エンタープライズ:ニュース 2003/10/15 17:03:00 更新


ユビキタスコンピューティングに不可欠なのは「セキュリティ」と「プライバシー」

Telecom World 2003のフォーラムに、ユビキタスコンピューティングで知られる東京大学教授の坂村健氏が登場。その普及には社会的コンセンサスが不可欠という。

 Telecom World 2003のフォーラムプログラムの1つに、YRPユビキタスネットワーキング研究所長を務める東京大学教授の坂村健氏が登場した。テーマはそのものずばり、「ユビキタスコミュニケーション」だ。

 同氏はこの講演の中で、TRONやT-Engineといったこれまでの取り組みに触れながら、「どこでもコンピューティング」として提唱してきたユビキタスコンピューティングについて説明。その最も大きな特徴を「Context Awareness(状況を認識していること)」だと強調した。インターネット上の情報との最大の違いもまさにこれで、今、そこに何があってどういった状態にあるのかを認識できる点こそ、ユビキタスコンピューティングの本質だという。

 機械どうしのコミュニケーションやRFID(IDタグ)などへの適用でさまざまな期待が寄せられているユビキタスコンピューティング。しかし坂村氏は、それを実現するために最も重要な課題として、セキュリティの確保とプライバシー保護があるという。「情報の不正な使用を防止することはもちろん、違法な逆追跡からユーザーを保護しなければならない」(坂村氏)。

 そのために、e-TRONなどのプロジェクトを通じて、PKIに基づく認証と暗号化通信機能をさまざまなデバイスに埋め込み、安全な分散ネットワークの実現を支援していく。また悪意あるトレースを防止するため、例えばRFIDであれば、問い合わせには常にユニークなIDを返すようにし、ユーザーの動きが追跡されることのないよう保護する必要があるという。

 その上で坂村氏は、「セキュリティやプライバシーを確保していくには、技術だけでは不十分。運用ルールの整備も必要だ」とし、ユーザー個々の状況や用途に応じてポリシーを定めることが重要だとした。現にユビキタスIDセンターが展開しているプロジェクトでも、用途ごとに異なるセキュリティポリシーを実装できるよう、性能やセキュリティ機能の異なる複数のIDタグを用意している。

 坂村氏はまた、テクノロジーはグローバルなものを利用するとしても、ユーザー個々人がセキュリティポリシーを定め、ローカルに運用、管理していくべきだと述べた。

 「ユビキタスコンピューティングが一般消費者に受け入れられるようになるには、社会的コンセンサスが欠かせない。ゆっくり、注意深く歩みを進めていくべきだ」(坂村氏)。その暁には、ユビキタスコンピューティングは現在の、そして未来の人類に大きく講演できるだろうとした。

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関連リンク
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[高橋睦美,ITmedia]