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2004/05/06 14:48 更新


シーベル氏がCEOを辞任――後任はIBMの販売担当重役

米Siebel Systems創業者のシーベル氏がCEO職を退き、後任にIBMからきた人物が就くことになった。

 Siebel Systemsは5月3日、創業者のトム・シーベル氏がCEO職を退き、同氏の後任としてIBMの販売・流通部門の責任者、マイク・ローリー氏が就任すると発表した。シーベル氏は今後も、同社の会長職にとどまる。

 シーベル氏によると、同氏は1年前に会長とCEOの役職を切り離すことを決め、ローリー氏の指名はこの決定に基づくものだという。

 5月3日に行われたアナリストとの電話会見の中でシーベル氏は、「われわれが最初に選んだ候補者が申し出を受け入れてくれたことに非常に満足している。この役割を担う上で、彼ほど経験豊富で有能な幹部はほかに思いつかない」と述べている。

 IBMは5月3日、ローリー氏が退職したと発表したが、同氏の転職先は明らかにしなかった。ローリー氏(50歳)はIBMに25年余り在籍し、マーケティング、販売、開発、財務などの職務を歴任した。同氏は2001年、IBMの販売・流通部門(チャネルパートナーのネットワークも同部門の管轄下にある)の責任者に就任した。

 IBMとSiebelはビジネスパートナーとして緊密な関係にあり、シーベル氏は声明文の中で、「パートナーとして数年間にわたって当社とつき合ってきたローリー氏が入社するのを喜んでいる」と述べている。IBMはSiebelにとって最大の顧客の1社で、SiebelのCRM(カスタマーリレーションシップ管理)ソフトウェアを6万シート分導入している。またIBMは、Siebelの最大のマーケティングパートナーでもある。シーベル氏によると、両社は昨年、総額で10億ドルの共同事業を行ったという。

 シーベル氏(51歳)は、Oracleの重役を経て、1993年にカリフォルニア州サンマテオを本拠とするSiebelを設立した。師と仰ぐラリー・エリソン氏と同様、シーベル氏も歯に衣着せずにものを言う威圧的なリーダーとして知られる。Siebelによると、同氏は今後もフルタイムで同社に勤務し、戦略と対顧客業務を担当するとともに、業界および政界で同社の顔としての役割を果たす予定だという。

 シーベル氏は5月3日の電話会見で、Siebelの外で活躍する機会を求めて辞職したのではないことを明らかにした。

 「そのようなことは全く考えていない。当社における私の役割は、一社員として勤務を続け、できるかぎりマイク(ローリー氏)をサポートすることだ」(シーベル氏)

 しかしシーベル氏は、同社の経営指導者としての役割を続けるつもりはない点を強調している。シーベル氏の今後の経営的立場に関する質問に対して、同氏は「CEOはマイクであり、彼が会社を運営するのだ。経営チーム全体がマイクの配下に置かれる」と答えている。

 シーベル氏によると、ローリー氏は5月4日付でCEOに就任する。

 カリフォルニア州バークリーにあるサービス会社Enterprise Applications Consultingのアナリスト、ジョッシュ・グリーンバウム氏は、Siebelの経営者の交代に驚きながらも、喜ばしい展開だとしている。

 「シーベル氏は極めて支配欲が強いリーダーとして知られ、何から何まで自分でやろうとしてきたことを考えれば、同氏が経営から退くというのは意外だ。とはいえ、これは歓迎すべき動きだ。同社に新しい血を入れるのが遅すぎたくらいだ」とグリーンバウム氏は話す。

 「創業者として身の引き際を心得ていたという点でシーベル氏は賞賛に値する」(同氏)

 ローリー氏は、Siebelの軌跡、戦略および経営陣に満足しており、大幅な変更は行わないとしている。同氏は、同氏にとって未経験の地位であるとして、今後の目標については、顧客を満足させ、市場の改革者としてのSiebelの立場を維持することだと述べるにとどまった。

 SiebelはCRM市場を開拓し、現在も同市場を支配している。しかしここ数年、企業のソフトウェア支出の減少傾向に加え、SAP、PeopleSoft、Oracleなどのベンダーとの競争激化により、同社の成長は鈍化している。

 「以前の成長との比較および競合企業との比較で見れば、同社のこの間の業績は芳しくない。トム・シーベル氏にとって必要なのは、売り上げを伸ばすことができる人物だ」とグリーンバウム氏は話す。

 ボストンにあるコンサルティング会社Summit Strategiesのトム・クチャービー社長も、Siebelの売り上げを回復することがローリー氏にとっての優先課題だと指摘する。

 クチャービー氏によると、今回の経営者の交代は、アプリケーション市場に対する考え方を広げたいという意欲をSiebelが抱き始めたことを示すものだとしている。

 「Siebelはこれまで少し閉鎖的だった。市場に対する彼らの理解は独善的で、外部の意見を受け入れなかった。この点が変わるといいのだが」(同氏)

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