事業部門がクイックにAIを活用するには? IT人材育成とデータ活用組織を伴走支援ベンダーに“丸投げ”しない

データ活用プロジェクトの推進に当たって、テーマ設定からツール選びや運用・保守、データ人材育成までの全てを自社でこなせる企業は少ない。プロの伴走支援を受けたニコンの事例から、データ活用プロジェクトでクイックに成果を出すためのポイントを学ぶ。

PR/ITmedia
» 2024年12月23日 10時00分 公開
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 「取りあえずデータを使ってみる」ではなく「ビジネスで確実に成果を出す」という目標に向けてデータ活用に取り組む企業が増えている。ビジネスに直接的なインパクトを与えるデータ活用を実践するためには、IT部門と事業部門の連携が欠かせない。

photo ジールの田畑知也氏

 しかし、データ活用の取り組みに十分な予算を割けなかったり、ITの知識やスキルが少ない事業部門とベンダーとの「橋渡し役」にIT部門が悩んだり、データ活用のためのツールを導入したものの使いこなせなかったりといった悩みを抱える企業は多い。

 データ活用の領域に「AI」という新しい要素が加わった今、テーマ設定から基盤の構築、運用保守、人材育成まで自社で遂行することの難易度はさらに上がったと言える。

 データプラットフォームの構築などを支援するジールの田畑知也氏(アプライドアナリティクス&インテリジェンスユニット シニアコンサルタント)は「ML(機械学習)を含むAIの活用に当たってどのように始めたらよいか分からない、現状の進め方やアクションで合っているのかに不安を覚える、データ活用の文化が定着しないといった課題を抱えている企業は多いです。これらの課題を解決できなければ、データ活用のプロジェクトが頓挫する可能性が高くなります」と語る。

 このような課題を解決する選択肢の一つが、プロによる支援だ。ニコンは、ジールの伴走支援によってAIを利用したデータ活用で成果を出すことに成功した。背景にはジールが重視する「スモールスタート」「クイックウィン」の実現があったという。

なぜスモールスタート、クイックウィンが重要なのか

 ジールは企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するデータ活用領域専門のプロ集団だ。30年間にわたるデータ活用支援で培ったナレッジを生かして、データ活用の企画やコンサルティングからデータ基盤の構想策定、製品選定、PoC(概念実証)、基盤構築、運用保守、MLを含むAI、教育や人材育成まで幅広いフェーズをサポートしている。

 ニコンは1917年の会社設立から100年以上の歴史で培った先進の光利用技術と精密技術に基づき、多彩な製品やサービス、ソリューションをグローバルに提供する光学機器メーカーだ。精密技術や加工技術、材料技術、画像処理技術、ソフトウェアとシステム技術という基礎技術に強みを持つ。

photo ニコンの西野峰之氏

 ニコン内でデータ活用の鍵を握り、事業部門とベンダーの「橋渡し役」を担うのが数理技術研究所(以下、数理研)だ。数理研は基礎技術をデジタルとデータの力で支援するというミッションを持っている。同部署に所属するニコンの西野峰之氏(先進技術開発本部 数理技術研究所 第三研究課 課長)は「数理技術に強い約50人のメンバーが複数の事業部門を横断的にサポートすることで、全社的なデータ活用の推進を目指しています」と数理研の役割を語る。

 ここ数年、全社を挙げてデータ活用を推進するニコン。事業部門から「業務課題をどうやって解決すればよいか分からない」という相談を受けた数理研は、データ活用の別プロジェクトを進めていたジールの協力を得ることにした。Databricksのデータ・インテリジェンス・プラットフォームでMLによる解析を行うために、サンプルデータを使って技術要素の検証を開始した。

 サンプルデータで検証した結果、Databricksを中心にデータを利用して課題を解決できる道筋が立った。そこで事業部門を巻き込んで実際のデータを使って検証した結果、ジールの支援を受けてDatabricksを実装することになった。

 この過程でジールが重視したのがスモールスタート、クイックウィンの実現だ。

 多くの企業と同様、ニコンは予算を確保するために社内で費用対効果を明確に示す必要があった。しかし、AIを利用したデータ活用という新しい取り組みの費用対効果を実施前に正確に見積もるのは難しい。効果の根拠を迅速に示して予算確保につなげるための手段がスモールスタートとクイックウィンだ。

photo スモールスタート、クイックウィンのロードマップ(出典:ジール提供資料)

 スモールスタート、クイックウィンのロードマップは、ニコンのケースでは「手探り期」「実装期」「改善期」の3つのフェーズで構成される。

 手探り期はアイデアを出しながら大きな効果を見込めそうな施策を検討する。実装期は事業部門のメンバーを対象に行ったアンケート結果を基に、効果が大きいものを優先して実装する。改善期は事業部門から要望を受けた改善やAIの精度向上に取り組む。

 事業部門のデータ活用は、事業部門の協力を得られなければプロジェクトの存続は難しい。スモールスタートとクイックウィンは、事業部門に協力してもらうためにも効果的だ。「正しい学習データが多いほど精度は上がりますが、500個作るのも大変なので精度と期間、工数のバランスがポイントです。事業部に対して、小刻みに効果を示すことで協力してもらいやすい環境を構築しました。効果を示すマイルストーンを定期的に設定することも重要です」(田畑氏)

AI活用を「素早く試す」メリットとは

 システムは、DatabricksとMicrosoft製品を組み合わせて構成した。

photo 最終的なシステム構成(出典:ジール提供資料)

 ユーザーの「Microsoft Excel」を使った、業務で利用するチェックリストの出力がトリガーとなり、アプリ構築ツール「Microsoft Power Apps」経由でDatabricksがチェックリストを受け取る。次に、Microsoftのデータ基盤「Azure Data Lake Storage」からExcelのチェックリストをDatabricksに読み込む。そして、MicrosoftのAIサービス「Azure OpenAI Service」でデータの要約などのタスクを実行し、結果をDatabricksに返してAIの出力情報を付加してAzure Data Lake Storageに出力し、「Microsoft SharePoint」でユーザーに提供するというフローだ。

 Databricksを採用するメリットについて、田畑氏は次のように語る。

 「データ活用に必要な機能がオールインワンでパッケージングされており、Databricksであれば検証を効率化できます。余計なツールやサービスが増えないのでネットワークセキュリティの追加設定が不要なこと、MLライフサイクルのためのプラットフォーム『MLflow』でのAIモデルの管理、学習と推論のログを自動取得することによる効率化がモデルの精度向上において魅力的で、AI活用を素早く試すための最適解だと考えています」

事業部門とベンダーの「共通言語」がない問題をどう解決した?

 IT知識が十分にない事業部門とベンダーとのやりとりに悩む企業は多い。ニコンの事業部門とジールの間にも「共通言語」がなく、当初は課題の認識や技術の理解に時間がかかった。

 ここで、事業部門とジールとの「橋渡し役」になったのが数理研だ。数理研は業務知識に精通しているのはもちろん、西野氏のようなAIのスキルを持ったデータサイエンティストが在籍している。

 「AIアプリを本番運用までに持っていくには、業務に関する知識、AIのスキル、システム開発スキルの3つが必要です。知識や経験を補完し合う体制によって、プロジェクトを円滑に進めることができました」(田畑氏)

photo プロジェクトにおける数理研の役割(出典:ジール提供資料)

 こうしてニコンの事業部門におけるAIを利用したデータ活用プロジェクトは軌道に乗り始めた。数理研が事業部門の従業員を対象に実施した「LLM(大規模言語モデル)を活用した業務効率化に関するアンケート調査」によると、79%が「効果を実感している」と回答したという。反響として「以前よりチェックがしやすくなって負荷が下がる」といった声も寄せられている。

IT人材やデータ人材の育成も支援

 IT人材やデータ人材の不足は慢性化している。ニコンのような、AIの知識を持ったデータサイエンティストが在籍しているケースばかりではない。だからといって、システム開発や基盤の運用を含めてベンダーに「丸投げ」していたのでは自社に知識やスキルが蓄積されずベンダーに頼るしかない状況が続いてしまう。

 そこでジールが提案するのが、ベンダーからの内製化を見据えたスキルトランスファーだ。ニコンもデータ活用やAI技術を利用した課題解決を自社で行えるようにスキルトランスファーを実施している。

 多くの企業は、予算や人員の関係で育成する人材をある程度絞り込む必要があるだろう。「データ人材向き」の素質として西野氏は「『これで本当に良いのか』を疑えることが重要です。必要であれば修正をいとわず、データと真摯(しんし)に向き合える人が向いていると思います」と語る。

 AIやデータ分析を学ぶ環境は年々整備されており、学習のハードルは以前よりも下がっているという。「データ人材が社内におらず採用も難しいからといって、データ活用を諦めることはありません。将来的には今以上にデータ人材が求められることを見据えてデータ活用のプロジェクトを良い機会ととらえ、今のうちにベンダーのサポートを受けながら自社の人材を、スキルトランスファーによって育てていくべきです」(田畑氏)

今後の取り組みは?

 今回のプロジェクトでDatabricksによる開発の最適化を実現できたことから、ニコンはジールとレファレンスモデルを作って別の事業部へ横展開し、MLOpsによる運用のアップデートを進める。「ジールと共に開発ナレッジをレファレンスモデルに還元する取り組みを行っています。レファレンスモデルを各プロジェクトに展開することで、開発運用コストのさらなる削減と実装の高速化を期待できます」(西野氏)

 今回のプロジェクトを通じたジールとの関係について、西野氏は次のように振り返る。

 「当社はジールを単なるベンダーだとは考えていません。構築だけでおしまいではなく、当社が目指す『ベンダーに“丸投げ”しない』プロジェクトの実現と内製化に向け、スキルトランスファーをしながら共に伴走してくれるパートナーと考えています。システムに関する知識が少ないわれわれは、DatabricksだけでなくMicrosoftの製品も熟知しているジールと一緒に取り組むことで、AIを利用したデータ活用と人材育成の最適解を見つけられました」

 データ活用による成果の創出や事業部門との調整に課題を感じている企業は、ジールに相談してみてはどうだろうか。

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提供:株式会社ジール
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年1月12日