それも個別に設定する必要はなく、全体のサイズを設定すれば、Oracleが内部で収集する統計情報に基づいて自動的に最適配分してくれる。この統計情報が“アドバイザー”となって、セグメントリソースの成長予測をしてくれたり、Redoログファイルのサイズを推奨してくれたりもする。

 OEM 10gは、Oracle Database 10gととともに発表されたOracle Application Server 10gのコントロールも同時に担う。

 ここで“グリッド・コントロール”と呼ばれる新実装の一機能として、アプリケーション・パフォーマンス・モニタリング機能がある。これは特定のWebサイトのパフォーマンスをトレースする機能で、クリックした時間、ページが表示されるまでの時間などといったエンドユーザー体験を詳細に見ることができる。

 また、企業情報システムの運用管理ポリシーに合わせたポリシーベースマネジメントも可能になり、OLTPに60%、データウェアハウスに40%といった具合に適切な資源配分を行うことができるようになる。

 テクニカルセッションでは、データベース管理の大半がOEMに移管されることについて、受講者からは賛否両論を呼んでいた。それに対してプレゼンテーションスタッフは、これによってデータベース管理者のルーティンワークが軽減され、システム運用の戦略策定などクリエイティブな仕事により多くの時間が割けるようになると強調していた。

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▼OracleWorld 2003 San Francisco Report

[吉田育代,ITmedia]