IDG ニュース
2004/05/14 12:40 更新


Ciscoの次世代ルータを待ち受ける課題

間もなく登場のCiscoの次世代ルータ「HFR」に関して、規格外のラックやOSの安定化に時間がかかるといった問題が指摘されている。これは同社にとって打撃になるかもしれない。(IDG)

 Cisco Systemsの次世代コアルータが市場で直面しそうな課題をめぐって憶測が飛び交う中、同社は依然として固く口を閉ざしている。

 以前から登場が待たれていたCiscoの「HFR」(Huge Fast Router)は、5月25日に同製品用の新しいモジュラーOSとともに発表される予定だ(5月13日の記事参照)。

 Ciscoは6月のSupercommショウでこの製品を披露することを認めた以外は詳細を明かそうとしないが、HFRは少なくとも、フルラックで640Gbpsのスイッチングキャパシティをサポートする見込みだ。

 しかしHFRの2年前には、ライバルのJuniper Networksが640Gbpsハーフラックシステムの出荷を開始している。さらにJuniperは間もなく、自社のルータインターコネクト「TX」を試験導入する顧客を発表することで、掛け金を釣り上げることになる。TXは、複数の640Gbps T640ルータをクラスタ化して、マルチテラビットシステムを構築する。

 明らかに投入時期が遅いことに加え、HFRのラック要件にも問題がある。情報筋によれば、同製品は標準の19インチ幅ではなく、規格外の23インチ幅のラックが必要になるという。

 HFRは電話局で大きなスペースを占めることになり、Ciscoのほかのルータや他社のルータよりも多少費用がかかり、導入に混乱が生じるかもしれない。

 「これはNEBS準拠ではない」とコンサルティング会社Communications Network Architectsのフランク・ズベック氏。NEBSは、電話局向けの機器に対して定められた空間・環境要件。「私が話を聞いた人は皆、(NEBS準拠が)必須だと言っている。これは避けられない。これに準拠しなくては、(電話局に)置いてもらえない」

 HFRの新たなOSも、導入を思いとどまらせるかもしれない。HFRとその新しいモジュラーOSは、Sprint、Deutsche Telekomなど明らかにJuniperの得意先の企業、アジアの大手通信会社(おそらくNTT)でテストが実施中だという憶測が流れている。

 Pacific Growth Equitiesのアナリスト、エリック・サピガー氏によるHFRに関する報告や、ほかの情報筋によると、実務利用における新OSの信頼性が証明されるまでには1年、おそらくは2年もかかるという。これにより、通信会社がOSの安定化を待てば、HFRの販売サイクルは延びるかもしれないとサピガー氏は述べている。

 一部のアナリストは、こうした安定化のプロセスはOSでは標準的なものであり、Ciscoに限った話ではないと考えている。

 「ソフトになじむのに1〜2年かかるのは無理もないことだ。AviciとAT&Tも同じことを経験した。Juniperとその顧客もだ」とCurrent Analysisのジョー・マクガービィ氏。

 しかし、CiscoはOSの問題でわれとわが身を損なうことになるかもしれない。同社はHFR OSを、通信会社の環境に合わせて最適化した「専用」OSとして販売するだろうが、前の世代のOS「IOS」は、通信会社のネットワークでかなりの導入基盤を築いている。

 「通信会社はこの数年の間、何を導入してきただろうか?」と問いかけるのはInfonetics Researchのアナリスト、ケビン・ミッチェル氏。「そこには、Ciscoが進むには危険な道がある。結局、自社の以前の製品を打ちのめすことになる可能性があるのだから」

 通信会社のIOSへの需要が弱まり、さらに各社が「専用」ソフトが安定するまで待った場合、Ciscoは2つの面で売上に打撃を受けるかもしれない。同社には耐えられないダブルパンチだ。

 同社のキャリア級ハイエンドルータの売上は、2〜4月期に前四半期から10%減少した。また同社はコアルータ市場の3分の2を占めているが、昨年10〜12月期にシェアを66%から62%に落とし、その一方でライバルJuniperのシェアは3%伸びて31%に達した(Dell'Oro Groupの調査による)。

 一部には、Ciscoの顧客はOSとラックの問題にもかかわらず、HFRを支持しているように感じられるとの見方もある。

 Sanford C. Bernsteinのアナリスト、ポール・サガワ氏は、Ciscoの2〜4月期決算に関する報告書で次のように述べている。「われわれはこの(2〜4月期の)売上減について、Juniperにシェアを奪われたからというよりも、主にCiscoの顧客がHFRコアルータ登場まで注文を控えているからだと考えている。(5〜7月期に)HFRの出荷が始まったら、すぐに市場シェアは回復するだろう」

 さらにコアルータの需要は上昇傾向にある。Dell'Oroは、今年はこの市場の成長率が、2003年の22%から31%に伸びると予測している。

 Ciscoはいつものように、次世代コアルータに課題――現実のものにせよ、憶測にせよ――があろうと、こうした需要を糧にするだろう。

 「こうした世代の移行により、ほかのベンダーにも顧客を獲得するチャンスは開かれている。Ciscoは顧客を管理し、確実に満足させることに非常に長けている。(同社は)この移行をどうやって進めるかに、かなり気を払うだろう」とInfoneticsのミッチェル氏は語る。

関連記事
▼シスコ、次世代ルータ「HFR」を間もなく発表へ
Cisco Systemsは、ネットワーク業界から期待されている次世代ルータ「HFR」を25日に開催するイベントで発表する予定だ。このルータに関する情報が出回り始めた。

▼極秘の次世代ルータ「HFR」について沈黙を守ったCisco

[IDG Japan]

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.