ケーススタディ
2004/02/06 22:08:00 更新


世界でのオープンソースの採用動向の実際

OSDLジャパンは「Linuxユーザーエグゼクティブセミナー」を開催した。エンタープライズ分野におけるオープンソースの利用について、政府、ユーザー企業、OSDLという異なる観点からの見方が示された。

 エンタープライズ市場でのLinuxの採用を促進する非営利団体、OSDLジャパンは2月7日、都内で「Linuxユーザーエグゼクティブセミナー」を開催した。現在Linux周辺におけるテーマとなっているエンタープライズ分野での利用について、政府、ユーザー企業、OSDLという異なる観点からの見方が示されており、今後の方向性を示す内容となった。

 「世界各国政府のオープンソース政策と採用動向」をテーマに最初の講演を行った三菱総合研究所の比屋根一雄氏は、各国のおける導入状況について、「2003年5月にミュンヘン市議会が1万4000台のコンピュータをWindowsからLinuxに移行することを決議した」ことについて触れた。

 これはIBMとSuSEが受注したもの。この移行費用は3950万ドルだったが、この際、Microsoftは当初提示額の3660万ドルを2370万ドルまで値下げしており、単にコスト削減を目指しただけのものではなかったという。また、ブラジル政府が全コンピュータの80%をLinuxへ移行したことや、タイでは政府が支援する形で250ドルのLinuxベースのPCが10万セット販売されたことなども紹介されている。

欧州先行、揉み合う米国、追うアジア各国

 政府の動きを比較すると、ヨーロッパにおいてオープンソース採用の動きが活発であることが分かる。欧州委員会は2002年7月に、OSS(Open Source software)を採用することによる計66億ユーロのIT費用を削減するよう各国政府に要請した。また英国政府調達庁は、大規模新システムにLinuxを採用した。

 一方、米国も約250の政府機関でオープンソースが導入されるなど、実態としては進んでいる。だが、世界的な標準となっているソフトウェアを提供するITベンダーが非常に多いことから、企業からの強い反発に押されるていることも事実としている。

 また、アジアでは、中国の北京市がRedflag(赤旗)Linuxを採用、「9割が海賊版」とも言われるPC向けソフトウェアに象徴される現状に対して、完全自前主義でリプレースするという「国家安全保障」も視野に入れた活動を行っている。

「Linuxの導入メリット」の実際

 同氏は、Linux導入のメリットと一般に思われている点について、実際の状況を指摘した。まずは、「UNIXからのリプレースでコストが下がる」という点。これについては、ツタヤオンラインの事例で、約4分の1から5分の1に、アマゾンドットコムでは1700万ドルを節約できたことから、「ほぼ真実」という。一方、WindowsとのTCO比較では、「差は小さく、異論もある」と話した。

 焦点となるのはメンテナンスコストの問題。ミドルウェアやアプリケーションの保守。管理技術者のコスト、さらに、多数のデスクトップPCを容易に管理できるかなどが具体的に挙げられた。

オープンソースの法的リスク

 同氏は、オープンソースにおける法的リスクについても触れた。特許権の侵害リスクでは、商用ソフトでは金銭的解決やクロスライセンスによって対応できることに対し、オープンソースでは利用が差し止められる可能性があるという。

 また、著作権については、倒産や買収などによって、ある企業や団体が突然排他著作権を主張したり、知らないうちに第3者のコードが混入するリスクもあるという。

 さらに、特にGPL(General Public License)では、オープンソースを採用して開発した成果物について、ソースコードの公開を要求されるため、ライセンスのリスクが発生するとしている。

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[怒賀新也,ITmedia]

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