VMwareの新ライセンスはシンプルな仮想化環境を求める企業には必要以上の機能を含んでいる。ただ、新たな仮想化基盤の構築や運用に人手をかけるのは難しい。これらの企業のニーズを満たす選択肢とは。
VMware社の仮想化製品群のライセンス形態が変更された。新たなライセンスには、これまでオプションとして提供されていたネットワーク仮想化やストレージ仮想化などの機能が標準で含まれる。
高機能な仮想化ソリューションを必要とする企業であれば新ライセンス体系も問題なく利用を続けられるだろう。一方で、一部の機能を使い続けるために上位ライセンスの購入が必要になってしまうエンドユーザーも存在する。ともすると「使わない機能が多く含まれる上位ライセンスしか選べない」と感じられるケースもあった。
この問題を解決可能な移行先の提案はこれまでも存在したが、それでも価格や工数が見合わず、今後の仮想化基盤を決定しあぐねるユーザーは多く残されていた。だが、2025年に入って、この状況を打開する可能性がある製品が登場した。いち早く製品の技術検証を終えた企業に、その評価を聞いた。
SB C&SはディストリビューターとしてVMware製品をはじめとするさまざまな仮想化製品を取り扱う。同社の鈴木一隆氏(ICT事業本部 システム基盤推進本部 ソリューション販売推進統括部 サービスビジネス推進室 室長)は、エンドユーザーの現状を次のように語る。
「新しいVMwareのライセンス体系は利用規模に応じて便利な機能が多数盛り込まれています。VMware製品群が示すハイブリッドクラウドの形がニーズに合致していれば問題なく使い続けられるでしょう。一方で、仮想マシンの基本的な機能を中心に、使いたい機能だけを追加購入していたユーザーが存在することも事実です。今まで通りの構成を維持するには上位ライセンスが必要になり、使える機能がリッチになりすぎると感じられるケースが少なからず生まれました」
こうした中でHewlett Packard Enterprise(HPE)が新たに提示したのが「HPE Morpheus VM Essentials」(以下、VM Essentials)だ。KVMをベースとしたHPE独自のハイパーバイザーと仮想環境向けの運用管理ツールを標準で提供する。まずはソフトウェア版として「HPE Morpheus VM Essentials Software」の提供を2025年2月末に開始した。
国内大手ディストリビューターの1社として仮想化基盤の移行検討を支援するパートナーを日本各地に抱えるSB C&Sは、国内でもいち早くHPE Morpheus VM Essentials Softwareの技術検証を実施した企業だ。
SB C&Sで販売パートナーに対する技術支援を統括する熊谷哲人氏(ICT事業本部 技術本部 技術統括部 統括部長)はVM Essentialsについて「VMware製品群ユーザーの移行先としてのニーズを十分に満たす有力な選択肢の1つ」と評価する。
「スナップショットやライブマイグレーション、分散ワークロード配置、HAクラスタリングなど、仮想化基盤の基本的な機能を網羅しており、多くのお客さまに満足していただける製品です。ホストOSのLinux(Ubuntu)に初めて触れるお客さまには慣れが必要ですが、VMware製品の基本的な機能のみを使っている企業の移行先としては有力な選択肢になるでしょう」(熊谷氏)
HPEで営業を担当する藤井泰秀氏(パートナー・アライアンス営業統括本部 第一営業本部 第一営業部 部長)は「VM Essentialsのコンセプトは、多くのユーザーが必要とする機能を満足できる価格で提供すること」と説明する。
VM Essentialsは2024年に発表されていたもので、当初は同社ハイブリッドクラウド製品群と組み合わせた提供を想定していたという。しかし、「ソフトウェアとしての提供を求める声が非常に大きかった」(藤井氏)ことから、ソフトウェア単体でいち早く市場に投入した形だ。
藤井氏は「VM Essentialsの強みは2つある」と語る。1つ目は、オープンソースの仮想化技術として広く普及するKVMを基に、仮想化で必要十分な機能を提供している点だ。
「KVMの歴史は古く、企業システムの基盤として世界中で現在も広く利用されています。十分に『枯れて』おり、技術情報も豊富ですから安心してご利用いただけます」(藤井氏)
2つ目は、仮想化環境の運用管理ツールとして、次世代のハイブリッドクラウド管理を実現するMorpheus PlatformOpsのテクノロジーが利用されており、KVMとVMware製品の両方の仮想化環境を管理できる点だ。
「グローバルで見ても、多くの企業がKVMとVMware製品の両方を使い分けています。VM Essentialsの導入を検討するお客さまでも、適材適所でVMware製品を使いたいというニーズはあるでしょう。その場合も、VM Essentialsがあれば環境を一元的、効率的に管理できます」(藤井氏)
VM Essentialsにはライブマイグレーション機能も備わっており、ハードウェア更改やライセンス更新のタイミングに合わせて段階的に移行する場合でも、VM Essentialsで一元的な運用体制を維持できる。さらに今後、VMware製品の仮想化環境をVM Essentials環境に無停止で移行する機能も追加される予定だ。
実際に検証を担当したSB C&Sの幸田 章氏(ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課 課長)はVM Essentialsについて「安心して使用できる」と評価する。
「VM EssentialsがベースとするKVMには長い歴史があり、現在も多くの利用例がありますし、技術情報も豊富です。出たばかりのソフトウェアではなく、十分に枯れて安定している点はお客さまに提供する際の重要なポイントです」
HPE Morpheus VM Essentials Softwareについても、「実際のインストール手順に加えて、ネットワーク設定や仮想マシンのHA構成など、企業のシステムに求められる主要な機能を一通り検証し、いずれも安定して動作することを確認しています。シンプルな仮想化基盤をいままで通り使いたいと考える方にとっては、価格面、機能面ともにようやく『ちょうどいい』選択肢」だと幸田氏は太鼓判を押す。管理面についても「ユーザーインタフェースや機能が作り込まれており、KVMとVMware製品の管理に必要十分な機能が備わった完成度が高いツール」と評する。
VM Essentialsを上位エディションである「HPE Morpheus Enterprise Software」にアップグレードすれば、主要パブリッククラウドを含むマルチクラウドの仮想化環境やコンテナ環境も統合管理できる。サーバやストレージ、ネットワークといったITリソースをあらかじめカタログ化しておき、ユーザーが必要なときに選んで使用できるセルフサービス型のリソース提供も可能だ。
アクセス制御やコストの可視化、リソースの最適化を支援する機能も持つため、VM Essentialsの採用をきっかけに、クラウドの高度な活用も視野に入れやすくなるだろう。
技術検証を終えたSB C&Sは今後、VM Essentialsの本格提供に向けて、全国のパートナー企業に対するトレーニングプログラムを提供する計画だ。座学だけでなくハンズオン形式も予定しており、ハンズオントレーニングは2025年5月に開始する予定だ。
パートナー各社の移行計画策定の支援として仮想基盤アセスメントツール「HPE CloudPhysics」を使ったVMware製品環境のアセスメント支援も開始した。今後はKVMを扱うことに不安がある企業に向けてSB C&Sが独自にハードウェアを組み合わせてHPE Morpheus VM Essentials Softwareの実行環境を構成済みの状態で出荷するサービスも予定する。
HPEもHPE Morpheus VM Essentials SoftwareをプリインストールしたHCIとして「HPE GreenLake for Private Cloud Business Edition」(以下、PCBE)を2025年5月から提供している。
「PCBEは、サーバやストレージなどのハードウェアとHPE Morpheus VM Essentials Softwareによる仮想化基盤を当社が事前に構成し、検証済みの状態で出荷します。プライベートクラウドで仮想化環境を使いたいが、『ハードウェアも含めた構築に時間と手間をかけられない』『KVMやUbuntuを扱ったことがなく自信がない』といったお客さまに適しています」(藤井氏)
PCBEでは、買い切りだけでなくサブスクリプション型でも提供する。SaaSをはじめとするクラウドサービスの普及によって、ITインフラも資産として保有しないサブスクリプションモデルが広く受け入れられているためだ。
PCBEの場合、HPEが運用保守を担うフルマネージドのオプションも選択できるため、ITインフラの運用に人手を割けない企業にも好適だ。自社サービスを提供するサービスプロバイダーも、ITインフラをHPEに任せることで自社のIT人材をサービスの開発に集中させられる。サブスクリプション型の提供モデルを選べば、初期コストを抑制しながらサービスの拡大に合わせて柔軟に拡張できるため、ITコストの平準化も可能だ。
HPEは今後、VM Essentialsと併せてPCBEの提供にも力を入れていく。企業がITインフラを意識することなくITを活用できる世界を目指すと藤井氏は力を込める。
「お客さまがITのパワーを享受するにはITインフラが不可欠ですが、年々高度化するハードウェアの能力を余すことなく使うためには高い技術力が必要です。クラウドの普及によってITインフラの選択肢が増え、構成も複雑になりました。HPEは、お客さまのニーズに適したITインフラを、より手軽で使いやすい形で提供することを目指し、今後もPCBEをはじめとするGreenLakeシリーズの開発に注力します」
SB C&Sも、HPEから新たな選択肢が登場したことを歓迎すると鈴木氏は話す。仮想化基盤を取り巻く環境が大きく変化する状況で、新たな選択肢が加わったことは多くの企業にとって朗報という見方だ。
「HPE Morpheus VM Essentials Softwareは、ハードウェアで豊富な実績のあるHPEが開発した仮想化製品であり、サポートも含めて信頼に値するソリューションです。加えて、PCBEによって、HPEに構築から運用保守までの一連のプロセスを任せることもできます。ITインフラには手をかけられないという企業に適したソリューションであり、PCBEがマッチするお客さまに広くご提案していきたいと思います」
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