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2004/04/01 22:48 更新


プレステからスパコンまで、Powerのすそ野を広げるIBM

IBMはPowerアーキテクチャをあらゆる製品に拡大する計画の一環として、設計プロセス公開のほか、多数の契約を発表。近く登場するPOWER5のデモも行い、同プロセッサがオンデマンド戦略において果たす役割を語った。

 IBMは全社的なオンデマンド戦略をさらに拡大するため、Powerアーキテクチャを家電からスーパーコンピュータまで、あらゆるものに搭載する計画だ。同社が3月31日明らかにした。

 同社幹部はニューヨークで開いた記者発表会で、開発者にPowerプロセッサの設計プロセスを公開して、競争の激しいコンピューティング業界で同プロセッサの普及拡大を図ると話した(別記事参照)。

 また同社は、間もなく登場するPOWER5アーキテクチャのデモも行った。POWER5は約束通り、企業のITインフラ統合を支援する目的で、1つのプロセッサ上の仮想パーティション内で、複数のOSを走らせる。しかし同社担当者によると、この次世代アーキテクチャを基盤とした製品が発売されるのは今年の後半以降になる見込みだという。

 Powerプロセッサはかねてから、AppleのG3とG5マシンやIBMのブレードサーバなど各種の製品に採用されているが、IBMは新たな契約を発表することでこの戦略をより深めている。

 その一例として、IBMは、ソニーが人気ゲーム機PlayStationを含む次世代デジタル家電向けに、Powerのライセンスを受けることを明らかにした。また同社は、L-3 Communicationsと中国のGlobal Brands Manufacture Groupと新しい技術・開発契約を結んだ。

 また、Powerベースのブレードサーバ「eServer BladeCenter JS20」が4月に世界に向けて出荷されることも発表された。JS20には、現在iSeriesとpSeriesサーバで採用されている「PowerPC 970」が搭載され、64ビットコンピューティングへの対応が図られる。

 Powerプロセッサはどこにでも使えて、プロセッサアーキテクチャに基づいて比類のないスケーラビリティを提供する――これが、IBMの技術・戦略担当副社長アービィング・ウラドウスキー=バーガー氏、上級副社長ビル・ツァイトラー氏、IBMのシステム部門などが打ち出したメッセージだ。

 ツァイトラー氏は聴衆に向けて次のように語った。「われわれの業界を牽引するのは、新しい技術のアプリケーションだ。基本的に、これはオンデマンドに関連するものであり、こんなふうに自問するあらゆる種類の業界の企業に関わってくる。『自動車から家電まであらゆるものをつなぎ、無限の規模のコンピューティングを利用できたら、状況は変わるだろうか?』と――われわれは世界中に響く声で『イエス』と答える」

 POWERの影響力を広めようとするIBMの構想は、「パーベイシブ」と「ディープ」の2つに分かれる。IBMはパーベイシブという言葉を、Powerプロセッサ搭載の広範な有線・無線デバイスを指すのに使っている。ディープコンピューティングは、最終的にBlue Geneを構成することになるIBMの高性能技術コンピューティング製品を表す。ウラドウスキー=バーガー氏は、Blue Geneが完成すれば、世界最大のスーパーコンピュータになるだろうとしている。

 「パーベイシブの面とディープの面で、このようにすべてがつながり合うオンデマンドの世界で、新たなアプリケーションが成長することに疑問の余地はない」(ツァイトラー氏)

 今回の発表会に関しておそらく最大の疑問の1つは、64ビットから32ビットへの後方互換性を持つPowerアーキテクチャが、IntelのItaniumプロセッサと張り合おうとしているのかどうかだった。

 IBMの技術・製造担当上級副社長ニック・ドノフリオ氏は聴衆に向けて、次のような重要なメッセージを持ち帰るよう呼びかけた。「Power戦略は競合するマイクロプロセッサ技術を提供することではなく、柔軟なプロセッサアーキテクチャを使ってシステム上でオンデマンドコンピューティングを促進することが主眼となる」

 例えば、POWER5の仮想化機能は、オンデマンドの実現に必要なコンピューティング機能を提供する。1つのマシン内で、タスクを自動的に複数のOSに振り分けることで、ユーザーはデータセンターを整理し、複雑なコンピューティングジョブを処理する人員の必要性を減らせる。これはいずれもコスト削減につながる。

 IBMのLinux版Power担当副社長ブライアン・コナーズ氏は、現行のPOWER4、POWER4+アーキテクチャから、POWER5がどのように同社のオンデマンド戦略の推進力を高めるかについて語った。これらの現行アーキテクチャは、オンデマンドコンピューティングの口火となる仮想化と論理パーティショニングをある程度備えている。

 「こうした機能が仮想的なスケールアウトに使われるようになる。POWER5はこれを次のレベルに進めるからだ」とコナーズ氏はinternetnews.comに語った。「当社がメインフレーム技術からPowerアーキテクチャへと持ち込んでいる機能によって、この戦略は推進されるだろう。作業負荷を複数に分けることで、稼働率は高まり、異なるパーティション間で作業が確実に処理されるようになるだろう。POWER5では、POWER4と同様に、しかしオンザフライで動的に負荷をパーティショニングする」

 またIBM幹部は、Power Architectureセンターを世界各国に設置し、進化するPowerアーキテクチャを基盤としたソフト・システムを設計する企業を支援する計画を明らかにした。

 同社はまた、現在Power対応製品を開発している企業を支援する新しいパッケージキットも発表。このパッケージはASICを利用する顧客に無料で提供され、開発コストを半分に減らす。

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