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2004/05/06 15:09 更新


SunがSolarisでGPLライセンスの採用を検討中

米Sun Microsystemsのシュワルツ社長が、SolarisのGPL化について検討していることを明らかにした。

 Sun Microsystemsは、Linuxで動作するサーバを販売しているが、だからといって同社のフラッグシップOSである「Solaris」の改良に向けた作業の手を緩めているわけではない。先ごろSunの社長兼最高業務執行責任者に指名されたジョナサン・シュワルツ氏によると、同社ではSolarisの無償オープンソース版を提供する計画や、Solarisを「Java Desktop System」とともに提供する計画などを検討しているという。

 シュワルツ氏はSolarisについて、「GPL化することになるだろうが、まだ検討中だ」と話している。GPLというのはGNU General Public Licenseを意味し、Linuxがこのライセンス方式で配布されている。

 4月30日にサンフランシスコで行われたインタビューの中でシュワルツ氏は、Linuxに対するSolarisの競争力を高めるために計画中の幾つかの構想について説明した。Linuxは、Sunの製品ラインのローエンド部分の市場シェアを徐々に奪ってきた。

 Sunは従来、一部の非営利ユーザー向けにSolarisを無償で提供してきたが、Solarisのソースコードは公開しておらず、現在でもプロセッサ1個に付き99ドルのライセンス料を課している。シュワルツ氏は、GPLを採用することにより、「ユーザー自身でカーネルを構築できなければオープンとは言えない」という批判が払拭されるだろうとしながらも、そういった批判は「空想」にすぎないという。

 「ばかげた考え方だ。オープンな標準というのは、競争を活発化することが目的なのであり、CIO(最高情報責任者)にソースコードを提供することが目的ではない。CIOはこれ以上ソースコードを欲しがってはいない」とシュワルツ氏は話す。

 Sunの幹部らは従来、GPLに対して冷淡だったが、シュワルツ氏によると、SunがSolarisをGPLの下でリリースする上での障害は「多くなかった」という。同社では、サポート契約をオプションとして提供する方針であり、これはRed Hatが採用しているモデルに近い。「GPLはわれわれの味方だと考えている。SunはBSDおよびBSDライセンスから生まれた企業であることを忘れないでもらいたい」と、同氏はオープンソースのBerkeley Software Distributionライセンスに言及した。

 だがSunは不安も感じているようだ。「GPLで心配なのは、市場の分断が促進される恐れがあることだ。Linux分野ではRed Hatが市場を分断させた。カーネルが異なるわけではないが、Red Hatのディストリビューション向けに開発したものは、Debianでは動作しないという意味で分断されているのだ」(シュワルツ氏)

 シュワルツ氏によると、Sunは無償ライセンシングモデルに「早急に」移行する見込みだ。Solarisの収入は、有料のサブスクリプション方式で確保するという。同氏は、その時期がいつなのか、またこのモデルの価格体系はどうなるのかは明らかにせず、「Red Hatよりは安くなる」とだけ述べている。

 実際、Solarisのオープンソース版とサブスクリプションライセンスモデルを導入することにより、SunのSolaris販売モデルはRed HatのLinux販売方式に極めて近いものになる、とシュワルツ氏は説明する。「Red Hatの方式と違いはないが、われわれはオープンな標準を推進するつもりだ。なぜなら、市場の分断ではなく、市場の拡大に向けてコミュニティーで合意された標準を推進することが、われわれの根本的な目的だからだ」(同氏)

 シュワルツ氏は、たとえライバル企業を利する場合であってもSunがオープンな標準で開発コミュニティーと協力できることを示す証拠として、Java Community ProcessでのSunの活動、ならびにBEAとIBMが支配するJ2EE(Java 2 Enterprise Edition)市場の開拓に向けた同社の取り組みを挙げている。

 Red Hatは、このような役割を担えることをまだ証明していない、とシュワルツ氏は指摘する。「われわれはユーザーをRed HatからSunに移行させようとしている。オープンソースがオープンな標準を意味するのではないことを当社の顧客が直感的に理解したからだ」と同氏は語る。これは、最近アイルライドで開かれたMicrosoft主催のカンファレンスにおいてアイルランドのメアリー・ハナフィン国務大臣が行った発言と同じ内容である。

 ElectronicNews.Netの報道によると、ハナフィン氏は「オープンな標準はオープンソースと同じ意味ではないことを忘れてはならない」と語った。ハナフィン氏によると、アイルランド政府は電子政府構想でオープンソースソフトウェアの採用を検討していたが、「オープンソースの長期的コストは短期的節約を上回る」と判断したという。

 シュワルツ氏によると、将来、SolarisはSunのJava Desktop Systemでも重要な役割を果たすという。「当社のデスクトップソフトウェアをSolaris上で動作させ、自分の目的に合ったOSを選択するオプションを顧客に提供するつもりだ」(同氏)

 現在、Java Desktopは「SUSE Linux」ディストリビューションをベースとしているが、同ソフトウェアのSolaris版では、トラステッドコンテナや、ロールベースのきめ細かなアクセスコントロールといったSolarisのセキュリティ機能が搭載される、とシュワルツ氏は説明する。

 「いずれ、セキュリティはクライアントにおける主要問題になるだろう。このため、われわれがSolarisに組み込んだインフラは、デスクトップでも重要性を帯びてくる可能性がある」(同氏)

 調査会社Gartnerのアナリスト、ジョージ・ワイス氏は、「LinuxとGPLを受け入れる一方でそれに難癖をつけるというSunの姿勢は、Linuxが適しているのはどの分野なのかという問題に関してSunの指導を求める顧客を混乱させる可能性がある」と指摘する。

 「Sunは自社の考えを明らかにするにあたっては、もう少し配慮する必要がある。彼らは多くのユーザーを混乱させている」とワイス氏は話す。

 ワイス氏によると、Linuxにふさわしい分野があると市場が判断したのは明らかであり、Solarisをあらゆる分野において安価で優れた選択肢として推進するSunの路線は、同社の信用を損なう結果につながる可能性があるという。「SunがLinuxの位置付けを明確にしなければ、同社がSolarisを推進しようとLinuxを推進しようと、ユーザーのSun離れが起きるだろう」(同氏)

 Sunが将来、Windows OSを販売するかどうかという点に関しては、同社の姿勢は一貫している。Sunは最近、Microsoftと20億ドルという歴史的取引をしたが、同社は依然として競合OSを販売する計画はないとしている。「われわれがWindowsを販売することはあり得ないと思う。これだけははっきりさせておこう――彼らは今でも競争相手だということだ」(シュワルツ氏)

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