VMware製品のライセンスを提供する条件の変更による影響は、中堅・中小企業のIT部門にとって頭の痛い問題だ。人手不足に加えてVMware製品環境からの移行や運用のノウハウがない中で、クラウドへの移行は現実的なのだろうか。800社以上を支援してきた企業に聞いた。
VMwareを買収したBroadcomがVMware製品のポートフォリオとライセンス体系を大幅に変更したことは、大きな話題となった。これまで個別に調達できたVMware製品は規模に応じた複数のラインアップに集約され、提供形態はサブスクリプション型のみとなった。課金方式もCPUではなくコア数ベースとなる。
買収に伴い、デスクトップ仮想化ソリューション「VMware Horizon」が投資会社に売却されたことも今後もVMware製品を使いつづけて良いのかを不安視する声につながっている。
今まで買い切り型でVMware製品環境を利用し、集約率を高めてコスト削減に努めてきた中堅・中小企業にとって、ライセンス体系の変更による影響は大きな打撃になっている。
もちろんライセンス費用を捻出できれば今まで通りの環境を維持できるが、これを機にクラウドへ移行を検討する企業は多い。だが、システム改修や運用の見直し、長期的なIT施策との擦り合わせなど考慮すべき要素が多く、高度な技術的知識も不可欠だ。人手不足を課題とする中堅・中小企業のIT部門は重い選択に迫られている。
日本マイクロソフトの田口 帆乃香氏(パートナー事業本部 コーポレートソリューション統括本部 パートナーソリューション本部 パートナーソリューションマネージャー)によると「特に影響が大きいのが、一部の機能だけ買い切りで利用してきたユーザー」だ。
「個別ライセンスが廃止されてバンドル形態になり、不要な機能も併せて購入しなければならなくなりました。長くVMware製品環境を利用してきた企業も、中長期的なIT計画を見直すべきと考え始めています。それに伴って、『Microsoft Azure』への移行についての問い合わせが非常に増えています」
JBCCは、中堅・中小企業のAzure移行を支援するパートナーの一社だ。Azureを含めたクラウドへの移行支援を得意とするシステムインテグレーター(SIer)で、既に800社を超えるインフラ最適化支援の実績を持つ。
田口氏も「JBCCさまは従来のオンプレミスのビジネスもあることからVMware製品に関する情報の収集にも力を入れており、ライセンス変更が話題になった直後からセミナーなどでユーザーに新しい情報を提供し続けています。そこに寄せられた『お困り事』の声は私たちも大いに参考にしています」と、同社の取り組みの価値を説明する。
JBCCの伊藤充輝氏(ハイブリッドクラウド事業部 テクニカル推進本部)は、今回のライセンス変更が中堅・中小企業に与える影響を次のように述べる。
「今回のVMwareライセンス提供条件の変更に伴う影響をJBCC内で試算したところ、Broadcomの上位ライセンスの場合、旧Standardライセンスと比較して約8.7倍のコスト増が見込まれています。Broadcomの分類における『コマーシャルセグメント』(下位カテゴリー)のユーザーでも、約1.2倍の値上げと試算しています」
VMware製品環境のクラウド移行は「Azure VMware Solution」(AVS)もしくは「Azure IaaS」のどちらかを選択することになる。伊藤氏によれば小規模なサーバ集約環境であれば数百VM規模で利用するAVSではなく、コスト効果の観点からIaaSへの移行が適している。一方で高集約が見込める場合はAVSを選択することとなるが、いずれにせよリソースを最適化することで、クラウドコストを適正化していくプロセスが非常に重要だ。
JBCCは、クラウド移行のためのコンサルテーションサービスを無償で提供している。まず、リソース分析ツールを活用して本番稼働中のサーバのパフォーマンスなどを調査する。その情報を基にサイジングを実施して、最適なインスタンスやディスクタイプなどを決定する。「この過程を経ることで、現状のリソースのままAzureに移行した場合よりも平均で約30%のコスト削減が可能」(伊藤氏)という。
コスト最適化に当たっては、サイジングを見直すだけではなく、調達方式も重要な要素だ。特に常時稼働している仮想マシンでは、長期利用をコミットすることで割安に利用できる「Azure Reserved Instances」(RI、予約インスタンス)の割り当ても可能だ。調達方式の見直しによって、従量課金よりもインスタンスコストを約60%削減できるケースもある。
さらにMicrosoft Azureでは、Windowsサーバのクラウド移行で「Azureハイブリッド特典」(AHB)を活用できる。AHBはソフトウェアアシュアランス(SA)付きのWindows Server OSライセンスをAzure上に持ち込み、利用できる特典だ。新規に購入して持ち込む場合でも、他社クラウドに移行する場合よりライセンスコストを約30%節約できるため、他社クラウドと比較してコスト効果の高さがAzureの最大の特徴であるという。
「JBCCにご相談をいただくユーザーの中には、過去にクラウド移行を検討したものの、費用が高額になりクラウド移行を断念した経緯がある企業もいらっしゃいます。JBCCはそうした企業の相談も受けており、既存環境の調査を改めて実施することでコスト削減を実現し、クラウドへの移行を達成したケースも多数あります」(伊藤氏)
IaaSへの移行では、サーバのIPアドレスが移行前から変更になる点にも注意が必要だ。アプリケーションへの影響を予め把握しておかなければならない。
「IPアドレスの変更影響が大きいサーバに対してもAVSを使えば、L2延伸というVMwareの機能により既存のネットワークをクラウド上に拡張できるので、アプリケーションの改修を待たずにクラウドに移行できます。ただし、ベアメタルを使うので通常のIaaSよりも高価になります。集約率を上げるためのリソース精査のノウハウが必要なので、その点でもコンサルテーションサービスをご活用いただくのが良いと考えています」(伊藤氏)
移行のめどがついても、今までと異なる環境となると運用やITガバナンスの確保に不安が残る。JBCCは導入後も継続してコスト最適化を行い、“定着化”を支援する「EcoOneクラウド運用サービス」を提供している。設定や運用管理などの作業を代行し、人的ミスや属人化、不要なコスト増加といったリスクを軽減する。
「クラウドサービスの場合、米ドルベースで決済されるため円安による為替リスクがあります。クラウド移行後も継続してコスト管理に取り組むことが重要です。必要なリソースは常に変化するため、JBCCでは継続的にリソース分析を実施して、過剰なリソースが割り当たっていると想定される仮想マシンについては、スペックダウンや停止によるコスト削減提案する運用サービスを提供しています」(伊藤氏)
VMware製品環境からの移行についてMicrosoftもできる限りの移行パスを用意しているものの、個別の最適化には「パートナーの活躍が欠かせない」と田口氏は述べる。
「JBCCは、Microsoftのパートナー企業を対象としたアワードを4年連続で受賞しており、2024年はグローバルでも表彰されたトップレベルの事業者です。構築から運用まで全てのフェーズで豊富な実績があり、特に導入後もユーザーに伴走し続ける継続的な運用支援サービスは、Microsoft Azureの活用に当たって重要なポイントです」
JBCCのサポートを受けてMicrosoft Azureに移行し、コストの低減を果たした企業も増えている。あるユーザーは、2拠点のデータセンター間でVMware製品環境を冗長化していたが、2拠点分のデータセンターとオンプレミス機器を調達する必要がありコストが高額になっていた。これをMicrosoft Azureに移行してデータセンター費用を削減するとともに、保護リージョン側の仮想マシンを通常時は停止状態にすることで、Azure移行前と比較して約23%のコストを削減した。
VMware Horizonから「Azure Virtual Desktop」(AVD)への移行について、JBCCはコスト最適化のノウハウを蓄積している。AVDでは、利用時間の長い端末はRIで調達して、短時間しか利用しない端末は未使用時に停止するスケーリングプランを適用して従量課金で調達するなど、きめ細かくコントロールできる。RIと従量課金のどちらを選択するかについては、現行の利用方法や利用時間に応じて決定する必要があるため、用途ごとに丁寧な棚卸が重要だ。JBCCではAVD PoC環境の構築からPoCにて発生した課題解決まで無償でAVD PoC支援サービスを提供しており、PoCの過程でコストが最適化となる構成や調達方式の選定もサポートしている。
「これまでの実績と経験から、私たちは『コスト削減』『プロセス』『定着化』を重視しています。IT環境のクラウド移行を決断しやすくし、スムーズに移行して成功に導くためのキーポイントです。JBCCが提供するクラウド移行コンサルテーションサービスでは、キーポイントを踏まえて、お客さまのクラウド移行をサポートしています。」(伊藤氏)
AIサービスを強みの一つとするAzureにシステムやデータを集約しておけば、将来的にAI活用を検討する場合にもメリットは大きい。JBCCもAI活用の支援を強化して、有資格者を増やしている。
「JBCCでは『Data&AI活用診断ワークショップ』を提供しています。AIを活用したいが、何をすれば良いかわからないというユーザー向けに、お客さまの現状や実現したいビジネス、業務課題を一緒に整理して優先順位をつけ、AIを活用すればどう解決できるのかを提案します」(伊藤氏)
JBCCはクラウド移行に関する無償相談会を定期的に実施して、ワークショップ形式で検討の進め方やサービス選定のポイントなどを紹介している。次の3年、5年と中長期的なIT計画の中でクラウド移行やAI活用を検討しているならば、現状整理や計画検討の指針として役立つだろう。
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