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2004/02/25 19:01:00 更新


SAPが「xApps」に新モジュール発表、プロジェクト管理コストの表裏に変化?

SAPジャパンは、企業内外に横断的なビジネスプロセスを構築するための製品群であるSAP xAPPSに、新たに「SAP xApp Resource and Program Management 2.0」を投入すると発表した

 SAPジャパンは2月25日、都内で記者発表会を行い、企業内外に横断的なビジネスプロセスを構築するための製品群であるSAP xAPPS(クロスアプリケーション)に、新たに「SAP xApp Resource and Program Management 2.0」(xRPM2.0)を投入すると発表した。同製品は、複数にまたがるプロジェクトを一元的に管理するためのツール。企業システムの統合的な基盤をブループリントとして提供するSAP ESA(Enterprise Service Architecture)と、ESAを実現するためのプラットフォームであるNetWeaverがベースになっている。

 同社のバイスプレジデント、マーケティングソリューション統括本部長を務める玉木一郎氏は「企業の業務は今後ますますプロジェクト型、協働型へと移行する」と話す。

 企業にTCO削減が求められる状況で、合併や統合、人材配置の最適化、新製品の定義や開発といったビジネス課題を解決するためには、システム的な「横串」を入れて、自社または外部のリソースを効率的に管理する必要がある。そこで、人事、会計、SCMおよびCRMシステム、PLM(Product Lifecycle Management)など、SAP以外のものも含めた各システムから、必要なデータを取り出し、各担当者が役割ごとに一元的に状況を管理することを目指すのがxAppsだ。

 発表されたxRPM2.0が特に対象としているのは、研究開発投資プロジェクトやIT投資プロジェクトを効率的に管理するニーズを持つ企業。複数にまたがるプロジェクト間で、リソース管理、プロジェクト実行、技能管理、さらに、投資判断をするためのポートフォリオ分析などを効果的に行うといったニーズに対応する。

 例えばプロジェクト管理では、プロジェクト定義やタスク管理、工数管理など、また技能管理では、技能を持つ従業員を部門横断的に探せるといったメリットがある。

個別ユーザーの利点

 各ユーザーの切り口で見た場合、経営層は、進行中のプロジェクトの内容、担当プロジェクト全体のリアルタイムの状況や予算、リソースの配分状態、また、プロジェクトを目標どおりの納期やコストで完了させるために、必要な意思決定を支援するツールとして利用できる。

 また、プロジェクトリーダーは、優先度の高いプロジェクトに適切なスキルを持った担当者をどう探すか、プロジェクトの予算と日程を管理するための方法などを考える上で役立つ。

 通常の従業員は、プロジェクト報告にかかる労力の最小化、自分のキャリア目標に合ったプロジェクトの検索などを行うために活用することができる。

 全体としてユーザー企業は、生産性、スピードの向上、コスト削減、プロジェクト失敗率を低く抑えるといった価値を実現することができるとしている。

コスト削減とコンサルティング企業への影響

 xRPMの採用によりプロジェクト管理が効率化する一方で、既存の業界動向にも多少の影響があるかもしれない。

 例えば、システム系コンサルティング企業が手がける導入プロジェクトにおいて、現在最も中心となる業務はプロジェクト管理だ。導入アプリケーションの開発やテストを担当するメンバーがいる一方で、テストの進捗状況を調べたり、プロジェクトを成功させるためのリソースの最適配分について分析するといった作業を、マニュアルで行っているケースが多い。

 そのため、マネジャー以上の役職を持つ人にとっては「人がやるか、ツールがやるか」の問題であって、本質的な業務は変わらないかもしれない。だが、マネジャーより下の役職の人間で、xRPM導入で自動化できる作業を行っている人は、仕事を失うことになるかもしれない。もちろん、ユーザー企業にとってはこれが「TCO削減」につながるメリットになる。コンサルティング企業にとっては、プロジェクト管理を自動化、効率化できる一方で、人月で報酬を取るビジネスとしては必ずしも利点ばかりではないとも言えそうだ。

[怒賀新也,ITmedia]

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