エンタープライズ:ケーススタディ 2003/09/18 05:25:00 更新


PeopleSoft導入でグローバル化を強化する住友電装

「PeopleSoft Connect 2003」で日本企業としては唯一、ユーザーセッションの1つを住友電装が担当し、PeopleSoftをベースとした人事改革を展開していることについて説明した。

 「PeopleSoft Connect 2003」の2日目、日本企業としては唯一、ユーザーセッションの1つを住友電装が担当し、PeopleSoftをベースとした人事改革を展開していることについて説明した。

 同社は、自動車内に電気を流すために搭載されるワイヤーの製造を手掛けることで知られる。1台の乗用車に搭載される電線の数は1000本以上におよぶという。多くの日本メーカーと同様に同社も、国際競争力の強化を目指し、研究開発などの主要機能を日本に残し、海外に生産拠点をシフトさせている。

急激なグローバル化

 2001年9月の同時多発テロやSARSの影響で、社員の海外への出張を自粛し、テレビ電話会議などに切り替えたこともあった。だが、それでも社員の海外出張の回数は増え続けており、急激なグローバル化を肌で感じているという。

 講演を行った同社人事部担当課長の川瀬雅生氏は、戦後の日本企業の一般的な制度である年功序列と終身雇用について海外の聴講者向けに説明する。「真面目に働いていればあまり差がつかず、退職金が高額なのでそれをもらえるまで一生同じ会社で働くというのが一般的。社内で職種を選択する権利も従来はあまりなかった」と、日本人としては多少耳の痛いような話も、一般論として伝えた。

 一方で、この制度により、じっくりと人を育てたことが日本の高度成長を支えた要因になったことも加えながら、「ここ10年くらいは日本企業の多くが国際標準に合わせた制度に移行しようと努力している」と話す。

 住友電装も基本的には日本企業的な制度をベースにビジネスを展開してきたが、今後は、組織のフラット化や責任の所在の明確化を図り、海外の工場で働く従業員も混乱しない組織に変わっていこうとしているという。

人事管理にPeopleSoftを導入へ

 そこで同社は、人事・給与の分野にPeopleSoftのHRM(Human Resorce Management)の導入を決めた。「海外駐在員は、技術を伝えてすばらしい工場を作るのが最も重要な仕事」というように、国際展開する企業では、グループ企業間での人の移動も多い。そこで、グループ会社を含めて、人事・給与体系の一元化を図る。

 PeopleSoftの導入を検討したのは2000年の夏。管理対象社員は1万人に上る。導入対象企業は、住友電装の4支社と、関係8社に上った。HRMとしては、従業員の業務効率の管理や、人材開発、昇進、スキル管理、キャリア管理などを行う。一方、給与管理システムでは、給与やボーナス、退職金の計算、および諸税の控除などが行われる。

 川瀬氏は「PeopleSoftの導入でデータベースを統合できたことは大きなメリット」と話す。

 グループ会社内での製品の受注も多いため、それが1つのシステムで動くことによる利便性は高いという。さらに、Webベースで動くことにより、リアルタイム性が高く、人事戦略の意思決定をする上でも有効という。

 同社では、グループ内の関係業務を1つの会社にアウトソースしてまとめて管理する「シェアド・サービス」を検討しているという。これについて川瀬氏は、「PeopleSoftでデータが統合されているからこそできること」と話している。

 また、「PeopleSoftは日本仕様の帳票に対応していないので、アドオンをしたのではないか」という聴講者の質問に、川瀬氏は、「必要なもの以外は帳票を出さないのが方針」と応じた。紙による給与明細の配布も、パソコン環境が整っていない、工場以外では廃止した。

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講演した住友電装の川瀬氏

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関連リンク
▼住友電装

[怒賀新也,ITmedia]