インタビュー
2004/03/23 19:22 更新


IBMの「データベース戦略」はリレーショナルを超えたInformation Management

IBMのソフトウェア戦略および競合他社との差別化などについて、米IBMソフトウェアグループ、データ管理ゼネラルマネジャーを務めるジャネット・パルナ氏に話を聞いた

 IBMのソフトウェア戦略は、フロントエンドソフトのLotus、データベースはDB2、トランザクション管理はWebSphere、運用管理のTivoli、ソフトウェア開発はRationalという5つの軸がベースとなっている。

 同社は、e-ビジネスオンデマンドという枠組みの中のソフトウェア戦略の中で、「Information Management」というキーワードを示している。これは、アプリケーション、情報、人といったさまざまなリソースが存在している企業の中で、リソース同士を結びつけ、ビジネスプロセスを水平統合していくという目的を実現するための施策と言える。

 IBMのソフトウェア戦略および競合他社との差別化などについて、米IBMソフトウェアグループ、データ管理ゼネラルマネジャーを務めるジャネット・パルナ氏に話を聞いた。

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ジャネット・パルナ氏

ITmedia データベースをはじめとしたIBMのソフトウェア戦略について教えてください。

パルナ 現在、企業に蓄積するデータが急増しています。データ量は3年前の5倍、毎年人類1人あたり250Mバイトのデータが増えていると言われています。そして、その85%はリレーショナルデータベース(RDBMS)に格納されないデータです。電子メール、画像、文書など、さまざまなタイプのデータが存在しており、デジタル化さえされていないケースも多いのです。

 さらに、企業が抱える問題としては、従業員が使う時間の約30%が情報を探す時間に割り当てられていることです。情報量、データのタイプが増えていることで、情報を正しいタイミングで必要としている人に渡すことが大変難しくなっているのです。

 IBMの差別化戦略は、この状況にRDBMSだけでなく、すべてのタイプの情報を格納し、分析、配信できる情報インフラを提供することにあります。

 われわれは、データベース、データウェアハウス(DWH)、アプリケーション、Web情報などを含め、企業が必要なデータにアクセスし、統合、分析できる環境を提供します。そして、85%に上るRDBMS以外のデータを扱うために、鍵となるのがEnterprise Contents Managementです。この分野でIBMは、テリオン、グリーンパスチャ、アプトリクスという3社を買収しており、今後も注力していきます。

ITmedia RDBMSでの競争といった場合、Oracleなどとのライバル関係に注目が集まることが多いと思います。

パルナ 企業がシステムの投資の40%を統合に費やしているというデータもある中で、IBMは異種DBの統合にもしっかり対応したマルチプラットフォームを志向しています。一方、Oracle10gでは、すべてのDBがOracleでなければなりません。ホモジニアスではなく、IBMの方が本当の意味でのオープングリッドであるという認識がユーザーにも少しずつ浸透していることを感じています。

 情報管理という視点では、RDBMS上のデータは少な過ぎます。あらゆる情報を管理するという全体の視点から見ているIBMは、その点で競合他社とは取り組み方が違うのです。

ITmedia 具体的な製品にはどのような特徴がありますか?

パルナ 3月の終わりには、メインフレーム向けDB2の12番目となる新製品がリリースされます。パフォーマンス、アプリケーション開発、TCO削減などを念頭におき、Z/OSの64ビットのメモリ空間を利用しながら、バーチャルストレージによってメモリはこれまでの2Gバイトから16エクサバイトへと大幅に拡張されました。また、スキーマも、データをオンラインの状態のまま変更可能です。

 さらに、UNIX、Linux、Windowsといったオープン環境向けのデータベースとして「Stinger」(コードネーム)という製品を現在開発しています。Stingerは、.NET環境やJava、Eclipseにも対応しています。

ITmedia Linuxへの取り組みについては?

パルナ Linux 2.6カーネルのサポートをはじめ、取り組みを強化していきます。Linuxをデータベースのプラットフォームとして利用することへの関心は高まっています。

ITmedia Information Managementには、ビジネス・インテリジェンス(BI)の視点も含まれるでしょうか?

パルナ 企業には、顧客やサプライチェーン、内部的な業務プロセスを理解して、最適化したいという要求があります。さらに、リアルタイム性も求められています。それに応えるには、分析ツールとしてのアプリケーションが必要なのです。

 さまざまなデータソースからデータを抽出し、クレンジング、分析というプロセスを経て、必要な人々に配信する取り組みが必要なのです。IBMとしては、ユーザー企業がこのようなシステム環境を手に入れるために、プラットフォームを提供し、さらに、BIベンダーなどと協力して、顧客の問題解決を助けて行きたいと考えています。

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▼日本IBM

[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

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