エンタープライズ:特集 2003/10/10 18:00:00 更新


特集:第1回 Webアプリケーション開発における諸問題とその解決策 (1/3)

昨今のWebアプリケーションの開発に求められるもの、それは機敏(ALM)にユーザーからの要望を反映できることだ。ボーランドのALMソリューションは、開発統合環境がこの問題を支援してくれる。

 ボーランドの製品には、ALM(Application Lifecycle Management)と呼ぶキーワードが掲げられている。これはWebアプリケーション開発において機敏(アジャイル)に対応し、Webアプリケーションの開発サイクルをコントロールしようという思想だ。同社の製品は、このALMに基づき構成されている。そして、ほかのJava開発アプリケーションをリリースするベンダーと最も大きく異なるのは、ボーランドがJavaだけでなく.NETに対しても開発環境を提供するというクロスプラットフォームを掲げている点だ。この点からも、従来のWindows環境と混在するJava環境構築を目指すならば、同社の製品を検討してみる価値があるだろう。


 ボーランドのプロダクトページを見ても分かるように、開発時に必要なあらゆるシーンは、各製品で補完する構成である。この特集「ボーランドのJava開発ソリューションで始めるALM開発のすすめ」(全3回)では、同社の「Together」、「JBuilder」、「Optimizeit」をそれぞれ設計、開発、テストの各フェーズとし、そして「Borland Enterprise Server」を運用プラットフォームとして取り上げていく。第2回では、各製品のインストールと概要、第3回目では具体的な開発手順を解説しよう。

 最近ではWebアプリケーション開発にJava言語を用いることがかなり一般化してきた。書籍やWeb上などでは多くの技術資料やチュートリアルが見られ、かなり開発情報に事欠かなくなっている。しかし、一方では開発プロジェクトでの苦労話やトラブル、失敗談なども聞かれるのが実情だ。事例が公然と語られるようになれば、その技術も市民権を得たといえるだろう。しかし、実際の開発現場ではそんな評論家のようなことを言ってられない。

 Javaの活用方法は、比較的小規模なJSP利用から大規模なJ2EEを利用するものまでさまざまである。この特集では、特定の規模のアプリケーションに限定することなく検討できるよう構成していく。第1回目では、まず最初にWebアプリケーション開発における各フェーズでの諸問題を取り上げ、その解決策を探っていく。その際、ボーランドのJava開発ソリューション製品でいずれの製品が当てはまるのかも解説する。

複雑化するWebアプリケーション環境を開発環境がサポートする

 Javaを利用する良さのひとつに、容易に開発が始められる点がある。サン・マイクロシステムズのサイトからJDKをダウンロードしてテキストエディタさえ用意すれば、すぐにでも「Hello World」プログラムを作って実行させることができる。それを動かすためのWebアプリケーションサーバ環境の構築でも同様だ。オープンソースであるアプリケーションサーバ「Tomcat」を利用すれば、開発したサーブレットやJSPをすぐにでも実行できる。

 しかし、可能であることと実用的であることには開きがあることを忘れてはならない。ソースコードを1から10まで記述するエンジニアばかりであればよいが、それでもエディタ+JDKという最軽量コンビによる開発では、複雑なWebアプリケーション開発で行き詰まってしまうだろう。そしてWebアプリケーションでは、サーバサイドがブラックボックスであることが開発を難しくして要因の1つだ。実行結果は、クライアントのWebブラウザ上の表示でしか判別できない。その結果、ログ出力などをトレースする原始的なデバッグ方法を採用せざるを得なくなり、「何だ! 最新のJavaテクノロジーを採用したのに、またログの読破なのか」などとストレスになるだろう。趣味や学習であればよいかもしれない。しかし実際のビジネスで利用していくためには、これでは日々変化するWeb上において敏速な開発が実現できなくなってしまう。

 筆者は、Webアプリケーション開発者にとって、Java開発ツールで最も重宝する機能は、多様なウィザードや便利なコード入力支援機能などではなく、アプリケーションサーバとの統合によるサーブレットやJSPのソースコードレベルのデバッグだと考えている。もちろん、プログラムを全部トレースしてみないと問題が分からないようでは話にならない。しかし、問題はいつも予期しない発見困難な場所にあるものだ。そのような問題を的確に見つけるには、サーブレットやJSPのデバッグ機能がとても役立つ。

 実際の現場を考えれば、市販のアプリケーションサーバーやTomcatなどを個別に設定し、開発環境と連携させてテストするのは困難な作業だ。JavaによるWebアプリケーション開発を行うなら、この統合作業をメニューひとつで実行できるJBuilderを検討してみる価値がある。

 「JBuilder」にはPersonal、Developer、Enterpriseと3つのエディションがあるが、無償版のPersonalを除き、このWebアプリケーション開発機能が搭載されている。商用にてJ2EE対応のアプリケーションサーバを使用したい場合には、Enterpriseが必要だが、サーブレット、JSPの開発であればDeveloperでも十分だ。

 JBuilderを用いれば図1のように開発環境内でアプリケーションサーバを起動し、ソースコードレベルでデバッグすることができる。またアプリケーションサーバがリモートマシンで実行されていても問題ない。

fig1.gif

画像1■JBuilder 9によるWebアプリケーションのデバッグ模様。クラスが一覧表示されるのはもちろん、デバッグの際にソースコードが見やすく色分けされるなども支援機能の1つだ


アプリケーションサーバの選択は、「プロジェクトのプロパティ」を変更するだけだ。購入した開発環境で、直ちに主要なアプリケーションサーバー製品を使用した開発に着手できる点は、開発環境を選択する大きな理由として挙げてよいだろう。

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[藤井 等,ITmedia]