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2004/03/29 19:30 更新


マイクロソフトを踏み台にしてくれ、春風吹き乱れる早大で古川氏

「日本からビル・ゲイツを生み出す、その踏み台になる」とマイクロソフトの古川氏は学生に向けて語る。早大とマイクロソフトの協業は良好なスタートを切った。

 春風が吹き乱れる早稲田大学理工学部キャンパス。後期の授業はすでに終えたものの、来期の科目登録期間とありキャンパスは学生で賑わっている。3月29日、早大とマイクロソフトは共同でセキュリティ特別セミナー「Writing Secure Code」を開催。マイクロソフトの最高技術責任者古川 享氏が学生に向けて“思い”を語った。

 「日本からビル・ゲイツを生み出す、その踏み台になる」――古川氏は、インターシッププログラムをはじめ日本で行われている学術分野での協業を例に同社と大学との関係を説明しながら、若い世代に対する思いをこのように話した。「1万人、10万人がやっていることを同じレベルでやってほしくない。新しいことに挑み、マイクロソフトを打ちのめしてやる、そんな人が出てきてほしい」。

古川 享氏

3月8日のSecurity Summit 2004での説明を学生に向けても行った古川氏


 ワールドワイドで見れば、Microsoftは、39カ国200大学以上で協力関係を築き、研究開発費の約15%を学術研究費に注ぎ込んでいる。その分野もPCという枠組みにとらわれず、グリッドコンピューティング分野などでも見られ、コーネル大学の開発した技術を利用し、600以上のCPUで構成されるWindows 2000ベースのクラスタがウォール街で活用されていたりする。ランカスター大学の成果は、組み込み向けのWindows CE.NETでのIPv6実装面で実際の製品へ反映されてもいる。4カ月前、早大で基調講演を行ったスティーブ・バルマーCEOも若い世代に対する思いは同じようで、大隈講堂いっぱいに響き渡る大声でエネルギッシュな熱弁を振るったことが思い起こされる。

 マイクロソフトと国内の大学との関係はあまり知られていないが、それでもアンケート回答の意味を分析するユーザー意図解析、情報検索、自然言語処理、音声言語処理と大学との協業は意外に広まっているようだ。早大との間で交わされている覚書(Memorandum of Understanding)も本来拘束力を持たないため、お互いの積極性がなければ、実りにつながるケースはなかなかない。しかし、今回の取り組みに関しては「単にお金を出すだけでなく、相互に(学生)生かす場を作ろう」(古川氏)と、マイクロソフトは非常に積極的だ。早大のセキュリティ技術者センターの村岡洋一副総長も「マイクロソフトの積極的な申し出があった」と言い、「1をもらえば10を要求するのが早稲田」と満悦な表情からは、両者の良好な関係が垣間見られる。

Writing Secure Codeのデビッド・ルブラン氏も登場

 29日から始まったWriting Secure Code講座は、同名の著書を持つ米Microsoftのセキュリティアーキテクト、デビット・ルブラン氏を迎えて行われている。同氏の著書はすでに新しいプログラミングの「バイブル」になっていると古川氏も絶賛を惜しまない人物。「8時間も英語で聞くのは苦痛を伴うかもしれないが、デビッド・ルブランが日本で初めて早稲田で授業を行う。今からJAVAを始めたって、多くのデベロッパーの一人にすぎない。だが、今回はセキュアなプログラミングのマナーを知る日本で始めての40人になれるかもしれない」と古川氏。

 4月から理工学部で開講することになる講座は、「OS実装論」「情報セキュリティ技術」「リアルタイム3Dグラフィックスプログラミング」「プロジェクト管理」とセキュリティに限らず多岐に渡る。OS実装論では、WindowsがOSとしてどのような間違いを犯してきたのか、なども語られる予定という。

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[堀 哲也,ITmedia]

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