エンタープライズ:ニュース 2003/09/14 00:21:00 更新


「5つのデータベース」が魅力の米Oracle本社を訪れる

米Oracle本社を訪れた。ラリー・エリソン氏が若き日に見た夢そのものである同社の建物は、主な5つの塔がすべて、システム仕様書で示すところの筒型データベースの形をしている

 OracleWorld 2003のすべてのプログラムが終了したところで、米Oracle本社を訪れた。ラリー・エリソン氏が若き日に見た夢そのものである同社の建物は、主な5つの塔がすべて、システム仕様書で示すところの筒型データベースの形をしている。

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米Oracle本社。企業の建物とは思えないほど美しい。「建物がデータベースなら、渡り廊下で結合してリレーショナルにしてほしい」と思う人もいるだろうか?

 サンフランシスコの快晴は雲が1つもなく、「快晴」を気分で丸ごと味わえる。ダウンタウンから車で40分ほど、サンフランシスコ空港を過ぎると、シーベルシステムズやIBM、日立製作所など、さまざまなIT企業の建物を横目に見ながら、間もなく到着する。

 Oracleは、サンノゼへと伸びるシリコンバレーの入り口に位置する。ITバブル期には、Oracle本社があるという理由で、周辺の地価が跳ね上がったという。

 社内は、データベース、e-Business Suiteなど、各製品群ごとにビルが分かれている。データベース型のビルを映し出す手前の池は、水底で海とつながっているため、海水とのこと。

 同社の社員は建物を「キャンパス」と呼んでおり、ビジネスをあまり感じさせない。どちらかと言えば研究所のような雰囲気の中で、エンジニアを中心に、世界4万人の社員のうち1万人が働いている。社員自身が「技術の会社なんだ」と再認識するときでもあるという。

 また、プールやアスレチック施設なども完備している。東京での仕事と比べた記者からは、「これでは働かなくなりそうだ」といった声も聞こえたが、その感じ方の違いが文化の違いなのかもしれない。

 社内には、日本文化びいきのエリソン氏の趣味か、和風の絵画や装飾品もあちらこちらで見かける。聞くところによると、エリソン氏の社長室には、日本の時代劇にみるような、ふすまを何枚も開けて歩かなくてはたどり着けないような場所があるという。ただ、社長室の見学は許可されていないため、実際のところは定かではない。

 ところで、広く知られる通り、Oracleの社員にとって、ラリー・エリソンという「カリスマ」は絶対的な存在だという。社員が会社の将来を聞かれて、ポジティブな回答をする場合の理由の多くが「エリソンがいるから」というものらしい。確かに、基調講演で話を聞いているだけでも、エリソン氏には人を引き込む強い力があることが分かる。

 もちろん、4万人もの社員全員が本当に社長をカリスマ視しているとすれば、ある意味の危なさを感じるのも普通の感覚かもしれないが、おそらくそういったバランスを失ったものではないのだろう。ともあれ、これだけ社長の求心力がバックボーンにある企業が本気で何かに取り組んだとき、競合他社にとっては手強い相手になる。

 話は変わって、同社内は、電子メールによる社員間のコミュニケーションが役職を超えて盛んに行われるカルチャーがあるという。

 例えば、直属の上司の働きぶりに不満を感じた社員が、直接エリソン氏にそれを「報告」して、その上司が退職するといったこともあるという。日本ではあまり聞かない話だが、米国的な考え方をすれば、「その方が結果的には多くの人が幸せになれる」といったところだろうか。

 IT企業として米国に留まらず、世界へと巣立ち、揺ぎないポジションを築いた企業の厳しさが、こんなところに見られるのかもしれない。

[怒賀新也,ITmedia]