エンタープライズ:インタビュー 2003/12/18 15:08:00 更新


Interview:アップルのXserve、Oracle 10gのベストチョイスに

Oracle 10gへの対応を足がかりとして、Xserveは更なる飛躍を目指す。MacOS X Serverの堅牢さと大容量さは、Linuxとも互角に張り合えるパワーを持っている。

 「OracleWorld 2003 Tokyo」のスポンサーとして参加するアップルコンピュータは、同社のサーバ「Xserve」と、OS「MacOS X Server」がOracle 10gとのベストチョイスだと自信を見せる。

 1Uラックマウント仕様のサーバ「Xserve」は、2002年7月に初の出荷、アップグレードされた同名モデルが2003年2月にリリースされた。搭載するOS「Mac OS X Server」は、BSD系列としても注目を浴びておりクライアントとしてリリースされている「MacOS X」の真価が、サーバOSとして生きている。続いて2003年2月には、2.5Tバイトの最大ストレージ容量を誇る3Uラックマウントの「Xserve RAID」が登場し、同社はエンタープライズ市場への足がかりとなった。

1UサーバターゲットのデベロッパーにはGUIではなくハードスペックで勝負

 BSDというオープンスタンダードを取り入れつつ、商用OSとしてパッケージ化されているのが「MacOS X Server」の特徴だ。Xserveを使いやすくするための仕掛けとしては、OSにアップルお得意のデスクトップ環境(GUIツール)が採用されている。そうとはいえ、サーバ管理を行うデベロッパーは、遠隔地からのシェル操作が主になる、というアップルからしてみれば歯がゆい面もあるはずだ。

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MacOS X Serverの堅牢さがアップルらしさだと捉えてほしいと語る


 しかし、「アップルらしさはターゲットとする製品ごとに位置づけられ、何もGUIや筐体デザインだけでなく、信頼性、堅牢性にもあります」と、アップルコンピュータ、プロダクトマーケティング・鯉田 潮氏。このコメントからも、PowerMac G5やiMac、eMacからのアップルのイメージを、そのままXserveに当てはめるのは強引なのだと思わせる。

 一方、Xserveの持ち味でもある大容量なディスク搭載については(180GB×4基で720GB、4基のATAストライピングRAIDのディスク性能は110Mバイト/秒)、「科学技術分野を始め、医療機関、大学などで多くの導入実績を持っています」と鯉田氏。

 シェル操作によるMacOS X Serverは、BSDそのものと思える顔を見せるが、鯉田氏は「管理者が日ごろの操作でGUIツールを利用できることは、クライアントにMacOSを利用していればスムーズに利用できるためメリットの1つです」と付け加える。

大容量の恩恵はストリーミングよりもファイルサーバとしての利用が多い

 Xserveが導入されている事例についても聞く。クライアントにMacintoshが利用されている場が多いのかと思えば、そうでもないようだ。「どちらかというと、MacOSやWindows、UNIXが混在するプラットフォーム環境で利用されているケースが多いです。もちろんMacをすでに触られている管理者がきっかけとなったかもしれませんが、片寄った傾向ではありません」と鯉田氏。

 大容量なディスク搭載は、QuickTimeストリーミングサーバとしての利用が筆頭に挙げられるかと思ったが、現状は異なるという。「どちらかというと、現状はムービーのストリーミングがそれほど広範囲で利用されていないことから、先に挙げた科学技術や医療分野など、画像を多用するシーンで大容量ファイルサーバとして使われています」と鯉田氏。

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ATAPIのディスクをホットプラグ対応にする独自の「Apple Drive Modules」。本体とはSCAで接続する。写真は初代モデルXserveのもの


 OracleWorld 2003 Tokyoに合わせて来日された米アップルコンピュータ、ワールドワイド・デベロッパー・リレーションズのクリスティ・ワイアット氏は、Xserveの方向性としてオラクルとの関係に触れる。「オラクルのデベロッパーにとても興味を持っています。Xserveは、Javaの土壌としても整備されておりJ2EEやJBossでの実績があります。これらの用途でも十分な性能が発揮できます」とワイアット氏。MacOS X ServerがBSDのパワーを背後に持つことは、オープンソースのJ2EE環境を味方に付けているにほかならない。

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J2EEにおけるパワーも注目してほしい。今後はオラクルとの関係もXserveの魅力となるはず、とワイアット氏


 Xserveがさらなる飛躍を遂げるための課題は、ラックマウントサーバの選択肢として、アップルであるべきの理由付けだ。1Uサーバを導入する多くのデベロッパーは、シェル上でのBSDらしさや、4基で最大720GBというディスク容量に注目するだろう。しかし、前述したストリーミングサーバとしての側面も持つが、これはほかの選択肢でも構わない。アップルの持つブランド力が後押しするものの、その強烈なデザイン性やGUIが味方してくれるとはいえないかもしれない。Xserveは、ハードウェアスペックそのものを見つめる必要があるだろう。

 いまや、自社にOSとハードウェアを持つトップベンダーは、サンとアップル程度だ。Linuxサポートを掲げる多くのハードウェアベンダーは、OSそのものの主導権を持たないことからも、「サービスベンダー」と称する傾向にある。この背景からも、アップルは両方の主導を行えるベンダーとして期待されている。

関連リンク
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[木田佳克,ITmedia]

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