エンタープライズ:ニュース 2003/10/14 16:57:00 更新


固定回線やDSLの代替となるか? メトロ無線技術「IEEE802.16」

TELECOM 2003のフォーラムの中では、ブロードバンドを促進する技術の1つとしてIEEE802.16が取り上げられた。

 10月12日よりスイス・ジュネーブで開催されているTELECOM 2003では、各国のベンダーによる展示会だけでなく、並行して「ポリシー」や「ビジネス」、「技術」をテーマとしたさまざまなセッションが行われている。10月13日には、「ブロードバンドに向けたテクノロジ」と題したパネルセッションが開催され、10ギガビットイーサネットや無線LANアクセスの実績と可能性について発表が行われた。

 「イーサネットが標準化を経て1990年代に浸透し、またWi-Fiも、技術としては以前から存在していたものの、標準化後の2000年以降急速に普及を見せている。この法則を当てはめるならば、WiMAX(World Interoperability for Microwave Access)にも同じ推進力が働き、2010年ごろには普及するのではないかと見ている」――こう語るのは、IEEE802.16の開発促進を目的とした業界団体、WiMAXの会長を務めるマーガレット・ラブレスク氏だ。

 IEEE802.16は、より高速かつ広範囲な無線接続の実現を目指し、IEEEで検討が進められている仕様である。といっても、802.11a/b/gといった無線LANの代替技術ではない。802.16が目指すのは既存の固定回線の置き換えで、この範囲でキャリアクラスの接続を提供するという。

 また、キャリアクラスといっても、携帯電話網のような広範囲かつ高いモビリティを備えた通信(当然相応のインフラ投資が必要になる)を想定しているわけではない。メトロエリアに展開されているT1専用線やDSL回線を、比較的低いコストで無線に置き換えることを目的にしている。

 ラブレスク氏の説明によると、モビリティと、高速化・安定性や通信範囲といった要素のトレードオフのうち、モビリティを優先したのが802.11ならば、後者の各要素を取ったのが802.16ということになる。そして802.16は、中小規模オフィスや企業拠点からのインターネット接続に利用できるだけでなく、コンシューマー向けのラストマイルのカバーにも利用できるとした。つまり、「自宅の室内では802.11を利用し、自宅からインターネットへのブロードバンドアクセスには802.16を利用するといった具合で、これらの仕様は補完しあうもの」(ラブレスク氏)という。

 数年前に策定が完了した802.16仕様は、10GHz〜66GHzの周波数帯を用い、32Mbps〜172Mbpsの高速通信を可能にするというものだ。通信可能距離は2kmである。これに対し現在注目が高まり、WiMAXが推進しているのが、2GHz〜11GHz帯を用い、50kmまでの範囲で、最大70Mbpsの通信を可能にする802.16aだ。さらに802.16e仕様の策定も進んでいるという。ラブレスク氏は、このように免許が必要な周波数帯だけでなく、免許不要の周波数帯も想定して仕様を策定していることが802.16の特徴の1つだとした。

 もっとも、中距離の固定回線を無線化しようとする試みはこれが初めてではない。国内でもいくつか、FWA(固定無線アクセス)と呼ばれるサービスが登場している。だがラブレスク氏は、こうしたサービスはほとんど普及していないと指摘。その理由として、「独自の仕様に基づき、垂直市場や特定のアプリケーションに特化しており、結果としてコストがかさむ」ことを挙げる。

 これに対し802.16は、標準化によって回路をはじめとする部品が共通化され、量産効果によるコスト下落をもたらすと期待。さらに、Intel、Nokiaといった企業が参加するWiMAXによる標準仕様への準拠テスト(コンフォーマンステスト)や機器間の相互接続性確認といった作業が、普及を後押しすると述べた。WiMAXではそれに向けた作業を進めており、2004年後半には、同団体の認定を受けた機器が市場に出荷されるだろうと予測している。

関連記事
▼ITU Telecom World 2003レポート
▼大手メーカーが70Mbpsの無線ブロードバンド推進で結集

関連リンク
▼WiMAX Forum
▼ITU Telecom World 2003

[高橋睦美,ITmedia]