「“経験と勘頼り”を脱せない」「データはあるのに活用できない」を解決 生成AIを活用した伴走支援とはAIで日本の製造業を元気に

製造業は設備の老朽化や従業員の高齢化、進まないデジタル化などの「困り事」が山積している。長年解決できなかったこれらの課題が、AI技術の進展によって解消できる可能性が見えてきた。「デジタル化さえ遅れているうちの会社にAI導入は無理だ」と嘆く前に、プロの支援を検討してみてはどうだろう。

PR/ITmedia
» 2025年03月04日 10時00分 公開
PR

 かつて「日本のお家芸」といわれた製造業が国際競争力を低下させている。特に遅れを指摘されているのがデジタル化やデータ活用だ。現場のやりとりや情報管理に紙の書類や手書きのメモなどを使っている企業もいまだに存在する。熟練技術を持ったベテラン従業員の高齢化によって、データ化されていないノウハウを引き継げないといった問題もある。

 このような現状を打開するために、企業が何もしてこなかったわけではない。約10年前から本格化したIoTの利用によって、現場にはさまざまなデータが蓄積されてきた。しかし「集めたデータの使い道が分からない」「データ活用を試行錯誤しても効果が出なかった」という企業は多い。

 これまで生かせなかったデータをAIで活用するためにはどうすればいいのか。製造現場のDXを多数支援している専門家に、AI活用の方法とプロの支援を受けるメリットを聞いた。

AIは国内製造業の課題を解決できるのか?

photo アバナードの橋本靖彦氏

 現場で収集したデータの活用が進まない背景について、MicrosoftとAccentureのジョイントベンチャーであるアバナードの橋本靖彦氏(エグゼクティブ インダストリーX本部 統括本部長)は次のように語る。

 「当社はこれまで製造業の現場を見てきましたが、IoT機器からのデータをはじめとするデータはそれなりに蓄積されているという印象です。しかしそれをどう使うべきか分からず、『データはあるが手段がない』という状況になっていると感じています」

 なぜそうなるのか。「目的を定めてデータを集めていない点が大きいとみています」と橋本氏は指摘する。そのため、特定の課題を解決しようとすると必要なデータが足りないという事態が起きてしまうのだ。

 日本の製造業では従業員の高齢化が進んでいる。「1990年代のバブル崩壊以降に採用を抑制したことで50代以上の働き手が多く、それ以下の世代は非常に少ないというゆがみが生じています。ベテランのノウハウを引き継ぐ従業員が少ないため、10年後はどうなるのかという危機感を持つ企業が多いですね。ベテランの技術を継承するためにも、今のうちにノウハウをデータ化したいと真剣に考える企業が増えています」

製造業を支援する専門部隊「インダストリーX」の設立

 多くの製造企業がAIを導入する目的は現場作業の効率化だ。ベテランの作業は無駄がなく精度が高いため、業務効率が良く製品の品質向上にもつながる。それを再現できれば、経験が浅い若手が作業しても同じような結果を得られる。

 ベテランの知見はトラブル時の対応にも生かされると橋本氏は言う。「現場で問題が起きたとき、ベテランであれば原因をすぐに特定して早期に復旧できます。逆に経験の浅い従業員はどうしても問題の切り分けや絞り込みに時間がかかり、業務が停滞して機会損失を生んでしまいます。事業継続のためにもベテランの知見を継承することは喫緊の課題です」

 こうした状況を受け、アバナードが2024年6月に発足させたのが製造業のデジタル化支援に特化した組織「インダストリーX」だ。

 「これまで当社は全業種に対してデジタルソリューションの導入をサポートしてきました。Microsoft製品を軸にしたサービスを提供してきましたが、各業界に特化したソリューションをお届けする必要があることが分かってきました。その第1弾として、立ち上げた組織がインダストリーXです」

生成AIでベテランの「暗黙知」を「形式知」へ

 インダストリーXが特に注力する支援が生成AIの活用だ。AIによって、ベテランのノウハウのような「暗黙知」を「形式知」化できると橋本氏は説明する。

 「現場には過去のトラブルを記録した報告書が保管されており、問題の原因が記載された資料は宝の山です。しかし既存のシステムでは不要な情報ばかり出てきて、欲しい情報をすぐには引き出せないというケースが多くありました。ここに生成AIを使ったシステムを組み込むことで、目的の情報にすぐたどり着けるようになります」

 生成AIによって、埋もれていた暗黙知を企業の資産として活用できる可能性が見えてきた。

 暗黙知の形式知化は、古くから課題だった。しかしベテランが自身のノウハウに価値を感じていなかったり、言語化することが難しかったりすることがある。「いやいや、私に大したノウハウはありませんよ」と言って、ヒアリングが進まないケースも見られる。

 生成AIによる突破口はここにも存在する。橋本氏によると、暗黙知を生成AIに学習させるために大量のデータが必要というわけではないという。

 「『ノウハウを全て話してください』とベテラン従業員に言っても、求める情報が全て出てくるわけではありません。しかしベテランが話した断片的な情報を生成AIに学習させれば、関連するノウハウを大量に作り出せます。AIが生成した内容をベテランにチェックしてもらい、『確かにこの通りに作業しています』と確認が取れたものだけを採用します。この手順を繰り返すことで、大量のノウハウを形式化できるだけでなくAIの学習が進展して未知のトラブルを防止する方法を提案できるようになります」

 生成AIで限られた暗黙知を増殖させて確認し、それをAIに学習させてさらに精度を高めていく仕組みは自動車の自動運転技術でも活用されている。

生成AIによってタイヤの品質を維持する海外大手タイヤメーカー

 こうした生成AIの活用は既に効果を発揮し始めている。海外では大手タイヤメーカーの事例がある。

 「AIによる分析で気温や湿度などの環境変化に対応してタイヤの品質を維持するシステムを構築しました。タイヤを作るにはゴムをはじめとする材料を配合する工程があります。これまで製品の歩留まり向上は、配合する装置の設定作業を行うベテランの経験や勘に頼ってきましたが、データを基にしたAIの提案によって再現性を持たせることに成功しました」

 インダストリーXが製造業に提供する価値について、橋本氏は次のように説明する。

 「MicrosoftとAccentureのジョイントベンチャーとして誕生した当社は、Microsoft製品、特にAIの実装に強みがあります。経営層やIT部門だけでなく、製造現場とも協調して課題解決に取り組んでいるのも特徴です」

 2000年の設立以降、ITシステムの導入や運用を伴走支援してきた同社は、製造業をはじめ各業界における成功事例の知見を豊富に持つ。

 ただし、製造業における課題は標準的なシステムの提案や同業他社の成功例に基づいた提案だけでは解決が難しいというのが橋本氏の見解だ。それぞれ経営環境はもちろん利用している装置や蓄積しているデータも異なるため、個社の違いを踏まえて課題の解決に取り組むことになる。

 「顧客は現場の課題を誰よりも知っています。われわれは多くの企業で培った課題解決の経験があります。両者で対話をしながら解決後の姿を定め、ゴールに向かうことが必要です」

 課題をあぶり出した後はAI活用のためのデータを整備し、約3カ月でシステムを稼働させるケースが標準的だ。「スモールスタートで始めて最初のゴールを目指します。AIをはじめ技術の進展が目覚ましい今、導入にこれ以上の時間をかけるのは望ましくありません」

 スモールスタートの取り組みは、ベテランの形式化したノウハウを基にAIがトラブルの解決方法を提案するシステムの構築や検索システムの精度向上が多い。特に前者は「現場で非常に喜んでいただけます」という。

現場課題から着手し、経営課題の解決へ

 取り組みを成功に導くポイントについて橋本氏は「自社が本当に解決したい課題は何かを適切に見極めること」だと言う。

 現場からは「歩留まりを上げたい」「トラブルの解決時間を短縮したい」といった声が上がる一方、経営者からは異なる課題が寄せられるケースが多いそうだ。

 「製造業の経営者は世界各地の拠点を効率的に稼働させ、サプライチェーン全体の俊敏性やレジリエンスを高めたいと考えています。そのために必要なのが現場のデータを集めてデジタル基盤に再現する『デジタルツイン』です。デジタルツインでAIによる予測を実行し、予測に基づく計画を現場にフィードバックすることで製造能力の最適化を図り、利益の最大化につなげられます」

 デジタルツインが注目されたころは、明確な目的を定めずにトップダウンで各工場のデータを収集してデジタルツインを構築したものの、設備をモニタリングするばかりで構築したメリットを見いだせないケースもあった。

 アバナードはスモールスタートで取り組みを拡大することで、最終的に全社のデジタルツインを完成させるボトムアップのアプローチを顧客に薦めている。「ポイントはあくまで顧客が何をしたいかです」と橋本氏は繰り返す。

 今後の展望について日本の製造業の未来を絡めながら、橋本氏は期待を込めて語る。

 「戦後、日本の製造業は世界をリードするポジションを獲得しました。その後設備は老朽化し、欧米諸国や中国、台湾など最新の設備を持つ国々に劣勢を強いられています。当社はAIを活用することで、長く使ってきた設備の良さを生かしながらものづくりの課題を解決できると考えています。諦めていた課題もAIを使えば解決できる可能性が広がっています。『うちはデジタル化が遅れているから、AI活用なんて夢のまた夢だ』などと思う必要はありません。一度、インダストリーXに困り事を聞かせてください」

photo

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:アバナード株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年3月27日