エンタープライズ:ケーススタディ 2003/11/20 01:39:00 更新


ITベンダーが経営者を説得するには? ガートナー提言

ガートナージャパンは「Gartner Symposium ITxpo 2003」を開催した。初日の講演の1つは「ビジネスとITの融合:経営課題としてのIT投資」をテーマとして行われた

 ガートナージャパンは11月19日から3日間、東京・お台場で「Gartner Symposium ITxpo 2003」を開催している。初日となった19日、同社でリサーチディレクターを務める永綱浩二氏が、「ビジネスとITの融合:経営課題としてのIT投資」をテーマに講演を行った。同氏は、ITとビジネスを統合するためには、ビジネスプロセスやシステムの複雑性を議論するために、全社的に通用する共通言語を構築する必要があるとしている。

 「2006年までに、ITとビジネスを統合管理できない企業は、IT投資が生み出す価値のうち35%を失うことになる」(実現可能性は70%)

 同社のおなじみになっている未来予測では、今後企業の情報システム室は、経営戦略を実現する基盤としての位置付けを確保しなくてはならない。達成できない場合のシナリオとしては、「データ入力部門として存続する」「IT子会社として生き残る」「(担当していた業務を)完全にアウトソースすることにより組織から切り離される」など厳しい見方を示している。

ITベンダーが経営者を説得するには?

 同氏は、経営とITを統合する場合の従来の問題について、「IT部門の担当者はやる気だが、経営層が理解しないケースが多かった」と話す。当然、両者がともにモチベーションを高く保つことが、成功への近道になる。

 そこで、「ITベンダーが経営者を説得する場合に参考にすること」として紹介されたのが、ガートナーの「IT投資案件の予算額や増減率の決定指標」に関する調査。つまり、ITへの投資を決定する上で企業が重視する要因を調べたものだ。 

 結果は、「新規ITによる投資効果」が53%で1位。次に、「翌年度の予想利益額」が37%、「前年度の利益額」が27%と続き、キャッシュ・バランスを考慮してることが分かる。さらに、「(一般的な)経済動向」「翌年度の予想売上高」「競合企業のIT投資動向」などが続き、「新規投資の回収期間」が13%、「ベンダーのアドバイス」も12%と下位ながらランキングに入っている。

 講演では、ITとビジネスを統合する上での概念的な方法論についても説明された。最上位には「ビジョン」が置かれるべきという。ビジョンに基づいて「目標」が決められる。目標を達成するために「企業戦略」が立案されるという。このとき、ビジネスを巡る外部環境との関係性も考慮される。

 さらに、企業戦略と直接関わる概念が「IT戦略」となる。IT戦略は、アプリケーションや技術といった各アーテクチャに支えられる。

 永綱氏は、今から3〜4年前のネットバブル全盛期に、「e-ビジネス」がキーワードとして頻繁に取りざたされた頃の話に触れ、「私自身はe-ビジネスには冷淡だった。なぜなら、当時はIT主導で話が進んでおり、ビジョンから導かれる目標などが語られることがなかったから」と述べた。

アプリケーションこそ重要

 一般に、企業では、企画、製造、販売といった各部門がそれぞれ部門最適を図る傾向がある。だが、これでは、部門間でつながり合う業務プロセスの意味を理解する人が少なくなり、組織が硬直化するという。結果として、「変化できない企業」になるとしている。

 講演では、この解決策として、アプリケーションを統合することによる情報共有が挙げられた。ガートナーは、2007までに、ビジネスマネジャーにとって、アプリケーション統合が最も重要なITの懸案事項になる(実現可能性は80%)としている。

ITの評価方法の確立も重要

 さらにこの日は、「ITとビジネスの統合プロジェクト管理において65%以上が、情報システムの効果測定の実施や管理に費やされる」(実現可能性は70%)との提言も出された。

 これについて、現状の情報システム評価の問題点として、「結果は出るが改善方法は示されない」「症状は分かるが原因は分からない」「ビジネスマネジメントとシステム評価を関連付けられていないために、評価結果がコミュニケーションの道具として利用できない」などがあるという。

 IT評価について永綱氏は、結論部分において「計測できないものは管理できない」と締めくくっている。

関連リンク
▼ガートナージャパン
▼Gartner Symposium ITxpo 2003

[怒賀新也,ITmedia]