災害リスクの対策は“平時”が必須 国内外場所を問わずにサプライチェーンを守って経営リスクを最小化止まらないサプライチェーンの作り方

自然災害や地政学リスクが企業のサプライチェーンを脅かしている。被害を最小限に抑えるにはリスクの可視化と事前対策が欠かせない。国内とグローバルのサプライチェーンリスクを事前に可視化し、品目、拠点レベルでの迅速な対応を可能にするSaaSとは。

PR/ITmedia
» 2025年03月12日 10時00分 公開
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 企業のサプライチェーンを取り巻くリスクはかつてないほど深刻になっている。自然災害や地政学的な問題、サイバー攻撃の脅威、人権問題など、企業が直面するリスクは複雑化し、その影響範囲も拡大の一途をたどっている。

 日本企業が避けられないリスクの一つが自然災害による影響だ。気象庁の統計によると、1時間に50ミリ以上の雨が降る回数は、1976〜1985年は年平均174回だったが、2008〜2017年は平均238回へと約1.4倍に増加した。水害による被害も激増しており、2008〜2018年の10年間で約2.6倍に増えている。

 さらに、首都直下地震(マグニチュード7で30年以内の発生確率が70%程度)や南海トラフ地震(マグニチュード8〜9で30年以内発生確率が70〜80%)といった、大規模地震にも常に警戒が必要な状況だ。

多層化するサプライチェーンの可視化が困難に

 より深刻な問題は、多くの企業がこれらのリスクを十分に把握できていない点にある。富士通の楢村孝太氏(クロスインダストリーソリューション事業本部 Digital Shifts DSCM推進室)は、サプライチェーン管理を巡る問題をこう指摘する。

 「企業のサプライチェーンは二次サプライヤー、三次サプライヤーだけでなく、さらに深い階層にまで広がっています。そのどこかで問題が発生しただけで最終製品の供給停止につながるリスクがあります。しかし、多くの企業は直接取引のあるサプライヤーのみの情報把握にとどまっています」

ALT 富士通の楢村孝太氏

 サプライチェーン全体のリスクを把握できていない状況で災害が起こると、初動が遅れて影響範囲の特定に時間がかかってしまう。代替部品の確保が後手に回れば調達コストの上昇を招くだけでなく、最悪の場合は製品供給が停止して売り上げが急減するリスクにもさらされる。

 サプライチェーンのリスク管理は企業の事業継続に直結する重要課題となっている。これらに対処するには、サプライヤーの協力を得てサプライチェーン全体のリスクを平時に可視化して把握し、有事の迅速な対応を可能にする仕組みを構築することが不可欠だ。

国内、グローバルのリスクを品目、拠点ごとに可視化

 サプライチェーンリスクの課題解決を支援するために、富士通はリスクマネジメントオファリングをSaaSで提供している。

 富士通のリスクマネジメントオファリングは、サプライチェーンの構造と外部リスクの情報を統合し、拠点と品目の各リスクを可視化する。有事と平時のリスク管理を支援し、レジリエントなサプライチェーン構築に必要な情報を提供することでサプライチェーン管理の効率化と高度化に貢献する。

ALT リスクマネジメントオファリングの全体像(提供:富士通)

 有事に対処するのが、国内の自然災害情報とSNSの情報を組み合わせた、リアルタイムなリスク把握機能だ。

 地震が起きた場合、リスクマネジメントオファリングの「災害気象情報」タブでその状況を閲覧できる。地図に震度が色分けされて表示され、登録している工場などの拠点は丸いアイコンで示される。拠点のアイコンは「被害を受けていれば赤いバツ印」で表示されるなど、被害の範囲と状況が一目で確認可能だ。

ALT 有事のサプライチェーンの状況がビジュアライズされる(提供:富士通)

 全拠点における「被害あり」「被害なし」「被害未確認」「災害範囲外」の数や被害に遭った拠点の「未復旧」「復旧済み」の数はダッシュボードで表示されており、全容を把握できる。

 浸水・外水氾濫時は、1キロメッシュ単位で警戒レベルを表示する。この精緻な情報提供によって拠点の警戒レベルをピンポイントで判断できる。都道府県や市区町村単位の情報だけでは大まかな範囲の様子しか分からないが、このオファリングならばより効率的な状況把握が可能だ。

 登録拠点に被災の可能性がある場合は自動でアラートメールが発報され、被害状況の確認を促す。確認後、自社の拠点やサプライヤーの担当者が状況を入力することで、関係者全員がタイムリーに最新の情報を把握できる。これによって影響を最小限に抑えるための代替仕入れ先の確保や早期出荷、迂回(うかい)輸送などの対策につなげられる。

 富士通のリスクマネジメントオファリングは、製品の構成図や部品の親子関係をサプライチェーンのツリー図で閲覧することもできる。二次サプライヤー以降の問題が自社製品の生産にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを素早く特定するといったことが可能だ。

 各拠点の状況把握にはSNS情報も活用している。火災や重大事故はもちろん、クーデターなどの政治的混乱やデモ活動、インフラ障害など、幅広いリスク情報を国内、海外問わずSNSから収集する。拠点の周辺で同じカテゴリーの投稿が一定数を超えるとアラートを発報する。

 「SNSに投稿された動画も閲覧できるため、TVのニュース番組などよりも生々しい情報がリアルタイムで取得でき、拠点の近くで何が起きているのかを具体的に把握できます」

平時のリスク可視化で有事の迅速な対応を可能に

 平時の施策としては、登録した拠点の立地に関する詳細なリスク評価レポートを提供する。これは専門機関による詳細な分析に基づいており、地震や浸水、土砂災害、津波といった複数のリスクに対する脆弱(ぜいじゃく)性を総合的に評価するものだ。自治体のハザードマップを確認するだけでは分かりにくいリスク情報をピンポイントで把握できる。各拠点の災害リスクへの対策状況を入力して一覧表示することも可能だ。

 「リスク評価レポートやリスク対策状況の情報を活用していただくことで、根拠を持って自社のBCP施策の推進やサプライヤーとの協議ができます。お客さまにもこの点を高く評価していただいています」

 独自の補償サービスも実現している。浸水や外水氾濫で警戒レベル4または5のアラートがリスクマネジメントオファリングから発報された際に、サプライチェーンの途絶を回避するために要した追加費用(貨物の先出しや迂回輸送によって発生した費用)を、1事故500万円を限度に補償する。楢村氏は「SaaSだけでなく補償も含めたリスク管理サービスになっているのが特徴です」と話す。

 リスクマネジメントオファリングのインフラには「Microsoft Azure」(以下、Azure)を採用している。富士通はMicrosoftと協力し、アーキテクチャの設計から性能改善、運用管理までの一連のプロセスを綿密な協業体制の下で進めてきた。

 「当社のエンジニアがAzureの開発についてMicrosoftからトレーニングを受け、開発期間の短縮や運用コストの削減を実現できました。性能の改善や課題解決が必要になった際も、Microsoftの支援によってスピーディーに対応することができました」

 今後は、Microsoftの生成AIサービス「Azure OpenAI Service」「Microsoft Copilot」などを活用し、サービスの高度化を目指す予定だ。

サプライチェーン強靭(きょうじん)化への道筋

 富士通のリスクマネジメントオファリングはSaaSであるため導入のハードルが低く、準備から利用開始まで最短2週間で完了するという。データの登録についても柔軟な対応が可能だ。まずは自社だけで始めて、その後一次取引先に協力を依頼し、さらに二次、三次取引先へと段階的に見える化を促進することもできる。

 富士通自身もリスクマネジメントオファリングに自社サプライヤーの情報を登録して運用している。まだ大きな災害は発生していないが、シミュレーションでは発災から顧客への影響説明までにかかる時間が、大幅に短縮できることが分かっている。製造拠点や品目、災害情報を統合管理することで発災時の初動が大幅に効率化するからだ。また、今後はサプライチェーンのプランニング業務との連携も進め、生産計画や受注オーダーへの影響も迅速に把握できるようにする。従来の3週間から約4日へ短縮できる見込みだ。

ALT リスクマネジメントとプランニングの連携イメージ (提供:富士通)

 「自然災害をはじめとするサプライチェーンのリスクは、いつ顕在化するか分かりません。供給が止まることによる経済的ダメージは甚大ですので、事前にリスクの高いポイントを把握して未然に防ぐことが重要です。富士通のリスクマネジメントオファリングは事後対応だけではなく適切な予防に役立ち、企業の経済活動や利益を守るサービスです。これを活用し、サプライチェーン全体を巻き込んだレジリエントな体制の構築を進めていただきたいと思います」

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 今後はより包括的なサプライチェーン管理の実現を目指し、サプライチェーンプランニングシステムなどと連携する機能の開発も予定しているという。自然災害をはじめとするさまざまなリスクが増える中、SCRVはサプライチェーンのレジリエンス向上を支援する強力なツールとなるだろう。

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年6月16日

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