エンタープライズ:ケーススタディ 2003/10/11 01:57:00 更新


F1最終戦の鈴鹿、マクラーレンのマシンを支えるCAのソフトウェア

F1のシーズン最後の大会となる鈴鹿グランプリが開催されている。強豪マクラーレンが利用するCAベースの情報システムは、1000分の1秒を争うレースになくてはならないソフトウェア製品だ。

 10月10日から3日間に渡り、F1のシーズン最後の大会となる鈴鹿グランプリが開催されている。名門として知られるマクラーレンは、フィンランドの新鋭23歳のキミ・ライコネンが、年間のドライバーズポイントで首位のミハエル・シューマッハーを逆転する可能性を残しており、ファンの注目を集めている。

mc.jpg
走行中のF1マシンから送られてくるデータを解析するマクラーレンチームのメンバー f1.jpg
ピットで整備を受けるマクラーレンのマシン。例年、最終戦の鈴鹿では既に優勝が決まっていることが多いが、今年は鈴鹿までも争いがもつれたため、首位を取りたいマクラーレンチームのメンバーは多少神経質になっている。

 ところで、F1のマシンが極めて高度にIT化されていることはよく知られている。時速200キロメートルに達するまでにスタートから4秒しかかからず、最高で400キロ以上のスピードを出すマシンは、安全を確保しながら1000分の1秒を争うレースを走行しなくてはならず、チームの勝利と安全面の両方の観点から情報システムが完備されている。

 マクラーレンのマシンには、走行中のマシンのエンジンやタイヤの状態、ドライバーの健康状況などをリアルタイムで伝えるための120以上のセンサーが搭載され、無線通信で随時ピットに情報が送信されている。マシンがサーキットを1周する間にドライバー側からピットに送信されるデータは4Mバイトに上る。温度情報や、ブレーキパッドといったコンポーネントの磨耗率など、ドライバーの報告だけでは分からない詳細なデータが送られているという。

 同チームの遠隔分析装置システムは、米Comupter Associates(CA)とマクラーレンが共同開発したもの。CAのシステム統合管理ツール「Unicenter」がベースになっており、「Unicenter Network & System Management」は、数秒ごとにチームのデータサーバをモニタリングし、結果がセントラルサーバに送信される。

 マクラーレンチームのITアナリスト、マーク・ジェンキンス氏は、「今はシステムを監視するツールがあるので昔のように走り回ってサーバをチェックする必要がなくなった」と話す。

mk.jpg
「ITに関わる仕事という意味ではほかの人と同じだが、F1のITアナリストは世界に(全チームで)10人しかいない」と誇るマーク・ジェンキンス氏。ピット後ろに見えるマシンは、逆転首位を狙うキミ・ライコネンが乗るマシンだ。

レース中の重要情報をミラーリング

 CA製品としては、ストレージ管理の「BrightStor High-Availability」も利用されている。マクラーレンに限らず、F1に参加するチームは走行する際に、常に提供されているコースデータ情報などを提供するテレメトリーに依存しているという。BrightStor High-Availabilityはこういった重要な情報へのアクセスを保護するためのソフトウェア。提供されたデータをリアルタイムに取得してディスクに書き込む一方で、バックアップのコンピュータに複写する。これにより、万が一メインシステムに障害が発生した場合は、バックアップ側が自動起動し、運用を引き継ぐ。

 実際に同チームでは過去に、レース中にメインシステムがつながるネットワークプラグを誤って抜いてしまうというミスが発生したことがあった。そのとき、バックアップ側のサーバが起動し、事なきを得たという。

 さらに、マシンからの送信情報が他チームに読み取られないように、セキュリティへの意識も高い。マクラーレンでは、CAの「eTrust Antivirus」を利用して、チームのコンピュータをウイルスやセキュリティの脅威から守っている。

 1000分の1秒を争う戦いの中でITが存分に利用されているF1は、ソフトウェアやハードウェアの性能に冗長さを許さない厳しい世界だ。

rq.jpg
ピットエリアに登場したレースクイーン

関連リンク
▼コンピュータ・アソシエイツ

[怒賀新也,ITmedia]