エンタープライズ:ニュース 2003/11/01 00:44:00 更新


「データを差別化して扱うことでコストを削減できる」とStorageTekの臼井氏

米Storage Technologyのマーケットリサーチ担当ディレクター、臼井洋一氏に、同社がかねてから提唱してきたILMの真髄について聞いた。

 「情報ライフサイクル管理(ILM)とはつまり、データを差別化して扱うということ。データの価値に応じて扱いを変えることにより、全体のコストを減らすことができる」――米Storage Technology(StorageTek)のマーケットリサーチ担当ディレクター、臼井洋一氏はILMの真髄をこのように表現する。

 臼井氏によると、企業CIOが抱えている課題は大きく3つあるという。1つはIT投資をビジネスリスクの軽減に役立てること。これには、ビジネスアプリケーションのアベイラビリティ向上や拡張性、柔軟性の確保などが含まれる。2つめは、ITインフラにまつわる複雑さを減らしていくことだ。そして最後は予算上の問題。限りある予算の中で、こうした課題を解決していかなければならない。

 こうした課題を踏まえると、ただ単にストレージ容量を追加していくだけでは解決にはならない。かえって複雑さが増し、管理が困難になるだけだ。本当に問題の解決を図るならば、高性能なディスクから、ある程度のデータ保護がなされた比較的安価なディスクサブシステムやニアラインストレージ、そしてアーカイブに至るさまざまなストレージの中から、データの価値や性質に応じて適切なものを選び、利用することだ。それがILMの考え方だと言う。

臼井氏

新型テープライブラリの「SL8500」のアベイラビリティについて、「高速道路を走りながらパンクしたタイヤを直せるようなもの」という臼井氏。ニーズに応じてパフォーマンスや容量をきめ細かく拡張できる点も、他にはないという

 無論、考え方だけでは何にもならない。「われわれはローエンドのディスクからハイエンドまで、ディスクもテープも両方そろえ、トータルなハイアラーキーを備えており、その中から最もコストパフォーマンスに優れたものを提供できる」(臼井氏)。そしてこれにプロフェッショナルサービスを組み合わせることで、本当の意味でのILMを実現できると述べた。

 臼井氏はさらに、StorageTekでは3つのステップに分けて、ILMのビジョンを実現していくと語った。まずは、既存のあるいは今の資産を有効活用していくことだ。その次は、ストレージインフラにインテリジェンスを持たせ、データ保護などの付加価値を加えながら、最適なときに最適な場所に保管できるようにする。そしてこれからの課題が、エンドツーエンドでのILMだ。「これが究極の目標。ポリシーに基づいた管理を実現するだけでなく、アプリケーションにも踏み込んでいく」(同氏)。意訳するならば、ポリシーと文脈に応じた管理を自動的に行えるようにすることがその狙いと言えそうだ。

 臼井氏はもう1つ、興味深い事柄を指摘している。「ライフサイクル」という以上はデータの「消去」「パージ」もそこには含まれるはずだが、これからの世の中では、データが破棄されることはまずなくなるだろうと言うのだ。

 「例えば米国の医療業界は、HIPPA(Health Information Portability and Accountability Act)によって、一定期間情報を保管することが義務付けられている。だが、この機関が過ぎたからと言って、情報が廃棄されることはないだろう。というのも、その後の研究材料や全体的な傾向の把握のために利用できるからだ」(臼井氏)。無論その際には、セキュリティ上の観点も含めた適切なデータ保護が不可欠になるが、少なくとも総データ量がますます増加していくことだけは確実なようだ。

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[高橋睦美,ITmedia]