エンタープライズ:ニュース 2003/10/09 19:08:00 更新


キャリアグレードLinuxの新版リリース

CGL 2.0仕様が登場。CGLは通信事業者向けだが、アナリストによると、この市場に向けたLinuxの開発は、すべてのLinuxユーザーに恩恵をもたらす。

 Open Source Development Labs(OSDL)が通信事業者が使うサーバ向けのLinux仕様に、新たに信頼性、セキュリティ、そのほかの機能を追加した。

 Linux用ハイエンド機能の開発を進めているOSDLは、キャリアグレードLinux仕様(CGL)の第2版を10月9日にリリースする計画だ。Linux各社はCGLで示された技術要件と推奨事項に従うことで、自社のLinuxを通信機器メーカーにとって有用なものにすることができる。

 通信事業者は、長年UNIXサーバを好んで採用してきた熱心なテクノロジーバイヤーであり、今後大規模にLinuxを採用する可能性のある潜在大口顧客の一つと見なされている。通信機器メーカーのAlcatel、Cisco Systems、Ericsson、NEC、Nokiaはいずれも、新しいCGL仕様に貢献している。

 CGLは、通話コネクションやボイスメール再生、課金のための通話時間記録といった作業をこなす通信事業者用サーバ向けだが、Illuminataのアナリスト、ゴードン・ハフ氏は、この市場に向けたLinux開発は、すべてのユーザーに恩恵をもたらしていると指摘する。

 「この取り組みは実際、やがてLinux全体に恩恵をもたらす。CGLの最も重要な点は、これが最終的にLinuxの改善につながることだ」(ハフ氏)

 OSDLのディレクター、ティム・ウィサム氏がインタビューで語ったところによると、CGL仕様は、顧客が通信システムに搭載してほしいと考える重要機能のリストではない。むしろ、今日のオープンソース技術で利用可能な、望ましい機能のリストだという。

 5年後でないと得られない機能ではなく、「インプリメントできるものでなければならない」と同氏。Linuxのカーネルと高レベルのソフトウェアへの新機能追加により、CGL要件リストの第3版では、さらに機能が拡張されるという。

 今回のCGL新版では、幾つか新機能の追加と機能拡張が図られている。

 例えばセキュリティ面では、システムユーザーが破られやすいパスワードを選択することがないよう保証するパスワードチェックソフトの装備、コンピューティング処理が確実に適切なリソース内で実行されること、ログファイルの改ざんを避ける機能、ファイルの暗号化などが必要とされている。

 また、サーバがクラッシュしてもサービスの利用が継続されることを保証するクラスタ技術要件が含まれる。これをうまくこなすためには、障害の迅速な検知、問題あるサーバの切り離し、ほかのサーバへのプロセスの移行などができなければならない。

 Red HatとSUSE LINUXという最大手Linuxディストリビューター2社は、自社の製品に新たなCGL機能を追加する予定。

 「新CGLガイドラインに(来年リリース予定のSUSE LINUX Enterprise Server)9で完全対応する」とSUSE広報担当のジョー・エッカート氏。またRed Hat広報担当のレイ・デイ氏によれば、今月登場予定のRed Hat Enterprise Linux 3は、CGL 2.0仕様の3分の2以上と、「Java、クラスタリング、開発環境ツールなど、OSDLが規定していない付加的な12のCGL機能」をサポートするという。

 伝統的なPCやサーバではなく組み込みコンピューティングデバイス向けのLinuxを専門とするMontaVista Softwareには、独自のキャリアグレード版のLinuxがあり、これはNECなどの顧客に採用されている。

 Linux作者のリーナス・トーバルズ氏の雇用主でもあるOSDLは、Intel、Hewlett-Packard、Computer Associates International、Sun Microsystems、Red Hatほか多数の企業から出資を受け、新しいソフトやハードのテスト、新たなソフトの作成、業界の取り組みの調整などを通じてLinuxの改良に当たってる。CGL関連の作業のほかに、OSDLにはデータセンターLinuxの作業部会もある。

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