オープンソース移行でコスト削減に成功――Weather.comの場合 (2/2)
ソフトをTomcatに、サーバをIntelベースの一般的なものに乗り換えたことで、Weather.comはサーバ性能を手早く、そして比較的安く増強できるようになった。アプリケーション開発部門のディレクター、ティム・ボルザー氏は「とても単純な当社のアーキテクチャは、さらに多くのマシンを買って、その上にWebサーバソフトを入れることで拡張できる。マシンを12台増やせば性能が30%増すため、費用対効果がずっと高い。IBMに(WebSphereライセンス料の)小切手を切る必要はなく、資産を割り当てる上でかなりの柔軟性をもたらしている」と説明する。
「普通の日では、デスクトップアプリケーションのためだけに(WebサイトのメインのOracleデータベースへ)データベースコールを3000万回行う。Tomcatとオープンソースソフトでそれに対処できるのは、インフラにそれだけの性能があるからだ。サーバすべてが標準化されて構築されているので、均一に拡張できる。デスクトップアプリケーションのダウンロード件数が増えるのに合わせて性能を向上させる時には、新しい標準的なマシンを加えれば、性能が拡張される」(アグロノウ氏)
Weather.comは全体で、純粋なWebサイト用サーバ75台、デスクトップ製品支援用サーバ12台、そのほかの要件に対応するサーバ20台を擁している。開発・テスト用サーバも数十台抱え、サーバの総数は約180台だ。
サポートの優劣は?
ボルザー氏によると、Weather.comのソフト開発者も満足しているという。「われわれがオープンソースで気に入っている点の1つに、中身をのぞいて見られるということがある。商用ソフトでは、脆弱性が見つかり公開されると、ベンダーに修正を任せることになる。しかしオープンソースなら、オープンソースコミュニティーか自分自身でセキュリティホールをふさぐことができる。技術系の人間は本質的に疑り深いため、実際のコードに触れられる余地が大きいほど、安心感を覚え、安全だと思う人もいる。逆効果になることはない」
Baroudi BloorのITアナリスト、ロビン・ブロア氏は、オープンソースコミュニティーから高い水準のサポートを受けられるのはよくあることだと話す。Apache、Linux、Tomcatなど、ブロア氏が“フラグシップ”と呼ぶオープンソース製品ではなおさらだという。
「製品開発に貢献する人たちは、オンラインコミュニティーにいて、継続的にサポートを手助けしている。サポートのことで話をした人が、非常に限定的な問題のために、ちょっとしたコードを書いてくれる可能性もある」(ブロア氏)
今後の展望として、アグロノウ氏はTomcatとWeather.com全体のサーバ環境をIntelのPentium 4プロセッサに最適化したいと話す。「最適化すれば、さらに高い性能を手にすることになるだろう。Tomcatの不満な点の1つがそれだ。最新世代のプロセッサ向けに最適化されているように見えないのだ。われわれはスピードを求めている。スピードはパフォーマンスを伸ばし、キャパシティを増やしてくれる」
またWeather.comは、OracleデータベースからオープンソースのMySQLに乗り換える取り組みも進めている。
オープンソースがWeather.comにとってメリットをもたらすことを、同社のITチームは明確に示したとアグロノウ氏。「資金を節約し、移行するたびに次の一手に対する自信が深まった」
そしてその自信はITスタッフを超えたところにまで影響を与えているという。「今では私が上級管理職にOracleからMySQLへの移行について話をすると、彼らは私に『本気か?』と問い詰めるのではなく、『いつだ?』と問うようになっている」
補足
Weather.com
移行目的:WebベースのITインフラを可能な限りオープンソースソフトと一般的なハードに移行して、コスト削減と効率向上を図る。
課題:経営陣が当初抱いていた疑念や、移行プロジェクトが実現不可能だと食ってかかるベンダーの声に対応し、世界で十指に入るサイトでオープンソースソフトをテスト・導入する。
成果:ITコストを3分の1削減。Webサイトの処理能力を30%向上。
Weatherの報告書:移行スケジュール
2000年3月:WebサイトのアーキテクチャとしてWebSphere 3.0.2とSun 420R Solarisサーバを導入。
同12月:Netscape EnterpriseをApacheに変更。
2001年6月:Linuxで動作するWebSphere 3.5に移行。
同7〜12月:Sun 420RサーバをIntelベースのIBM xServer 330に移行。
2002年1月3日:吹雪で1800万PVを記録し、パフォーマンの限界が見える。
同1月:開発者がTomcat Webアプリケーションサーバソフトの利用を始める。
同6月:新しい地方の天気ページが始動、WebSphereに代わってTomcatが使われる。
同9月:ハリケーン“イザドア”来襲で、約2500万PVを記録。
2004年1月:大規模な吹雪の中、性能を落とさずに5500万PVに対応する。
同1月:OracleデータベースからMySQLへの移行開始。
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