エンタープライズ:インタビュー 2003/11/10 20:22:00 更新


Interview:テープの置き換えを狙うアイオメガのリムーバブルHDD「RRD」

SMB向けストレージ市場へ積極進出するアイオメガは、リムーバブルHDD「RRD」を発表した。SMB市場でのバックアップやディザスタリカバリにおけるテープからの置き換えを狙う。同社のスコット・シーハン副社長に戦略と新技術を聞いた。

 中小規模企業(SMB)向けストレージ市場へ積極進出するアイオメガ。同社は11月10日、リムーバブルHDD「Removable Rigid Disk(RRD)」を日本でも発表し、従業員100人程度のSMB市場におけるテープの置き換えを狙う。日本国内ではOEM/チャネルパートナー経由の戦略を採用しているため、米国内に比べ、エンドユーザーに対するプレゼンスは弱いが、アイオメガブランドは健在という。(この日、ホームPCや家電をターゲットにしたリムーバブルドライブ「Digital Capture Technology(DTC)」も発表している。)

 2004年度の戦略的製品となるRRDは、可搬性と35Gバイトの容量、転送レート22Mバイト/秒、シークタイム12msecsのパフォーマンスを生かして、SMB市場でのバックアップやディザスタリカバリにおける利用を見込むと語る、同社のビジネス開発新テクノロジー担当副社長のスコット・シーハン氏に、同社の戦略と新技術について聞いた。

スコット・シーハン氏

毎月のように来日しているというスコット・シーハン副社長(右がDCT、左がRRD)


ZDNET 米国では多くの店でIomegaのZipが売られているのに対し、日本はそのような状況にありません。米国と日本で採っている戦略の違いを教えてください。

シーハン 欧米と日本で採用している戦略は異なります。違いがあるからこそ、今回発表した新技術(RRD/DCT)を日本市場で受け入れてもらうことは重要です。日本のOEMパートナーと手を組んで、DTCをパートナーのブランドで利用してもらうほか、チャネルパートナーを通じてチャネルパートナーのブランドの中で流通してもらう戦略を取っています。

 既存のIomegaの技術とブランドは欧米諸国で大変強力な基盤を築いてきましたが、Zipドライブに関しては日本では人気がでませんでした。おそらく日本にはほかの技術があるためだと思っています。

 Iomegaは、最初に出す製品についてはその市場でより強いブランドを利用します。Zipの場合は、富士フイルムという日本で人気の高いブランドを利用しました。ハードウェアであれば、例えば、ロジッテック、アイ・オー・データ、バッファローなど消費者に人気の高いブランドとパートナーシップを図っています。あくまでもオープンな形でパートナーシップを構築し、技術が普及率が高まったところでアイオメガのブランドとして乗り出していこうとしています。

ZDNET コンシューマーからSMBにターゲットをシフトさせてきていますね。経緯を教えてください。

シーハン ターゲットしているのは、常に私たちの資産を生かせるところです。ブランドの強みは私たちの資産です。これに加えて、ストレージソリューションにより、ローエンドからミッドレンジに至るまでで成功してきました。やはりアイオメガのブランドと優れたソリューションが成功の要因です。

 例えば、成功したZipはIBM、Dell、HP、GatewayなどのOEMパートナーと成功を収めてきました。つまり、大手のOEMパートナーをどうやってサポートしていけばよいのかの知識を得てきたのです。その中で、今回のRRDを発表しました。これはSMBからエンタープライズのビジネスへ拡大する良いチャンスとなります。エンタープライズを見ていこうとしているのは、Iomegaのブランドを利用して対象を拡大しようとしているからです。

ZDNET ブランドというのは、パートナーに対してのブランドということでしょうか?

シーハン パートナーに対してというよりは、OEMパートナーのブランドと“共に”ということです。あくまでもIomegaのストレージソリューションは、パートナーのハードウェア製品のアクセサリオプションとして販売されるわけです。決してOEMパートナーに対抗するものではありません。

ZDNET 今回発表された新技術、特にRRDはSBMをターゲットにテープからの置き換えを狙うとしています。

シーハン テープには、ローエンドといわれるTravan/DDS 4mm/DLT、そしてSuper DLT、LTOとあるわけです。テープといってもローエンドからハイエンドまである中で、私たちの技術はTravan/DDS 4mm/DLTのセグメントに焦点を当てています。従業員100人、サーバ15台程度の市場です。これは非常に大きなセグメントといえます。

ZDNET RRD技術のメリットは大手企業にとっては有効にならないのでしょうか? リカバリが高速に行えるとのことですが。

シーハン もちろんRRDは有効です。「Boot & Run」という機能を持っており、コンピュータがクラッシュしてもRRDから起動でき、安全性が確保されます。これは大型のシステムでも同様で「Boot & Run」を使えば、OSや基幹システムなどのリカバリ機能を拡張できます。またオートローダでの拡張も可能です。COMDEXで発表する予定ですが、オートローダパートナーとともに4つのオートローダを接続することで、最大4Tバイトまで対応できる製品も登場します。

 現在、エンタープライズのシステムの多くは「仮想テープ」という使い方をしています。これはバックアップをディスク→ディスク→テープへ落とすというものです。中間のディスクにはNASといった高速なディスク製品を利用してデータのやり取りを高速化し、アーカイブ用にテープを使っています。つまり、中間に位置するディスクは持ち運ぶことができないので、アーカイブ用には活用できなかったわけです。

 これをオートローダを使ったRRDシステムにすれば1システムとして転送速度、可搬性ともにクリアされ、アーカイブにも利用できることになります。バックアップはバックアップで重要ですが、リカバリというのも大切です。RRDを使えばテープからより6〜7倍高速にリカバリできます。

ZDNET アイオメガのNASにRRDが搭載される計画はありますか?

シーハン いまはまだ発表できる段階にありません。発表できるときが来たら、アナウンスさせていただきます。



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[堀 哲也,ITmedia]