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2003/11/05 13:43 更新


富士通、1920CPUを搭載した超並列シミュレーションサーバの実証実験を開始

富士通は、同社製のCPU1920個を搭載した超並列シミュレーションサーバの実証実験を開始したことを発表した。

 富士通は11月5日、富士通研究所と共同で、「ゲノム創薬研究ソリューション」の中核システムとなる超並列シミュレーションサーバ「BioServer」を開発し、バイオ分野における共同パートナーであるゾイジーンとの実証実験を開始したことを発表した。ゾイジーンは三菱化学の100%出資会社。ゾイジーンは、富士通IDC内で構築されたシステムをアウトソーシングという形で使用し、タンパク質の構造解析などを行っている。

 冒頭挨拶に立った富士通 経営執行役の松下公一氏は、「ゲノムが解読されたことで、より大量のデータが蓄積され、今後のゲノム創薬研究では超大容量、超高速処理が必須となる。また、バイオITソフトのサービスベンダーは2000社以上だが、サーバベンダーは数社である。弊社は20年近く蓄積したソフト資産および開発技術とパートナーとの協業関係を生かし、ゲノム創薬研究に特化した強力なサーバを開発する」と語る。

松下氏

「ゲノム創薬研究に特化した強力なサーバを開発する」と語る松下氏


 BioServerは、同社製の組み込みプロセッサ「FR-V」シリーズを搭載した超並列シミュレーションサーバで、タンパク質MD(Molecular Dynamics:分子動力学計算)シミュレーション用途に使用される。

 FR-Vプロセッサは、8並列VLIW(Very Long Instruction Word:複数命令同時実行)アーキテクチャを持ち、1Wという低消費電力で動作する。同プロセッサの処理能力について富士通 先端科学ソリューション本部プロジェクト統括部長 小倉誠氏は「MIPSプロセッサとほぼ同様、Pentium IIIと比べると半分くらいの処理能力だといえる」としている。

 同プロセッサとメモリ256MBを「プロセッサエレメント」(PE)という単位基本とし、ブレード状の基盤には4PEを搭載している。この基盤が32枚(128CPU)搭載されたラックマウント型のボックスが42Uのラックに15台搭載可能で、最大1920個のCPUを使った処理が可能となっているというわけである。

 なお、OSにはアックスの組み込み用Linuxである「axLinux」が搭載される。また、制御サーバとの通信はFast Ethernetで行われる。同ラックにはこのほか、制御を行うサーバーが640CPUごとに1台必要となる。ストレージは別途必要。コンパイラや各種ミドルウェアは富士通独自のものが利用される。

 BioServerでは、タンパク質の構造予測や結合予測を行うシミュレーションプログラム(GROMACS)を個々のCPUで並列に動作させることが可能。それぞれ異なった条件でまったく独立かつ並列に計算させることで、台数比例効果を得ることが可能としている。また、処理中にCPUが故障した場合なども、制御サーバがそれを検地し、自律的な回避処理を行うというが、「1つのCPUが故障したとしても、全体的なシミュレーションの結果にはそれほど影響しない」(小倉氏)としている

 BioServerでMDシミュレーションを行った結果は別のサーバに送られ、そこでさまざまな解析作業が行われるという。目標としては、BioServerを使用し、所定のタンパク質のMDシミュレーションを2週間で実行することであるとしている。

 現在はまだ実証実験の段階であり、来年の8月まで実証実験を行う予定。製品化の目処は来年早々にも結論が出される予定だが、「価格は未定」(小倉氏)としている。

 このほか、1280CPUを搭載した2号機が、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のバイオ・IT融合機器開発プロジェクトの一環である人口交代の研究開発に利用される予定となっている。

[西尾泰三,ITmedia]

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