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2004/03/17 19:22 更新


企業はアプリケーション統合の問題をどうするべきか?

「Application Integration And Web Services 2004」では、企業システムにおける課題の1つとなっているアプリケーション統合についての提言が行われている

 ガートナージャパンは3月16日から2日間、企業システムにおける課題の1つとなっているアプリケーション統合について提言するカンファレンス「Application Integration And Web Services 2004」を都内で開催している。テーマは文字通り「アプリケーション統合」。人事や会計などを運用するERPのほか、CRM、SCM、そしてレガシーシステムも併せ、企業がこれまで構築してきたアプリケーションを、機能の優位性を生かしながら相互に統合していくことへのニーズが高まっている。

 初日の基調講演で、同社バイスプレジデントのロイ・シュルテ氏は、「従来の統合はあくまでもアプリケーションのレイヤーが中心だったが、現在は、より緊密に統合された多種構造アプリケーションシステムへと劇的に変化している」と話した。

 同氏はさらに、「企業はエンドポイントのアプリケーションを継続的に利用しながら、ロジックとデータを統合した新規レイヤーを追加する」と加える。そして、このレイヤーをガートナーは「企業神経システム」と呼んでいる。具体的な製品で言えば、WebLogicやWebSphereなどが、アプリケーションブローカーとして、こうした製品を含んでいる。SAPのNetWeaverもこれに当たる。

 企業神経システムでは、変換ルーティングモジュールや、XML DBMS、ビジネスイベントマネジャーなど、さまざまな機能が提供される。データベース(RDBMS)もこの上に置かれることになる。これにより、アプリケーション間のプロトコルの違いが隠蔽されたり、相互接続を容易にすることができる。結果的に、企業システムとして、さまざまな情報が連携された包括的かつ全体的な視点を持ったシステムへと強化されていく。

統合の方法論

 統合を困難にする要因には、基盤となる技術がアプリケーションごとに違っていたり、設計や情報アーキテクチャに多様性があることなどがあるという。

 その上で、ガートナーが提言する統合シナリオは、「全面刷新」、標準技術を利用して互換性を確保する「ラッピングとリエンジニアリング」、より高度な抽象化によって異質な各部分の統合を図る「新規レイヤーの追加」の3つとなる。

 全面刷新とは、アプリケーション全体を全面的に新しくすること。方法は、システム全体をゼロから手で作り直すか、ERPを一括導入するかの2つになる。アプリケーション間が相互接続性をしっかり意識した一貫性のあるシステムを実現するためには最良の手段だが、さまざまな意味で「コストの高い」方法になる。そして、現実には、購入したERPのほかにも、レガシーシステム、特殊用途システム、ネットワーク上の外部企業、独立子会社などが残り、それらが混在する不統一なシステムに止まってしまうことも多い。

 一方、ラッピングとエンジニアリングは、もう少し現実的な選択肢となる。疎結合のシステム環境を実現しやすいWebサービスを用いることで、異種システム間の連携は容易になる。SOA(Service Oriented Architecture)をベースに構築した顧客データベースや注文データベースはポータルと連携し、アプリケーションパッケージベースでつくられた従業員向けシステムは、従業員専用ラッパーなどを利用してネットワークと連携する。

 だが、現実には、標準技術の適用がすべての統合問題を解決するわけではないという。例えば、SOAベースで構築した顧客システムが、現行のデータとロジックと比較して冗長だったり、注文システムが現行のSOAインタフェース間で互換性がないといったことも起きている。

 そして、3つ目が、新規レイヤーの追加。このレイヤーは、ファイル転送、EDI、ビジネスプロセスモデリング、データウェアハウス、ETL(データの抽出/変換/ロード)、SOA、仮想データ表示など、さまざまな機能によって包括的な統合を実現しようとするため、多くの領域にわたった統制が必要になってくるとしている。

 ガートナーの結論は、3つ目の新規レイヤーの追加をベースにするもの。場合によって、システムの全面刷新、ラッピングとリエンジニアリングを取り入れながら、統合を実現する新しいシステムへと移行するべきとしている。

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[怒賀新也,ITmedia]

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