「ラボ契約」は未来指向のIT戦略 ナリコマグループは、なぜJASTを選んだのか目指すは内製基幹システムの強み最大化

「このシステムは他社が簡単にまねできるものではない」――。全国で給食サービスを手掛ける企業が基幹システムを刷新。事業の根幹を支えるとして独自開発にこだわる同社は、なぜ「ラボ契約」をSIerと結んだのだろうか。

PR/ITmedia
» 2025年07月28日 10時00分 公開
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 日本各地の病院や福祉施設で給食サービスを展開するナリコマグループ(以下、ナリコマ)が、献立や発注、栄養管理などを担う基幹業務システムを刷新した。

 同社は、給食サービス事業者には珍しくセントラルキッチン方式を採用。地域性や顧客の特性に合わせたきめ細かなメニュー構成でクックチル(完全調理済み食品)やニュークックチル(改良型クックチル)で給食サービスを提供している。そのサービス品質の核を握るのが、独自の基幹業務システムだ。

事業の核を担う基幹システムは「他社がまねできない」 独自開発にこだわる

photo ナリコマホールディングスの山田旗彦氏(執行役員 運営本部 本部長)

 基幹システム刷新を担当したナリコマホールディングスの山田旗彦氏は「経営陣の言葉を借りれば『基幹システムはグループ成長の源泉』です」と、同システムの重要性を説明する。

 今回刷新したのは、献立を管理するシステムや発注、栄養管理を担う厨房(ちゅうぼう)システムなどの4つだ。これまでも、約5年サイクルで20年以上にわたってアップデートしてきた。これらの基幹システムは、同社のビジネスモデルそのものを落とし込んだものであり、同社の競争力の柱となっていることから独自開発にこだわっている。

 「セントラルキッチンをベースにした独自のビジネスモデルを最大限に生かすには、基幹システムの力を最大化することが重要で、それ故に独自開発を重視しています。私たちの基幹業務システムは他社が簡単にまねできるものではありません」

 ナリコマの給食サービスは、全国6カ所のセントラルキッチンで調理したクックチルを自社配送センターから施設に毎日届ける仕組みだ。病院食や介護食において普通食、ソフト食、ゼリー食などバリエーション豊富な献立を提供しつつ、人員不足やシフト改善などの問題にも対応する。関西圏を中心にサービスを拡大しており、契約施設は2566に上る(2024年時点)。

photo ナリコマホールディングスの永田聖仁氏(運営統括部 情報本部 システム部 電算2課 課長)

 基幹システム刷新の背景には、事業拡大にシステムが追随しにくくなってきたという事情があった。ナリコマホールディングスの永田聖仁氏は次のように話す。

 「病院向けサービスを拡充させるという事業目標に応えられる基幹システムが必要でした。献立の拡充、データ量の増加に合わせた拡張性の向上、基幹システムそのものの性能や操作性の向上、環境が変化したときに自分たちで基幹システムを柔軟に変更できる構成などが求められていました」

 こうした事情から、新システムは独自開発を基本に、現在の課題を解決するだけでなく、将来的なビジネス課題にも対応できる方法を模索した。まず、新基幹システムの開発でタッグを組んだのが日本システム技術(以下、JAST)だ。

業務理解への真摯な姿勢と誠実な対応に新基幹システム構築でJASTを選択

 「JASTさんは、課題が解決するまで膝を突き合わせて話し合えます。『要件にないからできない』と言って終わりにせず、最善策を一緒に考えてくれる社風があります」――山田氏はJASTをこう評価する。

photo JASTの岡本義幸氏(西日本SI第二事業部 ソリューション二部長)

 JASTは、完全独立系プロバイダーとしてDX支援やSI、パッケージソフトウェアの導入支援、ビッグデータ分析などを展開するシステム会社だ。JASTの岡本義幸氏は、同社の強みについてこう話す。

 「お客さまの課題やニーズに応じてインフラから組み込みアプリケーション、経営システムまでさまざまなシステムの開発、提供を得意としています。独立系なので柔軟な提案が可能です。お客さまのことを深く知り、最後までやり切ることがJASTのモットーであり、企業DNAです」

 ナリコマとJASTは旧基幹システムの周辺システム開発をきっかけに取引が始まり、前回の基幹システムの構築と今回の基幹システムの刷新で協業した。JASTが顧客に寄り添いながらニーズを踏まえて手厚く対応する姿を間近で見て、次期基幹システム構築の中核を担うパートナーに選定した、と山田氏は言う。

 「エンジニアが高い技術力を持っていて、われわれの要望に真摯(しんし)に対応していました。システム開発は何よりも業務理解が重要ですが、分からないことを前のめりに質問していただける。顧客視点でシステムを考えるのはJASTさんの組織文化のようで、われわれも人情に厚い働きぶりを高く評価していました。提案内容も、技術面、予算面で妥当性がありました」(山田氏)

photo JASTの丸橋 徹氏(西日本SI第二事業部 ソリューション二部 二課 主事)

 実は前回の構築メンバーが別プロジェクトで稼働していたため、今回のプロジェクトメンバーにとって、給食サービスの基幹システム構築に携わるのは初めてだった。そのため、業務知識がほとんどない状態からのスタートだったという。丸橋 徹氏は次のように振り返る。

 「最初は社内用語も分からない状態でしたから、ナリコマ社内に私の席を設けていただき、分からないことをすぐに聞けるようにしつつ、私が吸収したものを開発チームに伝えて技術的なフィードバックを返すというサイクルを回していきました」

 プロジェクトメンバー同士のコミュニケーションにも注力。ナリコマの永田氏はJAST社内に自席を設けてもらい、約2カ月にわたってJASTに出社して給食業界の業務知識をレクチャーしたりJASTからシステム開発技術のレクチャーを受けたりした。

 「コロナ禍で出社制限がありましたが、双方向でのクイックな対応を実現するにはナリコマのメンバーがJASTさんの開発チームの近くにいるべきと考え、JASTさんへの常駐を打診しました。深いコミュニケーションによって業務を根幹から理解していただくことで、目標やロードマップを明確にできました」(永田氏)

業務とシステムのナレッジを掛け合わせて生まれた新システム

 基幹システム刷新プロジェクトは2021年にスタートし、2024年2月にカットオーバーした。

 システム面で特に大きな変更があったのは、データベースの構成とUI/UXの刷新だ。

 データベースは、データ量の増加に伴ってパフォーマンスが低下していた。今後、病院向けサービスを拡充することを踏まえてデータ項目やデータベース構成を見直し、データベースハードウェアのアップグレードを実施した。

 「どのような選択肢があり、ビジネス目標を実現するためには何が適しているのかを徹底的に議論しました。JASTさんから技術的なアドバイスを頂き、それを採用することでうまく課題を解決していきました」(永田氏)

photo ナリコマホールディングスの藤田 真奈美氏(運営統括部 情報本部 システム部 電算1課 主任)

 JASTに給食業務に関する知見が蓄積した後は、新システムに適した業務の在り方をアドバイスするシーンも増えたという。新システムのUI/UX検討や従業員の教育を担当したナリコマホールディングスの藤田 真奈美氏はこう話す。

 「献立を作成する操作の際に『どのような手順が効率的か』『ボタンや右クリック操作をどう活用すればよいか』など、業務内容を踏まえたアドバイスを頂きました。ナリコマの従業員よりもJASTのエンジニアの方が私たちの業務をよく知っているということもありましたね」

 一般的に、新システムの本稼働時には操作講習などを行って業務への影響を最小限にする取り組みが必要だ。この点でもJAST側から将来を見越した提案があったという。

 「実は画面の構成やボタン配置を旧システムからほぼ変えておらず、特別なユーザー教育なしに移行できました。緊張を持って本稼働当日を迎えたのですが、大きなトラブルは発生せず、拍子抜けしたほどです」(藤田氏)

 データベースやアプリケーションはナリコマのシステム部が変更できる仕組みになっている。

準委任型のラボ契約でワンチームの開発体制を確立

 ナリコマは、今回の基幹システム刷新をきっかけに、JASTとの共創関係を強化する目的で、従来の都度契約ではなく新たに「ラボ契約」という契約形態を採用した。ラボ契約の狙いは、SIerとユーザーの関係ではなく共通の事業目標の実現に向けて長期的にワンチームでシステム開発や運用に臨むことだ。目指したシステムの姿について、山田氏はこう説明する。

 「基幹システムの価値を最大化するために、SIerに開発を依頼することも考えられましたが、システム規模が大きくなると改修のたびにベンダーに頼ることになり、ビジネスの遅れにつながります。新しい基幹システムは、システムエンジニアリングサービス(SES)のような体制ではなく、内製開発を見据えた共創型を目指しました」

photo JASTの森川知洋氏(西日本SI第二事業部 ソリューション二課長)

 新しい機能の開発や運用管理については、ラボ契約によって変化に柔軟に対応できるようにした。JASTの森川知洋氏はこう説明する。

 「ラボ契約は、お客さま専任のチームを作って一定の範囲内でお客さまの従業員のようにシステム開発や運用保守の業務を担います。SESでは開発と運用で担当者が異なることも多いのですが、ラボ契約ではお客さまの業務知識や業務要件を理解した担当者が継続してサポートします。必要に応じてメンバーを入れ替えながら新しい課題に柔軟に対応できることもメリットです」

 長期的な関係が見えていればこそ、JAST側もノウハウを蓄積、伝達する体制を整備しやすく、将来的に、負荷の高い課題が生まれたとしてもリソースを確保しやすい。結果として、ナリコマの開発スピードや安定性にも寄与するものになる。

 「ナリコマはJASTさんのサポートを得ながら今後も事業を成長させていきます。今回の取り組みが、JASTさんのさらなる技術やサービスの向上に貢献できていたら私たちとしてもうれしい。JASTが掲げる共創の取り組みを実際に体験できたことが何よりも良い成果だったと思っています」(山田氏)

 新システム稼働後のナリコマは順調に取引を拡大し、稼働から約2年間で100億円もの収益を積み上げている。給食製造向けシステムの刷新も計画しており、ナリコマとJASTの共創の取り組みはさらに拡大する見込みだ。

 事業目標に即してクイックにシステムを変える内製化が注目されて久しいが、ナリコマとJASTが結んだラボ契約の関係は組織を超えてワンチームを作る、という新しい内製化の姿と言えるだろう。

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