エンタープライズ:ニュース | 2003/10/28 19:49:00 更新 |
SCO、「IBMにGPL行使の権利なし」と主張
SCOは、GPLベースの訴訟を起こせる法的資格を持った組織はFSFのみであり、IBMにその権利はないと主張。またGPLは合衆国憲法違反だとしている。だがFSFの弁護士や知財弁護士は、SCOの論理に反論している。(IDG)
SCO GroupとIBMの係争が10月24日、新たな動きを見せた。SCOはこの日、IBMにはLinuxをつかさどっているGPL(GNU General Public License)ソフトウェアライセンスを行使する権利はないとの見方を示した。
SCOはユタ州の米連邦地裁に同日提出した書類に、「GPLはFree Software Foundationによって行使されるものであることから、IBMなど他者によるGPLの行使は退けられる」と記している。
SCO広報担当のブレーク・ストーウェル氏は電子メールでの取材に応え、「Free Software FoundationはGPLを行使できる唯一の独立組織体であり、IBMは事実上、SCOに対してGPLの法的権利を行使することを禁じられているのだ」と説明した。
SCO提出の書類にはまた、「GPLは合衆国憲法、および著作権法、独禁法、輸出規制法に抵触している」と記されている。
この書類は、IBMが8月にSCOを相手に起こした反訴に対し、SCO側が反論をまとめたものだ。IBMはSCOを、GPL違反と幾つかのIBMソフトウェア特許侵害で訴えた。
SCOが3月にIBMを提訴して以来、両社はIBMのLinuxへの貢献をめぐって法的論争を繰り広げている。SCO側は、IBMがLinuxサーバ事業強化を目的にオープンソースOSにコードを不正流用したと主張している。
Free Software Foundation(FSF)の弁護士は、FSFがGPLベースの訴訟を起こせる法的資格を持った唯一の組織だとするSCOの主張に反論している。IBMはGPLライセンスの下で配布されたLinuxカーネルソフトウェアの多くに関して著作権を有しているため、IBMにはGPLを行使するあらゆる権利があると、FSFの弁護士は説明した。
「著作権の適格行使者は著作権保有者だ」とFSFの弁護士エベン・モグレン氏。「IBMはSCOに対し、『あなた方は著作権法で禁じられたやり方で当社の著作物を使っており、当社の許可なくこれを行っている。あなた方は当社に損害を与えており、それをやめなければならない』と言っているのだ」
モグレン氏は、もしGPLが有効なライセンスでないとしたら、SCOにもLinuxを再配布する権利はないだろうと語っている。SCOは何年にもわたってLinuxの再配布に当たっている。「SCOがGPLによる許可は無効だと言うなら、SCOも有効な許可を得ていないことになる。私たちは毎日のように、許可なく著作物を再配布すれば窃盗だとRIAA(全米レコード協会)やMPAA(米映画協会)から聞かされている」と同氏。
この訴訟とは無関係な知的財産権弁護士も、モグレン氏と同じ見方を示している。法律事務所Testa, Hurwitz & Thibeaultの特許・知的財産部門パートナー、デビッド・バイアー氏は、「これは実際、FSFの条項を採用した第三者の問題だ。(IBMが)FSFの形式を採用したからといって、IBMが自社の権利を行使できないということにはならない」としている。
バイアー氏はGPLを、米建築協会が作成した規格保有者とその契約者との合意になぞらえる。建築業者が同協会の形式の一つを採用したというだけで、契約違反者を訴える権利を失うことはないとバイアー氏。同様に、IBMがFSFのライセンスを使っているというだけで、同社にSCOを提訴する権利がないとは言えないという。
SCOの法廷提出書類はまた、SCOがIBMのソフトウェア特許を侵害したというIBMの主張に反論している。SCOのストーウェル氏はこの点について、「SCOがIBMの特許を侵害したとするなら、ソフトウェア業界の他のベンダーすべても同じ特許を侵害していることになる。IBMは、ソフトウェア業界で一般的慣行となっていることにクレームを付けている」と説明している。
だがバイアー氏は、IBMのソフトウェア特許が実際、広範に利用されているとしても、それを理由に権利行使を否定できるものではないと指摘する。
「(ある特許が)あまりに多くの人に使われているからという主張は、効果的な抗弁とは言えない」(バイアー氏)
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[IDG Japan]
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