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2004/05/11 21:00 更新


進撃を開始するオープンソースアプリケーションサーバ

Jboss、Geronimo、そしてJonasという三つのオープンソースアプリケーションサーバが、年内にもJ2EE準拠の認定を取得する見込みだ。企業にとっての魅力がさらに高まることになる。

 Javaアプリケーションサーバの購入を考えている企業にとって、オープンソースソフトウェアを検討すべき理由がもうすぐ増えることになりそうだ。年末までに三つのオープンソースプロジェクトが、Sun MicrosystemsのエンタープライズJava仕様の準拠認定を受ける見込みなのだ。

 Apache Software Foundationの「Geronimo」プロジェクトおよび欧州のObjectWebコンソーシアムが推進する「Jonas」プロジェクトは最近、SunのJ2EE(Java 2, Enterprise Edition)1.4テストスイートを使って、それぞれの製品のテストを開始したと発表した。Geronimoでは8月までにJ2EE準拠認定を受けたいとしており、Jonasは今年下半期を目標にしている。

 一方、広く利用されているアプリケーションサーバを既に提供しているJBossは、Sunの互換性テストを完了する時期の見通しについては慎重な構えを示しているが、Forrester Researchの業界アナリストのジョン・ライマー副社長によると、同社は来月にも認定の取得を発表する可能性があるという。

 Geronimoはわずか9カ月前に立ち上げられたばかりのプロジェクトで、まだ未熟な段階にあるが、三つのプロジェクトの製品はいずれも、BEA SystemsやIBM、Oracleなどが販売している商用アプリケーションサーバに代わる低価格の選択肢を提供することを狙っている。ライマー氏によると、ユーザーは少なくとも、これらのオープンソース製品を、現在つき合っているベンダーとの値引き交渉の材料として利用できるという。

 ライマー氏は先月公表した調査メモの中で、「オープンソースのアプリケーションサーバは、J2EEアプリケーションサーバの市場における有力な競争勢力だ」と記している。

 既に数千社の有料顧客を抱えているJBossの例に見られるように、J2EE認定が企業でアプリケーションサーバが採用されるための必要条件ではない。しかしオープンソースモデルに対して今でも警戒心を抱いているIT幹部には、この認定がオープンソースプロジェクトの信用を高めるのに役立つ。

 またJ2EE仕様は、異なるJavaベンダーの製品の間で、ある程度の相互運用性を保証してくれる。ユーザーが特定のアプリケーションサーバ向けにアプリケーションを開発した後で、ほかのプラットフォームに乗り換えた場合でも、両方のプラットフォームがJ2EEに準拠していれば、移植に必要な作業量は比較的少なくて済む。

 これは、旅行会社National Leisure Group(NLG)にとって重要なポイントだ。同社は、顧客がWeb上で飛行機やホテル、レンタカーを予約できるようにするための新しいアプリケーションの開発を1年半前に開始した。当初、Java認定を受けたオープンソースアプリケーションサーバはなかったが、同社はJBossを選んだ。NLGで技術アーキテクチャを担当するディレクター、ジェイミー・キャッシュ氏によると、JBossがJ2EE仕様にほぼ準拠していることを知っていたからだという。

 「できるだけJ2EE仕様に近いものを使いたかった。そうすれば、最終段階で移植することになったとしても、大した作業にはならないからだ」とキャッシュ氏は話す。「J2EE認定があれば、企業はオープンソース製品の採用に対する抵抗が少なくなるだろう。これは、開発現場のレベルよりも重役レベルについて言えることだ」(同氏)

 オープンソースJavaプロジェクトが増えているのは偶然ではない。その背景には、Sunが昨年、互換性テストスイートのライセンス条件を変更し、オープンソースソフトウェアも認定対象としたことがある。さらに同社は、Apache Software FoundationやObjectWebなどの非営利団体に対しては、テストスイートを無償でライセンスした。JBossにはテストスイートの費用を支払うことが求められ、これがSunとの間で長期にわたる紛争につながった。JBossの認定が遅れているのも、それが理由のようだ。

 アナリストは、当分の間、顧客が一斉に商用ベンダー離れを起こすことはないとみている。既存のソフトウェアへの投資を無駄にできないということに加え、多くのIT幹部が相変わらずオープンソースに対して警戒心を抱いているからだ。彼らは、サポートが得られるのかといった懸念や、既存の大手ベンダーの後ろ盾がないソフトウェアの長期的存続可能性に対する不安を抱いている、とアナリストは指摘する。

 Current Analysisの主席アナリスト、ショーン・ウィレット氏によると、IBMやBEAなどの大手ベンダーの製品は現場で実績があり、成熟度も高いという。また、大手ベンダー各社は、使いやすい開発ツールやポータル作成/アプリケーション連携用ソフトウェアなどを含めた総合的なプラットフォーム製品を提供することによって差別化を図ってきた。「これらのベンダーは今になって突然、クラスタリングなどの機能を持ち出してきたのではない。何年も前からこれらの機能の開発を進めてきたのだ」とウィレット氏は指摘する。

 対照的に、Geronimoプロジェクトは、開発者向けの最初のコードを先月リリースしたばかりだ。これは、既存の4種類のオープンソースのJavaサーバコンポーネントを統合するJ2EEコンテナである。Geronimoのコア開発チームのメンバーであるガイアー・マグナッソン氏によると、このリリースは最終製品の感触を開発者に伝えることを目的としたもので、実際に使えるものはまだできていないという。

 しかし、コスト節減の可能性は大きな魅力だ。キャッシュ氏によると、NLGが旅行アプリケーションでJBossを選んだのは、同社が開発するアプリケーションにとってBEAのソフトウェアは「あまりにも高価」だったというのが理由だ。「大量のトランザクションを処理するために、アプリケーションを複数のプロセッサ上で動作させる必要があったが、費用効果的にそれが可能なのはJBossしかなかった」と同氏は話す。

 ライマー氏は調査メモの中で、「JBossはオープンソースアプリケーションサーバ分野の最有力プレーヤーであり、今後、大きな成長が期待される」と述べている。アトランタに本拠を置く同社は5月10日、先ごろ終了した資金調達ラウンドで、Intelを含む出資企業や投資家から総額1000万ドルの資金を確保したと発表した。

 ライマー氏は、Jonasを第2位にランクしている。Geronimoについては、プロジェクトを立ち上げて日が浅いこともあり「未知数」としている。同氏によると、三つのプロジェクトはいずれも経験豊富で有能なプログラマーを擁しており、Geronimoの場合は、高い評価を受けているApacheの名前が後ろに付いていることも、同プロジェクトに有利に作用するという。

 オープンソースのアプリケーションサーバの採用に抵抗を感じることが最も少ないのは、熟練したJavaプログラマーを抱え、自社のWebアーキテクチャをコントロールできる企業だ、とライマー氏は述べている。ベンダーを選んだら、後はベンダーの言いなりになる企業もあれば、Webアーキテクチャを自ら決定した上で「適切な製品をそこに当てはめていく」企業もあるという。

 「後者のタイプの企業はオープンソースを好む傾向にある。製品が細かく限定されているからだ。要するにコンポーネントなのである。一方、WebLogicやWebSphereなどのアプリケーションサーバを導入した場合、必要としないような機能までたくさん付いてくる。IBMとBEAの製品は『肥大化したソフトウェア』だと言う人もいる」(ライマー氏)

 Current Analysisのウィレット氏も同意見だ。「オープンソースに関心があるのは、経費の節約に熱心で、これらの製品を扱うだけの技術的ノウハウを持っているというタイプの企業だ。というのも、私が知っているオープンソース製品の中には、使いやすさを重視したものがないからだ」と同氏は話す。

 三つのオープンソースプロジェクトがJ2EE認定を受ける時期は定かではない。認定には数千項目に及ぶテストを実施することが求められる。一方、商用ベンダー各社は、オープンソースの脅威をくい止める対策を講じ始めている。Sunは最近、開発者の間で人気がある自社のアプリケーションサーバの機能を絞り込んだ無償版をリリースした。

 「結果はともかく、オープンソース製品を検討している企業は、本気で配備を考えていることをベンダーに知らせることによって価格交渉を有利に進められるというメリットを生かすべきだ」とライマー氏は言う。

 「結局、オープンソース製品は価格への圧力を強めることになり、それがBEAとIBMに与える最大の影響だと言えそうだ」(同氏)

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