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2004/04/13 12:19 更新


Windows Server担当幹部、「AMD 64にはパートナーが求めていた64ビット機能がある」

マイクロソフトのWindows Serverにおける焦点の1つは、64ビットアプリケーションがどこまで浸透するかにある。そして、基盤となるハードウェア上で、64ビット化に注力しているのがAMDだ。AMDのOpteronは、64ビット環境上で、既存の32ビットアプリケーションがそのまま稼動するという大きなアドバンテージを持っている。

 2003年5月、ニューオリンズで行われたハードウェア開発者向け会議「WinHEC 2003」の基調講演で、ビル・ゲイツ氏は、初めて特定のプロセッサ対応に強く言及した。Athlon 64、Opteronに実装されているAMD 64(旧名x86-64)をWindowsプラットフォームで積極的に採用することを明らかにし、将来のソフトウェアの進化に備えて、徐々に64ビット化を進めていくことを明言した。

 ゲイツ氏が特定プロセッサへの強いコミットを、しかも基調講演で明らかにすることは、これまで一度もなかった。AMD64ならば、従来の32ビットのソフトウェア資産をそのまま活用し、パフォーマンスも犠牲にせず、64ビットアプリケーションへと移行できる。

 このメリットは、マイクロソフトも身に染みて分かっていることなのかもしれない。マイクロソフト自身、16ビットのソフトウエアから32ビットへの移行で苦難を強いられた過去があるからだ。

ボトムアップで64ビット普及を見据える

 マイクロソフトWindows Server製品部マネジャーの藤本浩司氏は「Windows Serverの64ビット版は、ハイエンドを中心に急速に増加しつつある。」と話す。現在、マイクロソフト製品はインテルのItanium Processor Family(IPF)しかサポートしていないため、大規模システムを構築しているユーザーが中心という。これは、いわゆるトップダウン型の導入事例が多いことを示している。

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マイクロソフトWindows Server製品部マネジャーの藤本浩司氏

 IPFでも増加している64ビットWindowsのビジネス。なぜ、新たにOpteronをサポートする必要があるのだろうか?

 「今まではトップダウンで、ハイエンドの領域から下に向けて64ビット化を推進してきた。しかし、マイクロソフトは、クライアントレベルからボトムアップで製品を浸透させてきた経緯がある。」(藤本氏)

 確かに、マイクロソフトはユーザー単位の体験レベルを引き上げることで、エンタープライズ領域にまで入り込んできた。同様に、さまざまなアプリケーションで64ビットのパワーを活用するため、ボトムアップの戦略も進めていこうとしている。だが、ボトムアップ戦略を行う上で、問題が1つあった。それはソフトウェアの互換性だった。

 現在のWindows Serverがサポートしている64ビットプロセッサはItaniumシリーズだけだが、Itaniumにおける32ビットコードはハードウェアによるエミュレーション機能で動作しており、元来の32ビットプロセッサに比べると格段にパフォーマンスが落ちてしまう。互換性はゼロではないが、かといって既存の32ビットアプリケーションをそのままに、部分的に64ビットにするだけでは、64ビット化による恩恵を受けにくい。

 「Opteronサポートの理由の1つは、バイナリレベルで32ビットと64ビットの両方が同時に動作し、しかも32ビットのパフォーマンスが最新の32ビット専用プロセッサと同等以上だから」と藤本氏は続ける。

 マイクロソフトのプラットフォームでアプリケーションを書いているISVは、エンドユーザーに近い位置にあるソフトウェアが得意な企業が多いため、既存の32ビットアプリケーションが高速に動くかどうかは重要な問題になる。以前を振り返っても、8086からi286、i386と、ソフトウェアの互換性があったからこそ、ボトムアップの普及戦略を描くことができたと言っていい。

 これはマイクロソフトの基本的なビジネススタイルだという。同社のISVは、ハイエンド分野に特化するとなれば大きな投資が必要となるため、参入が難しかった。だが、AMD64ならば、もっとエンドユーザーに近いところから、より少ない投資で64ビットに向かうことができると同氏は指摘する。これこそが「マイクロソフトが求めていたもの」という側面もある。

 「マイクロソフトがAMD64にコミットした理由はそこにあった」(同氏)

64ビットのメリットはデータベースだけ?

 とはいえ、これまで強く64ビット化が求められていた製品は、データベースを筆頭に大量のメモリを使うことで高速化が容易に実現できる特定のアプリケーションのみだった。それらは主にバックエンドのシステムだ。その一方で、特定のアプリケーション以外での64ビット化による恩恵は薄いとの指摘がこれまでは根強くあった。

 「64ビット化のメリットが最も顕著に現れるのがデータベースである点には疑いはない。しかし、メモリアクセスを行うすべてのアプリケーションに、64ビット化による恩恵はある。データベースに限らずあらゆるソフトウェアの64ビット化を支援したい。」と同氏。

 ここには、ERPアプリケーションも含まれる。すでに会計ソフトを64ビット化することで2倍程度のパフォーマンスアップを果たしている例もあるという。また、身近なところでは、AMD64版に入れ替えることでWindows Server 2003 ターミナルサービスのパフォーマンスが50%も向上した。AMD64版はエンドユーザー向け32ビットアプリケーションのパフォーマンスも高いため、ターミナルサーバーとして理想的とも言えそうだ。

 AMD64版のWindowsでは、64ビットOSでの動作を意識した「行儀の良い」プログラミングをしなくても、コンパイルオプションひとつで64ビット版にすることができるという。しかし、テスト行程を32ビット版とは別に行わなければならないとすると、64ビット化に慎重な姿勢を見せるISVも多いのではないだろうか?

 「ISVに考えてもらいたいのは、64ビットで何が可能になるかだけでなく、既存アプリケーションの64ビット化。現在の自社製品が64ビットで正常に動くか、パフォーマンスはどうなるのかをまずは確認してもらいたい。32ビットと64ビットが同時に、高速に動くのが、AMD64版の良いところであるため、既存製品の64ビット化を躊躇する必要はない。」(同氏)

 インテルがAMD64互換の命令セットを、将来のXeonでサポートすることを発表している。言い換えれば、今後登場するサーバ向けx86プロセッサは、すべて64ビットコードが動くことになる。このビジネスチャンスを逃す手はないというのがマイクロソフトの考え。コンピューティングの将来は64ビットの方向に動いており、そのパワーを効率的に引き出すことが、今後のビジネスを広げていく上で重要となる。

 これまで64ビットのシステムといえば、数100万以上のものが多かった。しかし、AMD64をサポートするOpteronやAthlon 64のシステムは数10万円で入手できる。これによって、従来は考えられなかったボトムアップ戦略を練ることも可能になる。また、32ビットで十分と考えて社内システムを構築しても、最終的にメモリが不足してプログラミングに窮するケースも少なくない。コストアップが最小限ならば、最初から64ビットで開発する方が(開発費も含めた)トータルのコストは低くなる。

今年後半に製品版を出荷

 AMD64版のWindows Serverのスケジュールについては、一説によれば、Windows Server 2003 Service Pack 1(SP1)のリリースタイミングで、Windows XPおよびWindows Server 2003それぞれでAMD64がサポートされるという。

 「今年の1月に、AMD64向けの最初のWindows Server 2003ベータ版をリリースした。これは英語版だけで日本語にローカライズはされてない。」とする同氏。そのため、日本での正式なベータユーザーの募集は行わなかったという。だが、すべてのOpteron搭載サーバ、ワークステーションには、AMD版Windowsのベータ版が付属する。

 その後のスケジュールでは、Windows Server 2003 SP1と同時期に投入される。しかし、サービスパックにAMD64対応のバイナリが付属するわけではないという。IPF版と同様に、64ビットに完全対応した32ビット版とは別のバイナリになる。正式には今年の後半に投入されるとしている。

 OSの正式リリース前の今、AMDのプラットフォームでWindowsの上でAMD64対応アプリケーションを書く意味はあるだろうか。  また、パフォーマンスチューンも含めたプログラミングの可否にも注目が集まる。

 「われわれはAMD64対応のコードをOpteronもしくはAthlon 64の上で開発、テスト、チューニングしているのでパートナーの皆様には期待してほしい。」(同氏)

関連リンク
▼AMD & Microsoft Software Developer Conference

[本田雅一,ITmedia]

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