エンタープライズ:インタビュー 2003/10/09 05:07:00 更新


Interview:データの取り扱いは「経営上の問題」とVeritasのブレグマン副社長

VERITAS VISION 2003 JAPANの開催に合わせて来日した米Veritas製品担当副社長、マーク・ブレグマン氏によると、同社はバックアップやクラスタリングといった既存の製品を強化するだけでなく、新たな分野をにらんだ製品も投入していくという。

 VERITAS VISION 2003 JAPANに合わせ、米Veritas Softwareの製品担当副社長、マーク・ブレグマン氏が来日した。同氏は基調講演の中で、ユーティリティコンピューティングという戦略を現実のものにするための製品ラインアップについて説明し、一部のロードマップを明らかにしている。そのブレグマン氏に、ユーティリティコンピューティングの意図するところを改めて聞いた。

ブレグマン氏

これから2004年にかけて相次いでバージョンアップと新製品をリリースしていくと言うブレグマン氏

―― ストレージに関し、顧客企業が抱えている最も大きな課題とは何だと考えていますか?

ブレグマン より多くのストレージを、少ないリソース、低いコストで管理しなければならないということも課題の1つです。しかし同時に、既に投資済みのハードウェアをいかに効率的に活用するかも課題となっています。中には、実際には全ストレージのうち40%しか利用していないにも関わらず、さらにストレージの需要が生じると、新たにハードウェアを購入するというケースもあります。既存の容量を上手に活用するためのツールが存在していないのです。

―― ベリタスは、この問題に対しどのような解決策を提供するのでしょう。

ブレグマン 非常にたくさんありますが、まず、ストレージ基盤を仮想化し、より効率的な管理を可能にする「VERITAS Volume Manager」が挙げられます。また、さまざまなデータをポリシーに沿って、自動的に適切な場所に蓄積、保護するためのストレージリソース管理製品群もあります。さらに、「少ない投資でより大きな効果を」というプレッシャーに対応するため、パフォーマンス上の問題を検出し、問題を識別して改善するためのパフォーマンス管理ソフトも展開しています。これにより、不必要なハードウェアを買い足す必要はなくなります。

―― それを推し進めて行き着く先が、ユーティリティコンピューティングというコンセプトなのでしょうか?

ブレグマン そうですね。基調講演のプレゼンテーションでも示したとおり、ベリタスは一連の製品を通じて、より少ない投資で多くの成果を上げ、ROIを改善するための支援を提供していきますが、そのゴールがユーティリティコンピューティングということになります。

―― 同様のコンセプトを打ち出している企業は他にもあります。

ブレグマン ベリタスのアプローチには、いくつかユニークな点があります。われわれはこれを、多くのビルティングブロックを積み上げることによって実現するものと考えています。できるところから始め、それぞれROI効果を持ったプロジェクトを1つひとつ積み上げることで、ユーティリティコンピューティングというモデルが充実していくという構図です。一方競合他社、特にプラットフォームベンダーの戦略を見ると、実際に効果を得られるまでに、多額の投資を何年間も続ける必要があります。

―― 顧客にとっては、コンセプトの細かな違いよりも、それを本当に現実のものにできるかどうかこそが重要ではないでしょうか。

ブレグマン いくつかのベンダーのコンセプトを見ると、非常に壮大かつ高機能な構想を描いているようですが、そうしたベンダー自身が、構想を実現できるのは早くて2005年以降になると認めています。自己修復などを含む高度なコンセプトですが、今すぐには利用できないのです。これに対しわれわれは、現実的なアプローチを取っています。ユーティリティコンピューティングの実現に必要なコンポーネントは、既に提供されているか、遅くとも2004年第1四半期までに提供される予定です。

 また、すべてのコンポーネントを自社1社で提供することを前提とし、他社のもので代替できない、つまりモジュール化されていない構想もあります。しかしベリタスではオープンかつモジュラー型のアプローチを取り、顧客が最適なものを選択できるようにします。垂直的なアプローチによって顧客を囲い込むのではなく、水平的なアプローチを採用し、しかもそれによって、背後の複雑さを顧客が意識せずに済むようにします。

―― 今後の製品ロードマップを教えてください。

ブレグマン まずデータ保護の分野で、来月に「VERITAS NetBackup」のメジャーバージョンアップを発表する予定です。クライアントのデータ保護やディスクベースのデータ保護を実現するオプションが追加されるほか、データのライフサイクル管理も実現します。次に、2003年末から2004年にかけての時期に、「VERITAS Foundation Suite」を強化し、ポータブルデータコンテナやパフォーマンス最適化といった機能を追加する予定です。またクラスタリングについても次世代製品を計画しており、管理やインストールをより簡単に、適切に行えるようにします。

―― 他にはどんなものがありますか?

ブレグマン 既存の製品を強化する一方で、新製品も投入していきます。まずアプリケーションパフォーマンス管理の分野では、「VERITAS i3」の次世代製品をリリースし、クラスタリングをはじめとする既存の製品との統合を進めていきます。また、サーバプロビジョニング製品の「VERITAS OpForce」ももうすぐリリースする予定です。さらに、近々「VERITAS CommandCentral Service」を発表します。この製品では、さまざまなレポートを集約し、ITというよりもビジネス上の視点から情報を把握し、管理できるようにします。データ保護やクラスタリング、バックアップ/リカバリといった既存のコアの製品群を強化する一方で、こうした新しい分野の製品をリリースし、製品ポートフォリオをいっそう強化していきます。

―― 企業の中には、データの保護や保存を経営上の問題ではなく、あくまでIT部門の問題だととらえる向きもあるようですが。

ブレグマン 最近では企業も、データをなくしてしまったときの影響を実感し始めています。例えばある調査では、災害などでデータを失い、復旧することができなかった企業の40%が5年以内に倒産したという結果が出たそうです。こうした例を踏まえても、顧客情報や請求事務、あるいは生産記録など種類はさまざまですが、データが非常に重要な価値を持っているのだということが認識されつつあると思います。

 もう1つの要素として、政府による法的規制が挙げられます。こうした法規制によって提出すべきと定められているものを提出できない場合には、罰金を科されるだけでなく、ときには経営者自身が責任を取って収監されることもあるのです。これは企業にとって大きな課題になっています。

 実はベリタス自身も、似たような経験をしています。AOLがSECの監査を受けることになった関係上、取引のあったベリタスも、関連したメールをすべて提出せよと命じられたのです。しかし残念ながら、電子メールについてはアーカイブ化やインデックス化は行っておらず、データをすべてリストアし、その中から必要なものを抜き出す作業を行うことになりました。CEOのゲーリーも、またCFOも、これがいかに高くつくことかを再認識しました。データの保護、運用はITだけの問題ではありません。経営者にも影響を及ぼすビジネス上の問題なのです。

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[聞き手:高橋睦美,ITmedia]