エンタープライズ:ニュース 2003/10/29 22:59:00 更新


「2008年のブロードバンド市場は2200万世帯に」野村総合研究所かく予想せり (2/2)

通信市場の展望――専用線は広域イーサネットとIP-VPNが成長

 通信市場の解説は同社の情報・通信コンサルティング部 上席コンサルタントの桑津 浩太郎氏が行った。

 まず、すでに7兆円近い規模を持つ移動体通信市場は、マーケットの成熟化に伴い、電気通信事業収入は頭打ちになるとしながらも、2002年度末の7566万契約から、2008年度末には9210万契約まで拡大し、8兆円市場となるという。

「今後新規加入が見込めるのは入学シーズンである春先に限定されていくだろう」(桑津氏)

 また、桑津氏の予想では、「8兆円産業までの道のりは苦闘」になるという。その理由として、各社のARPUは現在6000円程度にまで落ち込んでいるため、それが今後も下げ止まらないのであれば実際は横ばい産業と考えられるからである。

 またインターネット対応端末の割合は93%となり、ほぼ標準になるとしている。しかし、、利益をもたらしてくれる優良顧客に対して集中的にサービスを提供するで顧客の維持深耕を図ることと、新しい収益を産むビジネス創造が急がれているという。

 移動体通信市場のトレンドとしては、各事業者が明確なカラーを打ち出し始めているという。ワールドワイドの展開力を持つボーダフォン、先行した技術力を有するKDDI、ターゲットを漏れなくカバーするNTTドコモといった具合である。近年、携帯電話は高機能化の一途をたどっているが、この反動として、音声トラフィックを高める努力が再び見直されるだろうと同氏は予測している。

 また、専用線市場の動向については、従来からの専用線市場が成長の勢いを失いつつあるという。従来型専用線は2006年までにピーク時比較で約半分になるとしながらも、それに変わって台頭しつつある広域イーサネット市場を加味して考えればほぼ横ばいになると予測している。しかし、広域イーサネットサービス事業は、通信サービス単体の料金低下を加速させているため、ソリューションビジネスの1コンポーネントへと方針転換する事業者が増えると予測している。

 また、フレームリレー(FR)やセルリレー(CR)の代替として2000年度から急進しているIP-VPNは、多数の小規模拠点を有する業種向けに浸透しつつある。すでに市場的にはFR/CRの市場と逆転しており、残るFR/CR代替余地は1000億円を下回るという。

「来年メディアフォーラムを開催してもこの話題はもはや取り上げられないかもしれない」(桑津氏)

 IP-VPNは高成長継続は期待できるが、前述の広域イーサネットやインターネットVPNと需要を分け合う形となり、成長速度はやや減速するとしている。

 そのほか、VoIP市場に関しては、コンシューマー向けVoIPユーザーが2008年度末には1000万人まで拡大するとしている。

「この拡大は2つの節目があると考えている。1つは2004年前後。現状ではADSLの販促ツールであるVoIPだが、そのころには利用ユーザー自体がクリティカルマスへと近づくため、結果としてVoIPのアクティブユーザーが現出してくる。もう1つが2006年以降で、光のインフラを前提とした本格的なVoIP時代の到来である。『050』に関する諸問題が解決し、デフォルトでVoIPが活用され始める」(桑津氏)

 法人向けは、先に東京ガスがVoIPの全社的な導入を決めた、いわゆる「東ガスショック」を皮切りに導入機運が高まりつつあるという。しかし、いざ導入となると慎重になる企業が多く、ネットワークの設備更新に合わせる形で段階的にVoIP導入が進むと予想している。

放送市場の展望

 このほか、放送市場の解説を同社の情報・通信コンサルティング部 上級コンサルタントの中山 裕香子氏が行った。

 同氏によると、日本の放送世帯のうち潜在有料放送世帯の割合は約3割で、このパイをCSデジタル放送(124度、128度、110度)とケーブルテレビが取り合う形となるという。このうち、CS110度放送は、3波チューナの普及など、市場立ち上げのためのさまざまなてこ入れが必要としながらも、それがうまく運べば普及が進む可能性があるとしている。

 また、2003年12月の地上デジタル放送開始によって、地上デジタル放送市場が出現する。地上波放送はもともと放送市場で最も大きなセグメントだけに、普及につれてデジタル放送市場の中でも際立つ市場規模となるが、中山氏は次のように指摘した。

「地上デジタル放送は新しく現れるメディアではなく、現行地上波放送からの移行メディア。放送市場が拡大するわけではない」

 なお、ケーブルテレビ市場はこちらでも悲観的な見方をされており、すでに鈍化傾向にある同市場は、今後、有料放送市場でも競合サービスの後塵を拝する可能性が高いとされている。

関連リンク
▼野村総合研究所
▼本日の発表資料

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[西尾泰三,ITmedia]